※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

株式会社リブランは、24時間楽器を演奏できる防音賃貸マンション「ミュージション」を提供している不動産会社だ。「自由に音を出せない」というマンションの常識を覆し、入居者が7,500人待ちという大人気ブランドに押し上げた。

今回、不動産業界に入ったきっかけや、同社の商品づくりにかける思い、今後の展望などについて、代表取締役社長の渡邊裕介氏にうかがった。

お小遣い目当てで受けた試験がきっかけで不動産業界へ

ーーまずは大学卒業後から現在に至るまでの経歴をお聞かせください。

渡邊裕介:
この業界に入ったのは、不動産会社を経営していた父から「宅建(宅地建物取引士)資格を取れたら小遣いをあげる」と言われたことがきっかけでした。宅建は難易度が高い国家資格ですが、試しに受験してみたところ一度で合格したのです。

その時点で別業界の企業から内定をいただいていましたが、せっかくなら資格を活かせる仕事がしたいと思うようになり、結局、内定が出ていた会社を辞退し、再び就職活動をして不動産会社に就職しました。

それからは4社ほど転職を重ね、賃貸業務や仲介業務、建物の投資業務など不動産業界のすべての領域を経験しました。その後、父が以前取引していた縁から、株式会社リブランに入社しました。

ーー入社後はどのような業務を担当してきたのですか。

渡邊裕介:
はじめは分譲マンションの営業を担当し、そこから販売センターの責任者として現場を取り仕切る立場になります。入社から3年経った頃には、マンションを建てる土地の仕入れも任されるようになりました。

その後、不動産の知識をさらに深めるため、一度腰を据えて勉強に取り組む時間をつくりたいと思い、退職します。そして2ヶ月後に再就職という形で戻ってきました。そこからは防音賃貸マンション「ミュージション」の管理業務の整備に従事してきました。

先代が早期に決断した世代交代の真意

ーー2023年に社長交代が行われた経緯についてお聞かせください。

渡邊裕介:
弊社は「住宅産業は人間産業であり、人々の幸せに貢献していく」という企業目的を掲げています。この目的を達成するには、世の中のニーズをキャッチし、新しいことに挑戦するマインドが必要です。

このことから5年ほど前に今の会長から「55歳になったら引退したい」という話がありました。

私が社長に就任してからは、企業目的を軸としながら新しい研修制度の導入や評価制度の変更を少しずつ進めています。また、ミュージションから派生したゲーマー向けのゲーミングマンションなど、徐々に事業領域を広げています。

人気ブランドを手がける不動産会社が重視する「4番目の軸」とは

ーー改めて貴社の事業内容について、他社との差別化ポイントを教えてください。

渡邊裕介:
不動産市場では一般的に「価格・場所・間取り」の3つの軸で評価されます。しかし弊社では必ず第4の軸を設けています。これは、創業者である鈴木靜雄の考えがもとになっていて、「住まいは人間のためのものであり、住宅は社会問題を解決する手段である」という信念から発生しています。

たとえば、シックハウス症候群(※)を防ぐ取り組みとして化学物質の含まれた新建材を排除し、無垢板などの自然素材を採用したり、引きこもりを防止するため、リビングから出入りする子ども部屋の提案や、子育ての孤立化を防ぐため共用部にキッズスペースを設けたり、環境共生型住宅として屋上緑化や緑のカーテンを設置したり、など社会問題に対する取り組みを第4の軸として提案してきました。

ミュージションは第4の軸として音問題に切り込んだ商品です。遮音性能の低さから自宅で音楽を楽しみたいという欲求を満たせない集合住宅への怒りから誕生しました。二十数年の年月をかけ24時間演奏可能な性能を達成し、今では弊社の看板商品に育っています。こうした商品づくりが弊社の特徴だといえるでしょう。

(※)シックハウス症候群:建材から放出される化学物質を吸い込むことで引き起こされる健康障害。

ーー現在は入居待ちの方が7,000人を超えるミュージションですが、これほどの人気ブランドになったきっかけは何だったのですか。

渡邊裕介:
最初は、ライブハウスや音楽大学でのビラ配りや、入居者の方と共同でイベントを開催するなど、とにかく地道な営業活動でしたね。一気に注目されるようになったきっかけが、コロナ禍での巣ごもり需要の高まりです。

自宅で音楽活動や動画配信をする方が増えたことで、ミュージションの防音性の高さが注目されたのです。SNSでの発信にも力を入れた結果、多くの方に認知していただけるようになりました。

なお、当初は音楽学校の学生さんがターゲットだったので、音楽学校の近くにエリアをしぼっていました。しかし、入居者の方の属性を調べてみると、学校で練習できる学生さんよりも、社会人の方が多いことがわかりました。

そこで現在はエリアを限定せず、広範囲に渡ってこのブランドの物件を建設しています。

社員自ら挑戦するマインドを育て、常に新しい価値を提供する企業へ

ーー貴社ではどのような方が活躍されているのですか。

渡邊裕介:
音楽業界をはじめとした異業種からの転職者が多いですね。また、企業目的の中で「社員の自己実現を図っていくための機会を創出する」と謳っていることもあり、明確な目標を持っている社員もいます。達成したい目標があるからこそ、苦しい場面も乗り越えられ、仕事を心から楽しめるのだと思います。

ーー人材育成に関する取り組みについて教えてください。

渡邊裕介:
弊社はノルマではなく、達成目標を掲げるようにしています。なお、結果だけを見るのではなく、失敗も含めトライした過程を評価するようにしています。

また「人への投資は惜しまない」という考えのもと、社員の学びを全面的にサポートしています。最近では社会人としての教養を身に付けてもらうプログラムとして、「リブラン大学」を開設しました。さらに書籍の購入費用を会社が負担する「知の貯金箱」という制度も設けています。

こうして知識と教養を習得できる環境を整え、社員のスキルアップにつなげています。

ーー最後に今後の展望をお聞かせいただけますか。

渡邊裕介:
将来的には海外展開も視野に入れていますが、まずは国内を中心に段階的に事業を拡大していく予定です。5年後を目途に、地方都市でもミュージションの物件数を増やしていきたいと考えています。

法人で所有している物件の有効活用も含めて進めていきます。実際にコロナ禍以降、安定資産として不動産の価値が再認識され、法人からのお問い合わせも増加しています。防音性に優れたマンション開発の旗振り役として、今後もお客様のニーズに応える物件を提供していきたいですね。

また、防音リフォームやインバウンド向けサービスなど、新規事業の確立を目指しています。常に新しい商品やサービスを生み出し続け、100年続く企業を目指していきます。

編集後記

「社会課題を解決し、人々の幸せに貢献したい」という創業者の思いを引き継ぎ、経営者となった渡邊社長。今回のインタビューを通じ、自分たちが販売する商品への誇りと自信をひしひしと感じた。株式会社リブランはこれからも柔軟な発想力とチャレンジ精神で、常識にとらわれないユニークな物件を生み出していく。

渡邊裕介/1979年埼玉県生まれ。大学卒業後は複数の不動産会社で経験を積み、2005年株式会社リブランに入社。営業部に配属後、用地仕入部、土地活用部、賃貸事業部、ミュージション事業部、資産活用部を経て2019年に取締役、2023年に代表取締役社長に就任。社員の成長を命題として、次世代のリブランへ繋がる役割に取り組む。