
ベビー用品の製造販売を手がける株式会社ケイジェイシーは、子どもの「できた」を支える環境づくりに取り組んでいる。子どもの成長をサポートする商品を次々と生み出し、育児に関する情報発信やアプリ開発と幅広く展開。2003年の創業以来、お箸やフォーク&スプーン、コップなどの食事用品を中心に独自性の高い商品を開発し、子育て世代から支持を集めている。ブランド価値のさらなる向上を目指し、子育て支援の領域を広げている同社の代表取締役、崔鍾植氏に話をうかがった。
市場の成長性に着目し、ベビー用品業界で起業
ーー社長のご経歴をお聞かせください。
崔鍾植:
私は24歳のときに、留学生として韓国から日本に来ました。当時の私の夢は、自分の名前が残るような大きな仕事をすることでした。政治家や公務員になれば、夢がかなうかもしれないと思いましたが、韓国出身の私が日本で政治家や公務員として出世するのは難しかったので、それならば起業して社長になろうと決意したのです。
大学卒業後は商社に就職して、化粧品や石鹸の販売に携わっていました。この分野の商品はいわゆるレッドオーシャン(過当競争市場)で、すでに名のあるブランドが多数存在していたため、新規参入した会社にとって生き残るのが難しい状況でした。
私は起業するにあたって、競合の少ない分野がいいと考えており、目を付けたのがベビー用品市場だったのです。日本のベビー用品の市場規模は拡大傾向にあり、私のような新規参入事業者でも商品やサービスさえ優れていれば十分に競合と戦うことができると考え、2003年に弊社を設立しました。
商品開発の基準は「心で動き、心で決める」

ーー貴社の事業内容について教えてください。
崔鍾植:
弊社は「EDISONmama(エジソンママ)」ブランドを主力として、ベビー用品の企画開発、製造、輸出入を手がけています。創業当初から価格勝負ではなく、品質とオリジナリティにこだわってきました。また、最近では子育て記録ができるLINEを活用したアプリをリリースするなど、商品だけでなく情報コンテンツの提供も行っています。
ーー貴社の事業を運営する上で大切にしている考えや価値観をお聞かせください。
崔鍾植:
商品開発の最後の基準になるのは、人の心だと思うのです。「心で動き、心で決める」という考え方が大切だと思っているので、周囲の人への感謝や思いやりを忘れずに、小さなことや、周りから見えないことにも誠実な行動を心がけています。そうした行動の積み重ねが、お客さまを感動させる商品にもつながっていくと考えています。
また、私は物事を決定する際、金銭上の損得だけで考えないようにしています。お金のことで自分の動きを制限せず、やれることをすべてやりきるのです。商品開発に関しても同様に、目先の利益ではなく将来のビジョンを見据えた動きをすることを、全社的な方針として採用しています。
ーー貴社の強みはどのようなところですか?
崔鍾植:
弊社は、たとえば小さな子でも使いやすく“できた”の体験ができる「エジソンのお箸」をはじめ、多くのヒット商品を生み出しています。それでも現状に満足することなく、常に次のヒット商品を目指す向上心があるところが最大の強みだと思っています。現在、非常に人気の商品があったとしても、そこに甘んじず、市場が常に変化することを意識して、新しいビジネスの種を探し続けることが重要なのです。
また、創業から20年以上にわたるノウハウの蓄積と、M&Aによって構築した多様な営業体制があるため、ベビー用品だけでなく、その周辺分野にも取引先があります。既存顧客とのつながりが強く、無計画な飛び込み営業を行う必要がないところも、弊社の強みの一つです。営業の9割は既存顧客へのルートセールスです。
国内生産拠点を強化し、世界に通用するブランドを目指す

ーー今後、どのように事業を成長させたいとお考えですか?
崔鍾植:
ベビー用品メーカーとして、世界に通用するトップシェアのブランドを目指したいですね。育児について何か知りたいことがある人が、自然な流れで弊社のWebサイトやアプリを使うような、知名度の高いブランドになりたいと考えています。
また、近年の円安の影響により、仕入れコストが増大しており、国内の生産拠点が2割ほどだった弊社は利益が圧迫されている状態でした。それを克服するために、現在は国内に生産拠点を増やし、メイドインジャパンの割合を高めています。設立当初より、品質改善にも積極的に取り組み、「1件の要望の後ろには、99件の要望が控えている」という気持ちで、商品の開発や改善に臨んできました。部署間の垣根を越えて情報を共有しながら、今後も高品質な商品を開発し、業界で最強のブランドになりたいですね。
また、今後はマタニティ期にも商品を拡充し「子どもができたらエジソンママ」と想起されるブランドを目指します。さらに、エジソンのお箸がデビューして21年目を迎え、子どもの頃、エジソンのお箸を使った方がママパパになります。その結果「自分が小さい頃に使っていたエジソンのベビーグッズを与えたい」という気持ちになってくれるとうれしいです。
ーー最後に、この記事の読者に向けてメッセージをお願いします。
崔鍾植:
私のモットーは「今日より幸せな明日を創る」です。そのため、弊社で働いてくれる社員たちにも、「この会社で働いてよかった」と思ってもらえるような会社をつくりたいと考えています。社員が働きやすい環境づくりに注力した結果、産休や育休取得後の復職率は100%を維持しています。復職後も育休前と同じポジションに戻れることが大きな魅力と感じられているようです。ですが、弊社は依然として成長途上にありますので、やる気がある方はぜひとも弊社の力になってほしいです。きっと、ご自身も大きく成長できると確信しています。
編集後記
成功体験に甘んじることなく、常に新しい課題に挑戦し続ける崔社長の姿勢が印象に残った。ベビー用品という、人の成長をサポートする事業だからこそ、企業自身も成長し続けなければならない。お客さまの要望に真摯に向き合い、商品の開発・改善につなげる方針に、同社の持続的な成長への意欲を感じた。親から子どもへと2世代にわたって受け継がれているブランドは、さらに次の世代へと引き継がれるだろう。

崔鍾植/24歳のとき、韓国から留学をきっかけに来日。2000年、横浜商科大学を卒業後、貿易商社に入社。2003年、株式会社ケイジェイシーを創業し、代表取締役に就任。