※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

2024年に、創業50周年を迎えた株式会社アーバンリサーチ。アパレル業界でいち早く電子商取引(EC)事業を展開し、業界のEC化率が平均23%である中、同社は40%を超える。コロナ禍を経て新体制となった今、次なる50年に向けて新たな挑戦も始めた。多様な個性を持つスタッフの力を活かし、画一的なチェーン店とは一線を画す店づくりを目指す同社。その未来像について、代表取締役社長の竹村圭祐氏にうかがった。

幼少期から店舗で育まれた次世代への道

ーーかねてよりアーバンリサーチを継ぐことを意識していましたか?

竹村圭祐:
私は創業家の長男として、会社の創業直前に生まれました。中学生のころから店の掃除を手伝い、高校時代はアルバイトとして働いていたこともあります。ミシンで洋服の補修作業をすることもありました。店舗の2階で暮らしていた幼少期から、この仕事が生活の一部だったため自然な流れで家業に入ったのです。

ーー創業家の後継者として、入社後に苦労したことは何ですか?

竹村圭祐:
「創業家の長男の立場」で入社したので最初は先輩方に気を遣うことも多かったのですが、ある程度時間が経過すると、気負わず、自然体になれたのです。高校生のときから働いていたため、入社後も周りのスタッフは気を遣わずに接してくれたのが幸いでした。

いつしか時が流れ、ポジションが上がり、今まで上司として接してきた人と立場が逆転したときは、今後の付き合い方をどうしたものかと複雑な気持ちになったことがありました。しかし、幼い頃からの付き合いで、信頼関係があったことで、大きなトラブルなく関係を築けた点は恵まれていたと思います。

ーー社長就任前にはさまざまな気苦労があったそうですね。

竹村圭祐:
コロナ禍前はさまざまな課題を感じていました。会長との考え方の違いに悩むこともありました。そんな中、コロナ禍で、私たちの世代が新たな挑戦をしなければならない状況にもなったことで、社長就任前ではありましたが、自分自身吹っ切れたように思います。

今振り返ると、会長は新社長体制への移行を見据えて、私を試してくれていたのだと思います。後から知ったことなのですが、当時の会長は私に体制を移すにあたって、私に任せても大丈夫かどうか見極めていたのが私にはプレッシャーになっていたようです。

EC先駆者が挑む次なる市場開拓

ーー業界の中でも早くからECへの取り組みを推進されたそうですが、その点を詳しくお聞かせください。

竹村圭祐:
新店を出店し、私が店長に就任した当時、その店舗を構えた通りが、ファッションストリートとして注目され始めていました。オープン前は静かな通りだったのですが、オープン後は週末になると多くの人で賑わうようになり、私たちの店舗も雑誌の取材が増えていったのです。そこで、ブランドサイトの制作を始め、「せっかくなら販売もできる形にしよう」と、ECサイトの立ち上げに発展したのです。

当時は「クリック&モルタル」(実店舗とネット通販の相乗効果を図るビジネスモデル)という言葉があり、実店舗とECの連携が重要だと考えていました。ECでも実店舗の魅力を伝えることを意識し、スタッフ主体の情報発信を積極的に行いました。今でこそ当たり前ではありますが、当時はサイトの信頼性や在庫の確保などの問題を早々にクリアできたことで、先行者利益を得られたと考えています。

ーー商品開発では、どのような取り組みをしていますか?

竹村圭祐:
UR TECH」や「200日ニット」など、オリジナル素材の開発に力を入れています。200日ニットは、極暑の時期以外の1年の大部分で快適に着用できる素材として開発しました。また、スタッフの趣味から生まれたフィッシングウェアのような商品の開発も行っています。「URBAN RESEARCH DOORS(アーバンリサーチドアーズ)」では、日常生活に取り入れやすいライフスタイル商品を展開し、実用性とスタイルの両立を目指しています。

ーー新しい取り組みとして、京都店のリニューアルもおこなったそうですね。

竹村圭祐:
京都の店舗は、未来を見据えた新しいコンセプトでリニューアル(※)をしました。アーバンリサーチの中でも価値を高めた店舗として生まれ変わり、京都限定のセレクト商品や、ユニセックスで幅広いサイズ展開の新しいオリジナルレーベルも登場しました。私たちが考える「上質なベーシック」を提案し、京都から発信していきます。

(※)URBAN RESEARCH KYOTOリニューアル記事

個性を活かす組織文化が導く次の50年の成長戦略

ーー貴社の企業文化を教えてください。

竹村圭祐:
私たちはスピード感を何よりも大切にしています。新しいことに挑戦し、すぐに行動に移す姿勢が弊社の最大の強みです。「チャレンジして失敗しても、おもしろければOK」という考え方で、スタッフの挑戦を全面的に応援しています。お客様が弊社の店舗に足を運ぶのは、そこでしか手に入らない商品があるからだけではありません。店舗の雰囲気やスタッフの個性に魅力を感じていただけるからこそです。一方、会社の規模が大きくなるにつれ「しっかりしなければ」という意識が高まり、チャレンジ精神が薄れる懸念もあります。「個性」と「規律」のバランスを保つことが、今後の重要な課題です。

ーー採用や人材育成について、重視することは何でしょうか?

竹村圭祐:
スタッフ一人ひとりの魅力や可能性を見極め、それを最大限に活かせる環境を整えることを大切にしています。販売現場では接客トークが重要視されがちですが、それだけでは十分とはいえないでしょう。たとえば、釣りが趣味のスタッフが、その経験や知識を活かして接客することで、「この人の話を聞きたい」と再度来店されるお客様がいらっしゃいます。個人の趣味や特技が仕事に結びつくように、弊社では積極的に活躍の場を提供しているのです。

ーー今後の展望をお聞かせください。

竹村圭祐:
「アーバンリサーチ」を国内外で広く認知される存在にしていきたいと考えていますが、全国津々浦々への出店は目指していません。日本のファッションに関心の高い方々に選ばれる、質の高いブランドづくりを進めていく方針です。また、デジタル技術を活用することで、より柔軟な働き方を実現し、スタッフの個性が光る、魅力的な店舗運営を目指します。

編集後記

創業50年の歴史を持ちながら、スタートアップ企業のような勢いのあるチャレンジ精神と柔軟性を失わない株式会社アーバンリサーチ。その原動力は、「人」を中心に据えた経営にある。

新しいブランドも、商品開発も、すべては現場で働くスタッフの「やってみたい」という声から始まっているのだ。竹村社長自身、現場からのたたき上げならではの視点で、組織の可能性を広げ続けている。この先の50年も、きっと面白い進化を見せてくれるに違いない。

竹村圭祐/1974年、株式会社アーバンリサーチ創業の直前に生まれる。1998年、同社入社後、アーバンリサーチ1号店で販売スタッフに従事。京都店、堀江店店長を歴任する傍らECサイトの立ち上げ・運営に携わる。東京初出店の際、店長として赴任。2004年より総務部長。人事総務部門、EC・情報システムなどのデジタル部門を担当。その後、事業支援本部長、専務、取締役副社長を歴任し、2023年に代表取締役社長就任。アーバンリサーチ採用サイトはこちら。アーバンリサーチオンラインストアはこちら