※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

1963年に設立されたオリエンタル塗料工業株式会社は、大阪を拠点に全国で塗料の製造販売を行う企業だ。屋根用塗料を主力製品とし、2023年に創業60周年を迎えた同社は、長年にわたり培ってきた技術力と信頼を基盤に、時代の変化に対応しながら成長を続けている。3代目代表取締役社長である橋本安光氏に、これまでの歩みを振り返りつつ、近年の新たな取り組みや未来への展望についてお話をうかがった。

異業種からの転身、コロナ禍での船出

ーーどのような経緯で社長に就任にされたのですか?

橋本安光:
弊社は母方の祖父が創業し、父が2代目として事業を引き継いでいましたが、父が70代になったころに、私に「会社を継いでほしい」という話になったのです。関東の食品商社に勤務していた私は、2019年に大阪へ行きましたが、急な承継の話でまだ受け入れ準備が整っていなかったため、入社前に1年間の猶予をもらい、塗料や経理のことを学びました。

卸売業から未経験の製造業への転身に加え、取り扱う商材も食品から塗料へと変わり、最初は戸惑うことばかりでした。もう少し時間をかけて勉強をしたかったのですが、コロナ禍が始まり、高齢の父の体力的な負担も増していたため、2021年に代表取締役への就任を決断しました。

ーー入社した頃、会社はどのような状況でしたか?

橋本安光:
2019年10月の消費税増税前には駆け込み需要が発生し、一時的に売り上げが大きく伸びました。ただ、住宅や車など高額商品に使用される塗料は数パーセントの価格変動でも影響が大きく、増税後には売り上げが落ち込みましたが、これはまだ想定内でした。

しかし、そこへ重なったコロナ禍は想定外で、二重の苦境に立たされることになったのです。私が会社を引き継いだ時期は、何とか黒字を維持していたものの、かなり厳しい状況にあり、立て直しには大きな努力を要することとなりました。

商社の経験を活かし、営業改革を推進

ーー社長就任後、特に注力された取り組みは何ですか?

橋本安光:
まず着手したのが営業に関する意識の改革です。社長に就任し、改めて社内を見渡すと、技術力はあるものの、それを効果的に広めるノウハウが欠けていることに気がつきました。なぜ売れたのか、製品の優れている点はどこかといった説明が十分にできていなかったのです。

そこで、コロナ禍による活動制限を逆手にとり、カタログの刷新や販促物の整備、さらに営業戦略を議論する場を設けるなど、前職での商社経験を活かした取り組みを進めました。

社内で議論を重ねる中で、1つの塗料で複数の効果を得られる製品を目指すアイデアも生まれました。さらに、プロバスケットボールチーム「大阪エヴェッサ」のスポンサーとなり、名刺にロゴを入れることで営業時の話題づくりを図ったり、テレビ番組「アサスマ」に出演して企業や製品を広くアピールしたりと、新たな営業展開にも積極的に挑戦した結果、着実に売り上げを回復させることができました。

ーー改めて、貴社の事業内容と強みについて教えてください。

橋本安光:
弊社は塗料の製造販売を行っています。弊社の塗料製品が持つ最大の特徴は、シーラーの機能を持たせた上塗り塗料です。これにより、塗装工程を1段階省略でき、施工時間やコストの大幅な削減が可能になります。また、この技術がもたらす高い密着性により、塗膜が剥がれる原因を抑制できる点も大きな特徴です。

中でも「新いぶしコート」は、瓦を総入れ替えすることなく、塗装によって新品のような風合いを再現でき、弊社を代表する製品の1つです。この技術は、長崎県の島原城の改修にも採用され、弊社の技術力の高さを示すものとなりました。この製品の成功を通じて、従来の規模では実現できなかった周知活動を進め、営業活動の新たなきっかけを生み出すことができたと思っています。

屋根減少という社会変化の中で、新たな用途へ挑戦

ーー今後の取り組みについて教えてください。

橋本安光:
今後は、新規顧客の開拓、採用強化、新製品の開発の3つを重点的に進めていきます。コロナ禍を契機とした新規顧客への営業強化が実を結び、現在ではコロナ禍以降に取引を開始したお客様が全体の売り上げの15%を占めるまでになりました。

物価高騰が続く厳しい環境下ですが、塗料の無駄を削減する工夫や効率化を図り、お客様のニーズに応えていきたいと考えています。また、新たな取り組みとして、SNSを活用した塗装のメリットや活用事例の発信も検討しています。

採用面では、人材確保が難しくなっている現状を踏まえ、より良い働き方の実現に向けた就業規則の見直しに着手しています。優秀な人材が安心して働ける環境づくりが、企業の持続可能な成長には欠かせないと考えているからです。

さらに重要な課題として、人口減少や住宅の減少、マンションの増加により、屋根用塗料に依存してきた従来のビジネスモデルからの転換が急務です。そこで注目しているのが、弊社の塗料が持つ高い耐候性という強みです。

紫外線や雨風といった過酷な環境に耐える屋根用塗料の特色を応用し、トラックの荷台やコンクリートミキサーの内部温度の上昇低減、さらには公園の遊具への展開など、新たな用途開発の依頼も増加しています。科学的な実証を重ねながら、着実に研究開発を進めていきたいと考えています。

ーー今後、どのような会社にしたいとお考えですか?

橋本安光:
汚れていた場所に塗料を塗ることで見違えるほど美しくなる瞬間には、特別な感動があります。入社当初、塗料への理解を深めるために、社内のいくつかの場所を実際に塗装してみたのですが、汚れていた壁が美しく蘇る様子に、思わず心が躍ったことを今でも鮮明に覚えています。

その感動を大切にしながら、同じような驚きや満足をお客様にも提供できる企業であり続けたいと考えています。そのために、社員一人ひとりがその価値を共有し、お客様の期待を超える製品とサービスの提供に全力を尽くす会社を目指していきます。

編集後記

実際に塗料を塗り、汚れた壁が一瞬で美しく蘇る感動を大切に持ち続ける橋本氏。その純粋な驚きは、異業種から転身した彼ならではの視点に違いない。商社で培った営業ノウハウと自由な発想は、既存の枠を超えた製品開発を推進する原動力となっている。住宅減少が進む時代に、屋根以外の新たな可能性を切り開こうとする情熱と実行力が、同社を次のステージへと導くであろう。

橋本安光/1976年生まれ。食品商社での経験を経て、2019年オリエンタル塗料工業株式会社に入社。2021年代表取締役社長に就任。