
Honda正規ディーラーとして、栃木県内で14拠点を展開する株式会社ホンダカーズ栃木中央。人口減少や高齢化、脱炭素化への要請、自動運転など技術革新が進む中、多様化するニーズにどのように向き合い、次世代のモビリティを提供していくのか。
同社の代表取締役社長である岩瀬剛之氏に、これまでの歩みや代表としての思い、そして未来への展望についてうかがった。
経理経験を活かし組織改革へ挑んだ道
ーーご自身の経歴や入社後以降の役割について教えてください
岩瀬剛之:
学生時代に専門学校で経理全般を学び、その経験から入社後は経理部門を中心に組織強化に尽力してきました。弊社はHonda正規ディーラーであり、Hondaから提供される経理や労務のシステムを活用していましたが、時代や社風に合わせてそのシステムを改良し、発展させていきました。
入社当時の弊社は、創業者である母親を中心に、少数精鋭で営業部門に特化していましたが、前社長が営業部門、私が財務部門を協力してやることで経営基盤がより強化されました。
ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。
岩瀬剛之:
弊社の事業内容は、新車販売、中古車販売、自動車整備、部品用品販売、損害保険代理業、その他附帯業務全般と多岐にわたります。入社時は2店舗からのスタートでしたが、現在は新車10店舗、中古車3店舗、PDIセンター1拠点の計14拠点に拡大し、栃木県最大規模のHondaディーラーに成長しました。これにより、地域に根ざした経営基盤を築き、地域ナンバーワンの地位を確立しています。
また、栃木県内で管理する車両台数は約4万3,000台に達し、1人当たりの販売台数が全国でもトップクラスで、1営業マンが年間10台以上を販売する実績を誇っています。
現場と顧客の声によりそう「恕の心」とは
ーー貴社が大切にしていることを教えてください。
岩瀬剛之:
業務面では、お客様と直接向き合い、率直な対話ができる機会をどれだけ確保できるかが大切だと考えています。ご来店いただいたお客様と1対1でしっかり向き合うことで、私たちはお客様が本当に求めているものを理解し、最適なご提案が可能になると考えています。
仕事に取り組む姿勢では、基本理念に掲げている「恕の心でよりそう」ことを大切にしています。全社員がこの理念を体現していることが、弊社の特徴であり、強みだと思っています。
「恕の心」とは、常に相手の立場に立って物事を考え、思いやりを持って行動することを意味します。相手を受け入れ、理解し、支える恕の心を持つことで、私たちはお客様に夢と幸せを届け続けたいと願っています。
ーー社長が考える、貴社の強みをお聞かせください。
岩瀬剛之:
弊社には、社長室がなく、役員や管理職も、ほぼ毎日現場に出ています。社内の空気を肌に感じ、お客様の声に耳を傾けることで、現場と経営層の距離がとても近いのです。それによって、小さな声もすくい上げ、新たなサービスを生む好循環につながっていると感じています。
私個人としても、会社の将来にプラスになることであればどんな声でも柔軟に受け入れたいと考えています。
栃木県ナンバーワンのディーラーへ お客様満足と社員満足、地域貢献

ーー今後の展望についてもお話いただけますか?
岩瀬剛之:
地域に根差した企業になり、栃木県ナンバーワンのディーラーを目指したいと考えています。
弊社には、Honda四輪サービス技能修得制度の最上位資格「Hondaマスターオブサービスジェネラリスト(HMSG)」の保有者が6名います。栃木県全体でもこの資格を持つ人材は10名程度しかいないことを考えると、いかに弊社に優秀な人材がそろっているかがおわかりいただけると思います。
現在、既存の納車センターを300坪拡張したのに加え、さらに約4000坪のモビリティセンターの新設計画を進めています。これにより、物流や納車の効率が大幅に向上することを期待しています。優秀な人材が最大限力を発揮できる職場環境を整え、本田技研工業と協力しながら、自動車だけに留まらない多様化が進むモビリティを発信できる基盤をつくり上げていきたいと考えています。
ーーその目標を実現するために、どのような努力をされていますか?
岩瀬剛之:
労働環境・労務関係の整備に力を入れています。ここ数年、お客様がくつろげる空間づくりと、社員が効率的に働ける環境を整えるため、大規模な店舗や工場リニューアルを進めてきました。また、社員のワークライフバランス向上のため、年間休日の増加や、有給休暇の取得促進も進めています。
栃木県でナンバーワンのディーラーになったとしても、社員が疲弊してしまっては意味がありません。会社を発展させていく上で人材が一番の財産ですから、社員の幸せも叶えていきたいと思っています。
新卒採用が増え、社内の活気も高まっています。フットサルやバスケットボール、ツーリングなどさまざまなサークル活動が活発で、年齢・職種の壁を超えた社員同士の絆も深まっています。社員の能力を存分に引き出せる体制を整えることで、私たち自身も新しい景色を見ることができると期待しています。
さらに、キッズ職場体験や安全運転講習会の開催、プロスポーツチームのスポンサー活動など、地域に根差した取り組みを積極的に行い、同時に、お客様や地域社会に喜ばれるグリーンディーラーとして、環境保全にも力を入れて努めています。
編集後記
「お客様の満足は社員一人ひとりの満足から」という岩瀬社長の言葉から「恕の心」でお客様の思いに応えることはもちろん、地域社会に貢献し、代表取締役社長として社員の人生に寄り添ってともに歩もうとする姿勢が伝わってきた。
Honda正規ディーラーとして、顧客満足度NO.1を獲得し、他県のディーラーが見学に来ることもあるという株式会社ホンダカーズ栃木中央。創業60周年に向かい、進化への思いを携えて挑戦を続ける同社に今後も注目したい。

岩瀬剛之/1960年栃木県生まれ、小山高校卒業、1982年に入社、2006年代表取締役専務、2023年代表取締役社長に就任。「継続は力なり」をモットーに人財の成長、企業の成長に注力している。