※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

少子高齢化や人手不足の影響を強く受けているといわれる不動産業界。近年は、空き家問題や相続問題など、新たな課題も抱えている。

そんな不動産業界を担ってきた株式会社西武開発は、埼玉県に根差した事業を40年以上継続している。日本経済新聞社が毎年行う「サービス業調査 不動産仲介部門ランキング」では、常に全国ランキングの上位に入り、埼玉県西部地域の第1位に輝き続けるサービス力を誇る。

紆余曲折の道を歩みながら、創業者である父から会社を引き継いだ代表取締役社長の田形宏太郎氏に同社の魅力を聞いた。

偶然耳にした「赤の他人に会社を譲って、潰されるのはつらい」の言葉

ーー貴社を継いだ経緯を教えてください。

田形宏太郎:
弊社は、父である現在の会長が1984年に創業しました。一介の不動産営業スタッフから、独立後、わずか1年で5店舗を構える経営者として成功したのです。一方で私は進学校の高校に通っていたにもかかわらず、大学には行かずに家を飛び出して、プロのミュージシャンを目指していました。自分には才能があるとすっかり勘違いをして活動を続けていましたが、一向に見通しが立たないまま、25歳を迎えました。

焦燥感に苛まれていたところ、父の右腕だった方から「赤の他人に会社を譲って、潰される位なら自分の息子に潰されたい」と父が漏らしていたと聞き、家業を継ぐ決心を固めたのです。

ーー不動産の仕事をどのように学びましたか。

田形宏太郎:
「社員の苦楽を知らなければ、経営はできない」という父の教えから、まずは店舗で修業しました。

ただ、苦労は感じず、「理想を超える住まいを提供する」ためのご提案を通じて、私自身を評価していただける喜びは何ものにも代えがたく、どうすればもっと喜んでいただけるかを考えて提案しました。またスタッフの皆さんにも本当に良くしていただきました。そして、切磋琢磨によって信頼関係を築けました。

この5年間の修業の日々が本当に充実しており、思考力や問題解決力といったビジネスパーソンとして必要な能力を養うことができたと思います。

未経験から不動産のスペシャリストを育て上げるノウハウ

ーー貴社の強みを教えてください。

田形宏太郎:
最大の強みは「地域密着」です。地元の人々や生活に精通していないと不動産の売買仲介事業を展開することは不可能なので、所沢市を中心とした半径25kmを商圏にしています。

さらに、弊社の理念として「安全取引」を掲げています。住まいは、一生に一度あるかないかの高い買い物。お客様は絶対に失敗や後悔をしたくありません。そのためにお客様にご来店いただいた瞬間から売買成立に至るまで、知識豊富なスペシャリストが密にサポートし、安心してお任せいただいております。

この理念を実現するための施策のひとつが、理念に共感してくれる社員の採用です。不動産業界は実績と経験を積んだ人が会社や店舗を渡り歩くことが通例ですが、弊社では中途採用でも、あえて未経験者を採用しています。

もちろん、未経験者をすぐに現場に出して、接客させることはありません。不動産の専門知識と創業以来、築き上げてきたノウハウを、3ヵ月間みっちり指導してから各店舗に配属します。そこからは、OJTを経てデビューさせます。

この業界もスポーツと同じく、基礎がとても重要ですが、その基礎を教えるためのシステムはお世辞にも整っているとは言えません。しかし、弊社では万全の教育制度を整えているので、未経験者からスペシャリストとなるだけの基礎を身につけることができるのです。

ーー理念と教育を追求する理由は何ですか。

田形宏太郎:
不動産売買仲介とは、お客様に住まいを通じて安心、信頼をお届けする「サービス業」なので、サービスの質には並々ならぬこだわりを持っています。教育制度に力を入れているのも、このサービスとお客様のためです。高いレベルで均一化した「西武開発のサービス」を提供することが、不動産会社の格付けの上位に常連として名を連ねたり、口コミで高評価をいただいたりしている要因だと自負しています。

幅広い事業と手厚いサービスで「おせっかい」を焼きたい

ーー今後の事業展開と展望をお聞かせください。

田形宏太郎:
分譲・リフォーム・アフターサポート事業、引っ越し事業、インテリア・家電販売事業、住宅ローン・保険事業、霊園事業といった住まいと暮らし、お客様とご家族の一生涯をサポートする事業を次々と開始しています。

社員教育では、私が早稲田大学大学院で修得したMBAの知見を基に、独自に築いた「西武開発MBA(SMBA)」というプログラムも開始しました。店長や役員に経営・財務・販売戦略について学んでもらい、修了証を授与します。

また、不動産事業以外では子ども用のペダルなし自転車・ランバイクを通じての子どもの成長や地域のつながりを図る「リッキーランバイクプロジェクト」を立ち上げ、大会を主催しています。

多岐にわたる事業展開と教育制度でサービスの質をさらに高め、まずは「日本一おせっかいな不動産会社」を目指し、最終的には不動産会社の枠を越えた「地域の『ライフ』を届ける総合商社」として、成長を持続していくことが目標です。

編集後記

田形社長がプロを目指していた音楽のジャンルはヘビーメタル。柔和な笑顔からは想像できないが、お客様と地域、そして社員にかける熱さはヘビーメタル同様だ。住まいのことにとどまらず、人生の万事を気軽に相談できるパートナーとして、このような会社と長く付き合っていくことができる近隣のユーザーを羨ましく思った。

田形宏太郎/1971年、福岡県生まれ、2014年、慶應義塾大学経済学部卒。2016年、早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了。MBA(経営学修士)取得。1997年、株式会社西武開発に入社。不動産売買仲介の営業を経て、経営企画室長、営業部長、専務取締役を歴任。2021年に代表取締役社長に就任。