※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

顧客それぞれの要望に合った製品の提案から、保守メンテンナンスを一貫して行うJOHNAN株式会社。創業から60年以上、半導体・通信機器・自動車・産業機器・船舶・医療機器・航空宇宙分野など、幅広い産業分野で革新的なものづくりを支え続けてきた。

現在は、寿命を迎えた産業機械の電子基板を修理し、蘇らせる事業で注目されている。代表取締役社長兼CEOの山本光世氏に、製品の使い手がプロセスにも参加するものづくりプラットフォーム企業としての展望と、充実した社員教育に込める思いについて、お話をうかがった。

逆境に立ち向かう経営者の姿に感銘を受けて

ーー現在までの経歴をエピソードを交えてお聞かせください。

山本光世:
大学卒業後、中小企業向けの経営コンサルティングを行う会社に入社し、そこで経営の厳しさを目の当たりにしました。ITバブルの崩壊時、担当していたクライアント企業の社長から自宅に呼ばれたのですが、そこで目にしたのは、連帯保証で個人資産を差し押さえられ、4畳半の和室の借家で暮らしている姿でした。

涙ながらに「失敗した、倒産した」と語る社長の姿に、会社経営とは「冬の湖に張った薄い氷の上を歩くようなもので、一歩間違えれば倒産しかねないのだ」と痛感したことを鮮明に覚えています。

その後、JOHNAN株式会社に入社することになりますが、きっかけは父からの誘いでした。当初は事業承継について意識はしていませんでしたが、父から話があった際、「一緒に働きたい」と感じたため、弊社に入社し、現在に至ります。

ーー「一緒に働きたい」と思ったのはなぜですか。

山本光世:
限られた資源の中で工夫を凝らし、独自の強みを磨く姿勢に共感したからです。弊社が創業40年を迎えた際に読んだ「これから」という未来を描いた冊子には、大手の下請けとして多くを学ばせていただいたことへの感謝の念と、下請けの立場ならではの苦労が綴られていました。それでもなお、新規事業に挑戦していく姿勢に深く感銘を受け、ともに歩む決意を固めたのです。

多様なニーズに応える、変種変量の生産力

ーー貴社の事業について教えてください。

山本光世:
一言で言うと、弊社は「ものづくりプラットフォーム企業」で、お客様の要望に基づいて製品の研究開発から商品化、設置、修理、保守メンテナンスまで、一貫したサービスを提供しています。

広範囲にわたってものづくりに携わることができるため、顧客のニーズに合わせた事業展開ができていましたが、近年は、基板修理に関連する営業が増加しています。製品を長期間使用し続けるためには修理が必要ですが、問題となるのはメーカー保証が切れた場合です。

その点、弊社のサービスは、メーカー保証が切れても特定の条件下ならば修理可能としているため、多くの企業から大変重宝されています。故障した装置を修理し、再び使用可能な状態に戻せることは、企業にとって大きな価値があるサービスだと確信しています。

さらに、弊社の強みの一つが「変種変量生産」です。スタートアップ企業が新たに製品を開発する際、どんなに優れたコンセプトであっても、出してみないと市場の反応は分かりません。したがって生産計画が立てづらいのですが、そうした中でも、求められる生産量に応じて柔軟に生産ラインを変更する仕組みを、弊社では「変種変量生産」と呼び、お客様の生産計画の変化にもスムーズに対応しています。

挑戦を支える環境と人材育成へのこだわり

ーー社長が感じる貴社の魅力は何ですか。

山本光世:
弊社の魅力は、新しいことにチャレンジできる環境が整っている点だと思います。半導体や自動車、医療機器など多岐にわたる産業分野で、開発から製造、メンテナンスまで幅広くカバーしているため、社員は多くの役割を経験できます。

部署を問わず連携が求められるため、「これしかできません」という限定的なスキルの成長ではなく、「専門はこれですが、ほかにこれもできます」という多面的な成長を実現できる点は、弊社ならではの特徴ではないでしょうか。

また、社員教育に力を入れている点も魅力の一つです。継続的に望む成果を出す為の習慣を学ぶ場として、ベストセラー書籍『7つの習慣』を活用した研修を実施し、ファシリテーターが実践的な学びの機会を提供しています。

事業毎に求められる技術やマーケティングのスキルに留まらず、自身のキャリア形成に役立てる、「JOHNANらしさ探求会」を実施し、自身らしさを見出すきっかけを提供しています。管理職を目指す社員には、トレンド把握力や思考力、コミュニケーション能力を磨くための特別プログラムも用意し、次世代のリーダー育成に力を注いでいます。

ーーなぜ社員教育に力を入れているのですか。

山本光世:
社員教育に力を入れる理由には、いくつかの背景があります。私自身が、これまでの人生で、返済不要の奨学金を3種類受給して高等教育を授かる機会をいただいて今の私がありまして、何らかの形で社会に恩返しをしたい」と常に強く考えているというのが第一の理由です。

また、私が社長に就任した当初、リーマン・ショック後の厳しい経営環境下において、拠点閉鎖や新規事業からの撤退、人員整理といった苦渋の決断を迫られることがありました。そのとき、「会社が永続的に発展し雇用機会を生み出すこと、そのための教育が、経営者としての最大の使命である」と感じたことが第二の理由です。

さらに、弊社から去る社員がどの会社に行っても活躍できるように育成することも、社長として重要かつ誇り高い仕事だと思っている点が第三の理由です。会社経営においては事業の進出や撤退や再編はつきものですが、当社グループの社員は常に自律して仕事ができる力を養う支援は、経営者の責務だと考えています。

社会に革新を届けるビジネスモデルの確立へ

ーー今後、重点的に取り組みたいことを教えてください。

山本光世:
製造やメンテナンスだけでなく、開発からメンテナンスまでを横断的に行っていきたいと考えています。たとえば、製造コストの削減を考える際に、開発プロセスそのものを見直す必要性が出てくることがあります。

また、納品後にメンテナンスまで関わることにより、故障の原因を特定し、それを開発にフィードバックすることで、より良い製品を生み出し続けることが可能です。今後は、営業活動においても横断的に関われるチームをつくり、お客様に提案していきたいですね。

5年後には、ものづくりプラットフォーム企業として、弊社のビジネスモデルが広く知られるようになることを目指します。さらに、弊社は「JOHNAN VISION 2050」を策定し、「JOHNAN VISION 2050」に基づき、その達成の指標として、「未来の製品を10種類」「未来の案内人を10人」「未来の工房を10拠点」を掲げています。

このビジョンに基づき、未来の製品や取り組みを具体的に生み出し、社会にインパクトを与えることに挑戦していく所存です。

編集後記

「開発からメンテナンスまで一貫して担いたい」というJOHNAN株式会社のビジョンには、企業が抱える課題を真摯に解決したいという強い情熱が感じられる。また、山本氏が逆境を乗り越えたことで得た教訓は、社員教育への情熱に反映され、社員一人ひとりの成長を支えたいという深い思いにつながっている。

ものづくりプラットフォーム企業としての新たな戦略が、社会にどのような影響を及ぼしていくのか、その展開に大いに期待が膨らむ。

山本光世/ベンチャー支援会社にて経営コンサルティング、新事業開発支援を経験。その後、JOHNAN株式会社にて、国内外の企業との資本提携や新規事業投資、組織文化改革に従事。ODM(受託開発)・EMS(受託製造)型のビジネスモデルから、「ものづくりプラットフォーム」型のビジネスモデルへの変革を主導している。2010年代表取締役社長兼CEOに就任。