※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

少子高齢化や環境問題など、社会問題と密接に関わる不動産業界には多様な対応が求められている。環境に配慮したまちづくりや、過疎化が進む地域の再生、空き家問題への対応など、解決すべき課題は数多い。様々な課題に取り組みながら、業界は変革を必要としており、新たな可能性を追求する不動産ベンチャー企業の成長が加速している。

そのような事業環境下で、とりわけ急成長を遂げている企業の一つが、MSCホールディングス株式会社だ。2016年に賃貸仲介事業および売買仲介事業を開始して以来、順調に業績を伸ばしてきた。今回は、代表取締役社長の阿部達也氏に、創業までの経緯や同社の事業について詳しく話をうかがった。

トップセールスとしての成功を社員に継承していきたい

ーー創業までの経緯を教えてください。

阿部達也:
私の実家は建築業を営んでおり、将来は家業を継ぐものだと漠然と思っていました。高校卒業後、愛知県の職業訓練校で建築に関する専門的な知識と技術を学び、その後、家業である建築業を手伝いながら、瓦屋根の葺き替え作業員として現場で経験を積みました。数多くの現場を経験する中で、次第に自分の価値観や将来の方向性が見えてきましたが、同時に、家業を継ぐことに対して少しずつ違和感を覚えるようになったため、実家を離れる決意を固めたのです。

そこで、25歳のときに不動産業界に飛び込むことを決意しました。この業界を選んだのは、建築物が好きだったということと、接客業で人と関わりたい、自己成長できる可能性があると感じたからです。全国展開を行う不動産企業へ転職。「トップセールスになる」という目標を掲げ、日々の努力を惜しまず、数々の困難を乗り越えてついに夢を実現しました。この経験が私にとって大きな自信となり、さらなる挑戦を始める原動力となったのです。

そして2016年、RIUMM株式会社の創業をきっかけに、複数のベンチャーキャピタル事業を展開するようになりました。複数の事業を手掛けるようになった理由は、私自身が不動産業界で得た知識や経験を、他の分野にも活かすことで、より多くの人々に価値を提供したいと考えたからです。この決断は、私のビジネス観を大きく広げ、次のステージへと成長を加速させました。

ーートップセールスになるためにどのようなことに注力していたのですか。

阿部達也:
私には、「家業を継がない選択をした以上、絶対に自分の力で成果を出したい」という強い思いがありました。そのために、トップセールスになることを目標に掲げ、日々の仕事に逆算して取り組んだのです。具体的には、「自分が誇れる業績を残す」という目標を達成するため、何を最も重視すべきかを常に意識し、営業活動を行いました。

そして、「お客様に応援される人間である」ことに重点を置くことにしたのです。不動産営業では、広告や問い合わせから顧客を獲得し、その後追客を進める方法が一般的でしょう。しかし、私は「お客様からの紹介」を非常に大切にしていました。紹介をいただくことで、お客様との信頼関係が深まり、それが成約率の向上に直結するためです。

お客様に信頼され、応援していただける営業マンになるためには、誠実さと真摯さが必要だと考えています。そのため、お客様の話に丁寧に耳を傾け、相手のニーズをしっかり理解することを常に意識して取り組みました。時には知識不足で質問に答えられないこともありましたが、その際は素直に「分からない」と伝え、すぐに調べてお答えする姿勢を大切にしました。このような誠実な態度が信頼を生み、結果として私自身の成長にもつながったと感じています。

8つの行動指針の実現が人としての成長につながる

ーー改めて事業内容を教えてください。

阿部達也:
弊社は、賃貸仲介業、賃貸管理業、内装業、不動産売買・仲介を主要な柱として、住まいに関わる多様なサービスを展開してきました。これらの事業を通じて、さまざまな方の暮らしやビジネスに貢献できるよう取り組んでいます。

