※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

1951年に創業した高橋工業株式会社。時代の流れにともない、鉄工所の運営から窓の清掃業、ビル管理事業へと柱を転換してきた。現在は電気設備を中心に「建物の一括管理」を任せられる会社として幅広いサービスを展開している。代表取締役の髙橋潤氏に、これまでの取り組みや建物管理事業における強み、今後の展望についてうかがった。

行政向け清掃業成長を受け継ぎ、民間の取引先を開拓

ーー代表に就任するまでの流れをお話しいただけますか。

髙橋潤:
「高橋工業」は、私の祖父が鉄工所を創業したことからスタートしました。しかし、戦時下で鉄を販売できなくなり、窓ガラスの清掃を始めたことが今の事業につながっています。私は大学卒業後、プロゴルファーを目指していた時期もありました。しかし、幼少期から意識していた「家業を継ぐこと」に改めて向き合い、2004年に入社した次第です。

入社した頃の弊社は、国や市町村など行政関連の仕事が9割以上を占めていて、顧客の固定化によってリスクを分散できない状態でした。危機感を抱いたことから、「取引先を自由に開拓してみたい」と専務に伝えたところ、民間企業にアプローチができるようになりました。

今思うと、この変化は会社としても大きな転機だったと言えます。その後実績を重ね、父にしっかりと認められた上で昇格することができ、代表を任されるに至ります。

電気設備をメインに建物管理のワンストップソリューションを展開

ーー現在の事業内容を教えてください。

髙橋潤:
電気設備の点検・工事をはじめとする電気保安管理をメインに、「建物を一括管理する会社」としてさまざまな業務を展開しています。給排水設備や空調設備、防災設備などの設備管理業務は、弊社の強みの一つです。そのほか、清掃や建設、警備、受付・電話交換スタッフの派遣、学校やスポーツ施設の管理など、対応可能な業務は多岐にわたります。

管理対象にはオフィスビル、公共施設、学校、病院、高齢者向け施設、宿泊施設、集合住宅などがあり、設備工事を入口に、お客様の困りごとを解決する形で業務を拡大してきました。

弊社の立ち位置は、「大手ゼネコンの管理会社の一次請け」です。社歴の長さと豊富なノウハウ、社内ですべてスタッフを抱えている点が、お客様に選ばれている理由だといえるでしょう。

ーー企業のトップとして注力してきたことは何ですか。

髙橋潤:
「すべての『末端の仕事』を請け負う高橋工業」という位置づけを目指して、各業務に特化したプロ集団であることを意識しています。技術向上のために、資格の取得費用を会社が全額負担することで、従業員が成長意欲と責任感を持つようになりました。福利厚生も充実させて、努力や働きがしっかりと還元される環境を構築しています。

約1,100人に及ぶ従業員は、叩き上げで技術を磨いてきた人たちが多くいます。彼らの引退後もサービスのクオリティを保てるよう、研修専門の会社も立ち上げました。また、定年後も希望すれば働けるよう、セカンドキャリア、サードキャリアを実現できる会社を目指しています。

従業員の技術力と満足度を高めて、顧客に選ばれ続ける企業へ

ーー人材育成についてはどのような方針をお持ちでしょうか。

髙橋潤:
現在は「プロフェッショナルな作業員」の中途採用を行うと同時に、新卒者の教育システムを整えている段階です。今後は、営業や、マネージャークラスを担える人材の教育にも力を入れていきたいと思います。

弊社で活躍しているのは、技術を磨くことに喜びを感じ、「一つの分野を突き詰められる人」です。技術力の高さを強みとし、じんわりと効く「ビタミン剤」よりも、むしろ「特効薬」になりえるサービスを提供したいと考えています。「人の技術」にこだわっている会社なので、コミュニケーションが上手くとれなかったり、周囲に合わせることが苦手だったりする人でも問題ないとも言えますね。

ーー今後の展望をお聞かせください。

髙橋潤:
ビルメンテナンス業界は、大手企業に集約されていくと予想しています。今のうちから大手との関係性を深めて、業界の変化についていけるかどうかが勝負だといえるでしょう。

業界内での基準では、売上100億円規模になると「超大手」という扱いになるため、個人的には「58歳になるまでに100億円」「代表から退くまでに200億円を達成する」という目標を就任以前から定めています。売上規模の拡大にともない、事業の幅も広がっていくはずです。

最終的には、従業員の満足度を上げることはもちろん、そのご家族や大切な人にも「この会社で働けて良かったね」と言っていただけるような状態にしたいと思います。生活水準の向上だけでなく、プライベートで充実した時間を過ごすことも大切ですからね。

従業員の満足は、顧客満足度にも連鎖します。「働いている人が幸せでなければ良いサービスを提供できない」と考え、従業員に還元できるように売上アップを目指す、という方針です。

編集後記

社長に就任する以前から、「プロ集団を形成する」「引退前に年商200億円達成」といった願望を抱いていた髙橋氏。そして、夢の到達点である「従業員の幸せづくり」に向けて走っていくための手段が「社長になること」だった。従業員が「続けたい」と思える仕事や労働環境を保ち、高い顧客満足度を維持する会社として、高橋工業はこの先も大手企業から選ばれ続けるだろう。

髙橋潤/1977年生まれ。2000年に東北福祉大学を卒業し、プロゴルファーになるためオーストラリアへ渡る。約4年間の修業を経て、現役を引退。2004年、高橋工業株式会社へ入社。2009年に取締役、2018年に代表取締役に就任。2023年、持株会社のエマジャパンホールディングス株式会社を設立し、代表取締役に就任。スポーツ選手の応援活動にも注力している。