株式会社ZEALS(ジールス)は、2016年に業界で初めてチャットでショッピングができる「チャットコマース®」をリリースし、その後もAI開発を進め業績を伸ばしてきた。2022年にはシリーズE(スタートアップの成長フェーズを示す指標)で総額50億円の資金調達を実現し、米国法人を設立。Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人の起業家」にも選出されたZEALSの代表取締役CEOである清水正大氏は、「日本と世界をぶち上げる」という熱い思いを胸に、グローバル展開を主導している。
「AIを通じて、意思を持った人を増やし、人手不足を解決し、おもてなしを世界に届ける」という大きな目標に向かって邁進する清水CEOに、起業の経緯や「チャットコマース®」の特色、今後の展望について話をうかがった。
「人生をかけて大きなことをやりたい」という強い信念で、学生起業する
ーー大学在学中に起業されたそうですが、その経緯について教えてください。
清水正大:
私は高校卒業後、18歳のときに大手鉄鋼会社に就職し、働き始めました。その後に起きた東日本大震災をきっかけに、自分の人生について深く考えるようになりました。そして、いつしか「人生をかけて、日本をぶち上げるくらい大きなことをやりたい」と考えるようになりました。
21歳で大学に入学したのは、自分の信念を実現するための同志を見つけたかったからです。いろんな本を読んだり人に会ったりする中で、株式会社サイバーエージェントの藤田晋さんの著書に感銘を受けました。その著書によって「学生起業」という選択肢を知ったときに、日本をぶち上げる会社をつくろうと思い、即座に会社を立ち上げる決心をしたのです。
ーー創業期はどのようなことに苦労しましたか?
清水正大:
創業当時はお客さまに提供できるサービスやプロダクトがなかったことです。志を持って会社を立ち上げたものの、仕事がない状態だったので、「何か仕事をいただけませんか?」とひたすら飛び込み営業を繰り返す毎日でした。イベントに参加したり、テレアポをしたりして、とにかく人と会って話す機会をつくっていました。
このときの経験は、今の仕事にも生きていると思います。現在、ZEALSはアメリカで事業を展開しているのですが、創業当時と同じように何もないゼロの状態から人とのつながりを構築し、ビジネスを生み出しています。
コミュニケーションの専門チームを置いてチャットボットサービスを開発
ーー貴社の提供する「チャットコマース®」はどのようにして開発されたのですか。
清水正大:
ZEALSでは、コミュニケーションデザイナーという、会話データやブランド、商品に基づいて、お客さまの体験をデザインする専門チームを置いています。「チャットコマース®」は、この専門チームと会話データを積み上げて磨き上げてきたプロダクトです。
実は、日本ではネットショッピングはまだ限られた人しか利用しておらず、実際ECサイトでの商取引は商取引全体の10%強というデータもあります。つまり、化粧品のような身近な日用品でも実店舗での売買が主流なのです。ただ、ネットショッピングを利用しない人でも、LINEなどのコミュニケーションツールは利用しています。
「接客を受けて、納得感を持って商品を買うことができた」という体験を、みんなが使えるチャットというコミュニケーションインターフェースで届けることで、ネットショップの利用を拡大したい。ネットショッピングをする人たちに、新しいコマースの在り方を提供したい。そういう思いで、開発しました。実際に活用されているクライアント企業さまの売上にも貢献しており、喜んでいただけていることが嬉しいです。
ーー他社のチャットボットサービスにはない独自の強みは、どのようなところですか。
清水正大:
「接客・おもてなしの体験」にフォーカスしているところが、「チャットコマース®」の特色です。「チャットコマース®」はチャットを通じた接客において、個々人の具体的なインサイト(趣味、嗜好、懸念など)を取得し、その情報を基にパーソナライズされた提案を行います。
多様な業界経験を持つコミュニケーションデザイナーが、何万通りものシナリオを考え抜いています。これにより、お客様は「自分に合ったコミュニケーションをしてくれる」と感じ、意思決定をサポートし、商品の購入につながりやすくなります。長年サービスを提供する中でこうした会話のデータを蓄積して、ユニークな挑戦とプロダクトの進化に活かしているところが、弊社ならではの強みです。
AIを通じて、人手不足の日本を救い、おもてなしを届ける!
ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
清水正大:
今後は、新規顧客の開拓と新商品開発、そしてAI投資の3つの分野に注力したいと考えています。
私は、「チャットコマース®」が新しいおもてなしの形になり得るものだと考えて、アメリカでもサービスの提供を拡大しています。日本でも大手の企業さまを中心にたくさんご利用いただいておりますが、業界の垣根を越えて、もっといろんな企業さまに使っていただきたいですね。また、弊社のコミュニケーションデザイナーの専門性や能力、これまで蓄積してきた会話データをもとに、新たなプロダクトの開発に注力していきます。
私は、AIトランスフォーメーションに本気に取り組めるかどうかで、日本の未来は大きく変わると考えています。10年後の人手不足を考えると、日本の接客業は相当苦しくなるはずです。AI活用は「できたらいいね」ではなく、日本の未来のために「やるべきこと」だと思います。
日本と世界を「ぶち上げる」ため、AIを通じておもてなしの進化を実現するパートナーとして頑張っていきたいです。
編集後記
2016年というチャットボットの黎明期に、他社に先駆けてチャットコマースの開発に乗り出した清水社長。2022年には米国に進出し、株式会社ZEALSの事業はさらなる成長が期待できる。企業のAIトランスフォーメーションに貢献して、ぜひとも日本をぶち上げてほしい。
清水正大/1992年生まれ。岡山県出身。岡山県立水島工業高校卒業後、大手重工業企業にて航空機製造に従事。働きながら貯金し、21歳で明治大学経済学部に入学。在学中の2014年に、東京都渋谷区で株式会社Zeals(現:株式会社ZEALS)を起業する。2016年、業界初となる「チャットコマース®」をリリース。2018年、Forbesの「アジアを代表する30歳未満の30人の起業家」のエンタープライズ・テクノロジー部門にノミネートされる。2022年、シリーズEで総額50億円の資金調達を経て、米国法人を設立。同社のグローバル展開を主導。