株式会社ヒュープロは、士業・管理部門に特化した転職プラットフォーム「ヒュープロ」を運営する企業。山本玲奈氏が学生時代に立ち上げた会社で、同社のサービスは創業から9年で業界最大級の規模にまで成長している。
もともと弁護士を目指していたという山本氏だが、一体なぜ起業家の道を選んだのか。創業の経緯や「経営者としての軸」について聞いた。
大好きな日本を前進させるために学生起業を決意
ーー学生のときに起業した経緯を聞かせてください。
山本玲奈:
私は「日本を前進させたい」という思いが強く、社会に貢献するために何をすべきかを学生時代からよく考えていました。
この自分の考えをアウトプットするために、ビジネスコンテストへ参加。もともと弁護士を目指していましたが、ビジネスコンテストで優勝するとスタートアップ企業の経営者と出会う機会が増え、起業という選択肢も生まれました。
最終的に起業を選んだのは、「日本を世界で活躍できる国にしたい」という思いを最短距離で実現できると思ったからです。
ーー日本を前進させたいと思うようになったきっかけは何ですか。
山本玲奈:
幼少期から海外で生活していて、海外でも日本は良い国だと思われていることを実感していました。しかし、多くの日本人が日本に対して悲観的な思いを持っています。私は日本が好きですし、そういった日本人の悲観的な姿を見て「日本をもっと良くしていきたい」という気持ちが強く芽生えました。
「求人情報の積極的な公開」で今までの採用の常識を変える
ーー事業について教えてください。
山本玲奈:
いろいろな事業を始めては撤退する中、弁護士事務所のアルバイト募集サイトを考えました。結局この事業は上手くいきませんでしたが、いろいろな事務所へ営業に行く中で「税理士が足りなくて困っている」「採用活動まで手が回らない」という相談をよく受けるようになりました。
このような課題を解決するサービスをつくってほしいという声が増えたこともあり、士業・管理部門に特化した転職プラットフォーム事業へと、徐々に方向転換しました。
ーー事業の強みはどういった点にありますか。
山本玲奈:
管理部門や士業に特化しているプラットフォームを展開していること、そして税理士・会計業界専門求人サイト公開求人数No.1の転職プラットフォーム(※1)であるという点が強みです。
少し前までは、管理部門の求人を転職プラットフォームに掲載すると「何か問題が起きている会社だから、求人を募集しているのでは」と悪いイメージを持たれることも珍しくなく、多くの企業は求人情報を出さずに内々で人材を探していました。
しかし、今は誰もがインターネットで求人情報を探す時代ですし、求人情報は積極的に公開したほうが良いのです。実際に弊社の「ヒュープロ」では求人に関わる情報をすべて公開しているので、求職者が求人情報に辿りついて応募するまでのスピードが非常に早くなっています。
(※1)調査概要および調査方法:税理士・会計業界専門求人サイトを対象としたデスクリサーチおよびヒアリング調査
調査期間:2023年10月24日~11月6日
調査実施:株式会社エクスクリエ(旧株式会社ドゥ・ハウス)
比較対象企業:「税理士・会計業界専門求人サイト」展開企業主要10社
ーー貴社の資金調達が上手くいっている理由は何だと考えていますか。
山本玲奈:
投資家の方々からは「粘り強さと勢いがある」と言っていただいています。私はテレアポも対面での営業もしますし、地道な営業活動などの泥臭いことを積み重ねてきたからこそ、出資していただけているのだと思います。
幸福度の向上と経済発展への貢献の2軸で事業を展開
ーー今後の注力テーマを教えてください。
山本玲奈:
弊社は300億円以上の事業価値をもつ事業を50個以上つくるという目標を掲げており、達成に向けて社員をどんどん採用する必要があります。それと同時に、社員たちに弊社の「新しいものを生み出し続けるカルチャー」を理解してもらい、活躍してもらうための環境づくりを強化していきたいと思っています。
また、税理士・会計業界専門求人サイト公開求人数No.1ですが、市場規模がより大きな事業会社の管理部門はまだ開拓しきれていません。そのため、既存のお客様に手厚いサービスを提供しつつ、事業会社の新規顧客開拓も強化していく予定です。
「日本を前進させる」という当初からの思いを実現するためには、「人々の幸福度を向上させること」と「経済発展に貢献すること」が重要です。弊社では、この2つを軸に置いて、どのような新規事業を始めるかについて考えています。
経験がなくて未熟だからこそ挑戦でき、それが成長にもつながる
ーーどういったマインドの人と一緒に働きたいかお聞かせください。
山本玲奈:
私はキャリアを築く前の学生起業だったので、苦労したことがたくさんあります。しかし、何も分からないからこそ挑戦できたことも多くありました。泥臭い仕事をたくさんしましたし、それが私を育ててくれたと思っています。
20代のうちに経験を積めば、30歳になったときにはそれが大きな差となります。弊社には早いうちに挑戦できる環境があるので、挑戦し、成長したい人に来てもらえたら嬉しいですね。
編集後記
取材の最後、山本社長は「何事も早く行動することが大切。まずは動いてみて、自分の選択した道を自分で正解にしてほしい」と若手人材へエールを送った。
ゼロから会社を成長させた山本社長が率いる株式会社ヒュープロなら、これからも積極的に新しいことに挑戦し、市場を開拓していくだろうと頼もしく感じた。
山本玲奈/1993年生まれ、慶應義塾大学法学部卒業。幼少期から18年間、インドネシアやアメリカなどの海外で過ごす。大学在学中の司法試験の勉強やビジネスコンテストへの出場をきっかけに、2015年に株式会社ヒュープロを設立。これまでに累計約7億円の資金調達に成功し、士業・管理部門に特化した転職プラットフォーム「ヒュープロ」を運営。「Forbes 30 Under 30 Asia 2022」などにも選出された。