現在では子会社や関連会社を含む計9社を統括するホールディングスへと成長し、それぞれの事業がグループ全体の強みを活かし、さまざまなニーズに対応できる価値を提供しています。このように、幅広い事業領域をカバーすることで、お客様に多角的なサービスを提供し、信頼関係を築いています。

ーー貴社が大切にされていることをお聞かせください。

阿部達也:
弊社では、【笑顔を文化に】豊かな暮らしの実現とまちづくりへの貢献、という経営理念のもとお客様を笑顔にすることを大切にしています。そのためには、社員一人ひとりが成長し、仕事を通じて自己実現できる環境を提供することが不可欠です。社員が自分の目標を達成し、広い世界で活躍できるような人材となることを願っています。この理念を実現するために、私たちが社員に示しているのは以下に掲げる8つの行動指針です。仕事のみならず、人間として大切なことを重視した内容にしています。

1:感謝を伝える
2:誠実な対応
3:迅速に行動する
4:挑戦する
5:学び続ける
6:傾聴する
7:相手の立場に立つ
8:ポジティブに生きる

社員の平均年齢は約30歳で、これからの成長が非常に楽しみです。これらの行動指針を基に、社員一人ひとりが大きな可能性を持ち、どんな場面でも自信を持って活躍できるようにサポートしています。また、弊社はコミュニケーションを大切にしているため、プライベートでも社員の仲が良く、風通しのいい職場です。こうした心のつながりが強い団結力を生み、会社全体の成長につながっていると考えています。

不動産を通じて「笑顔が文化になるように」年商100億への挑戦

ーー今後の展望やビジョンを教えてください。

阿部達也:
事業を通じて、笑顔が溢れる社会を実現することが私たちのミッションであり挑戦です。抽象的に思われるかもしれませんが、お客様や社員一人ひとりが毎日幸せを感じられることを最大の使命として掲げています。そのためには、常に時代の変化に対応し、働き方や組織の在り方を柔軟に見直しながら、限られた時間で最大限の成果を生み出す仕組みを追求していかなければなりません。私自身も、社員の背中を押し続ける存在でありたいと思っています。

私が具体的な目標として掲げるのが、2030年にグループ年商100億円です。賃貸仲介業は新宿エリアで顧客満足度・ご紹介件数トップを目指していますし、内装業では原状回復に特化して案件数・顧客満足度ともに東京トップを狙っています。競合がひしめく厳しい環境ではありますが、「不可能はない」という信念のもと、挑戦を続けています。

これらの目標は、単に企業としての成長を目指すだけでなく、グループ全体で働く社員一人ひとりが自分の夢を叶えられる環境をつくるためのものです。社員が自身の可能性を信じ、互いに支え合いながら成長し、やりがいを持って働ける企業であり続けるために、この大きな目標に向かって力強く前進していく所存です。

編集後記

特に印象的だったのは、阿部社長が掲げる8つの行動指針と「お客様に応援される営業マン」の重要性である。これらはMSCホールディングスの成長を支える原動力であり、同時に社員一人ひとりの成長を促す要素だろう。

社員の平均年齢が約30歳という若さも相まって、行動指針に基づく日々の実践が会社全体の活気を生み出していると感じた。不動産業界の激しい競争の中で、阿部社長が体現する誠実さと強いコミットメントは、企業の成功を支える大きな柱と言えよう。今後もMSCホールディングスが地域社会に貢献し続け、その存在感をさらに高めていく姿を期待したい。

阿部達也/1983年青森県八戸市生まれ。高校卒業後に職業訓練校で学び実家の建築業で瓦屋根の職人として従事。その後、全国展開する賃貸仲介店へ転職し全国トップセールスの成績をおさめる。マンションデベロッパーへの転職、賃貸部門の子会社設立に携わり、2016年にRIUMM株式会社を創業。以降も株式会社ALLSERVの他、多数のベンチャーキャピタルを展開。2021年に持株会社であるMSCホールディングス株式会社を設立、代表取締役に就任。