※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

人材業界は今、大きな転換期を迎えている。少子高齢化による人材不足、テクノロジーの進化、働き方改革の要請など、企業が抱える課題は山積みだ。そんな中、2024年4月に創業した株式会社PeopleX(ピープルエックス)は、テクノロジーを駆使した新しいサービスを通じて、働く人の理想のキャリアを支援している。代表取締役CEOの橘大地氏に、起業への思いと目指す未来像について、お話をうかがった。

弁護士からスタートした挑戦の軌跡

ーーこれまでの経歴を教えてください。

橘大地:
キャリアの出発点は弁護士でした。弁護士の兄の影響で法曹界を目指し、司法試験に合格後、法律事務所で働き始めましたが、20代という年齢もあり、事業に挑戦したいという気持ちが芽生えたのです。

その後、弁護士ドットコム株式会社に入社し、営業やマーケティング、開発など、事業づくりの基礎を学びました。新規事業として手掛けた電子契約サービス「クラウドサイン」は、5年で会社全体の売上の約半分を占めるまでに成長し、その実績を買われて取締役として経営に携わることになりました。

ーー起業に踏み切ったのはどのようなタイミングでしたか?

橘大地:
弁護士ドットコムで大きな成果を上げたことが自信につながり、事業経営に必要な経験も積むことができたので、次なるステップへと進む原動力となりました。経営の実績を重ね、取締役としての責任を果たし、利益を上げられる体制も整ったと確信したとき、「次は自分の手で新たな事業に挑戦したい」と思うようになりました。

これまでの知見を最大限に活かし、自分自身のビジョンに基づいた会社をつくり上げるために、起業に踏み切るタイミングが訪れたのです。起業はゴールではなく、これから挑むべき新たなスタート地点だと考えています。

テクノロジーとM&Aで加速する成長戦略

ーー貴社の事業内容について、教えてください。

橘大地:
弊社では、働く人々を支援するさまざまなサービスを展開しています。代表的なものが、社員のスキルアップや交流を促進するエンプロイーサクセスHRプラットフォーム「PeopleWork(ピープルワーク)」です。

また、キャリア支援としてのハイクラス転職エージェントサービス「PeopleAgent(ピープルエージェント)」や、企業の人事部を対象とした、採用戦略や報酬制度設計などを支援する「PeopleConsulting(ピープルコンサルティング)」なども手掛けています。

さらに、M&Aにも積極的で、すでに2社がグループに加わっています。最近では、外国籍エンジニアを日本企業に紹介している企業を買収し、事業領域を拡大しました。

ーー貴社の強みは何ですか?

橘大地:
まず、上場企業で役員経験のあるメンバーが複数名、在籍していることです。それぞれが異なる分野での経営経験を積んでおり、戦略策定から事業運営まで、幅広い知識とスキルを有しています。

特に、M&Aによって新たな企業がグループに加わった際には、彼らの経験が活かされ、迅速かつ的確な経営判断を行える体制が整っています。企業同士が相乗効果を生み出し、双方の事業を最大限に成長させることが可能です。

また、社員の約半数がエンジニアやデザイナーといった専門職で占められているため、開発力の高さも弊社の競争優位性を支えています。生成AI/LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)のようなテクノロジーを駆使し、履歴書や職務経歴書をアップロードするだけで、その人のスキルを自動的に分析する機能を自社開発しました。

今後は、弊社の保有するデータを統合的に活用して、個々人のキャリアの可能性や、適正な報酬を診断する仕組みも実装する予定です。これらの活動を通じて、地球上で働くすべての人を支援し、成功に導くことを目指しています。

ーーなぜ「働く人のためになる」というテーマに注目したのですか?

橘大地:
働く時間は、多くの人々にとって人生の大半を占めています。仕事は単なる生計を立てる手段ではなく、個人の人生に大きな影響を与えるものです。もし、仕事にやりがいを感じられず、毎日の業務が苦痛であったり、無理をして働かなければならない状況が続けば、その人の生活の質が大きく損なわれてしまいます。

このような状況を改善したいという思いから、「働く人のためになる」というテーマに注目するようになりました。働く人々が自分に合った企業や職場環境を見つけ、仕事を通じて自分の成長や充実感を感じられる選択肢を広げることが、より幸せな生活につながると信じています。

売上100億円を目指す次世代HR企業の展望

ーー今後の展望をお聞かせください。

橘大地:
創業から3年で売上100億円、製品開発数20個という目標を掲げています。毎月のように新しい製品をリリースしており、最近では社員の成果や挑戦を賞賛する社内報のアプリケーションや、スマートフォンアプリで利用できる福利厚生のサービスを公開しました。

また、AIや3DCGの技術を使ったバーチャルヒューマンが「面接官」となって採用を行うAI面接のサービスも公開を予定しており、目標は当初の計画よりも早く達成できる見込みです。「新たな時代に適応したHR(人材)プロダクト」を提供する企業として、企業が人材に関する課題を抱えた際に、まず思い浮かぶ存在になりたいと考えています。

そして、HRビジネスで悩んでいる企業には、ぜひ弊グループに加わっていただき、ともに成長していける大きな企業グループを3年で築きたいと考えています。キャリア支援を総合的に提供する企業として、成長意欲の高い20代の方や、さらなるキャリアアップを目指す方々をお待ちしています。

編集後記

弁護士として、また大企業の取締役として数多くの人々と向き合い、彼らの思いを胸に刻んできた橘CEO。彼の事業の根源を支える思いは、働く人が自らの理想のキャリアを実現し、事業の成長とともに皆が報われる社会を築くことにある。

働き方の多様化にともない、人材業界は変革の時を迎えている。新たなテクノロジーとM&Aという強力な武器を駆使しながら、株式会社PeopleXはどんな未来を切り拓いていくのか。その先に広がる可能性に期待が膨らむ。

橘大地/東京大学法科大学院卒業。弁護士資格取得後、企業法務活動に従事。2015年に弁護士ドットコム株式会社に入社し、クラウド契約サービス「クラウドサイン」の事業責任者に就任。2018年より執行役員に就任、2019年より取締役に就任。2024年に株式会社PeopleXを創業し、代表取締役CEOに就任。