※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

建設業界では、立地などの条件に応じて物件ごとに特注の部材を使う必要があるが、その調達においては資材高騰と共に課題が顕在化、少子高齢化の加速も相まって持続可能性が危ぶまれる事態が生じ始めている。規格品のようにスケールメリットを活かしづらいだけでなく、製作工場の廃業・減少によりどの企業に依頼をすれば最適なコストや品質で製造してもらえるか分からないからである。

この課題に、テクノロジーで挑むのが株式会社BALLASだ。同社は特注部材の作図標準化に加えて、最適な工場に繋いで生産するプラットフォームを提供。「メーカー機能を備えるテックカンパニー」として、建設業界の最適化に取り組んでいる。商社での経験を活かし、建設業界のアップデートに挑む代表取締役の木村将之氏に話をうかがった。

サプライチェーンの課題から見えた起業のチャンス

ーーどのような経緯で起業しようと考えたのですか?

木村将之:
私はもともと商社で働いており、金属資源本部という部署で、鉄鋼やそれに関わる材料及び製品の輸出入や事業投資、投資先の経営支援に携わっていました。製造業界と建設業界の双方のお客様に関わっていく中で、「生産性」において大きな違いがあることに気づきました。

そして、「製造業の手法をアレンジして建設業に持ち込むことができたら、持続可能な業界の発展に寄与できるのでは」と考え、2022年に独立し、事業をスタートしました。

ーー社長が感じた建設業界の課題とはどのようなことですか?

木村将之:
BALLASの由来にもなっている、「図面バラシ」という工程がボトルネックと考えています。お客様である建設工事会社様が作図した図面をもとに、製作工場様が建設部材を作るために行う工程ですが、これが製造業とは異なる建設業特有のワークフローと認識しています。

一品一様な特注の建設部材の製作には、毎回一からの作図作業が必要なだけでなく、作図が可能なパートナーの探索、一品生産に伴うコスト改善、品質改善の難しさなどの困難が伴います。

少子高齢化が加速度的に進む建設業界において、ソフトウェアによる局所的な改善ではなく、図面バラシを起点にした調達サプライチェーン全体を最適化する必要があると考えています。

ーー製造業のやり方を持ち込むとは、どういうことなのでしょうか?

木村将之:
建設業は一品一様であるが故に必ずしも「生産性の向上」が最上位概念ではありませんが、製造業においては産業革命に表れるように生産性を主眼とした技術開発が重ねられています。私が商社で扱っていた金属3Dプリンターは、その最たる例ではないかと思います。3Dプリンターの本質は、設計データを送れば材料と装置がある複数の場所で部材製造ができることと理解し、これを既存サプライチェーンの変革の一つだと捉えました。設計データの柔軟性によっては、カスタマイズしながらも大量生産と同じ生産性を追求できるのではないかと考えたのです。

ーー貴社のミッション・ビジョン・バリューについてお聞かせください。

木村将之:
弊社は「建設業を最適化し、人々を幸せに」、「建設部材の最適な調達を実現する」、「すぐやる、必ずやる、最後までやりきる」というミッション・ビジョン・バリューを掲げています。

この“人々”の中には、建設事業者だけでなく、そのご家族、ひいては建設物を利用する人々も含んでいます。お客様である建設工事会社様が施工に集中でき、パートナー工場様が部材の製作に集中できるように、強みを活かせる状態をつくる。それにより、QCD(Quality=品質、Cost=価格、Delivery=納期)の高い建設物ができ、創造性豊かな社会に繋がると考えています。

このミッションに向けて、インパクトの大きい調達領域から「最適化」すること、さらにビジョンの実現のために「最後までやりきる」というバリューが生まれました。

設計から供給まで、一気通貫の価値提供

ーー貴社の事業内容を教えてください。

木村将之:
弊社は、建設部材の調達プラットフォームである「BALLAS(バラス)」を通じて、建物に使用される建設部材を供給しています。扱う商品は大きく2つの領域に分かれており、1つは設備の付帯物が主のプラント領域。もう1つは、集合住宅や商業施設などに使用される部材を供給する建築領域です。テクノロジーの力で建設部材の設計・開発から販売までを行っており、「メーカー機能を保有したテックカンパニー」と自らを定義しています。

ーー貴社の事業の強みや特徴はどのようなところですか?

木村将之:
スタートアップでよく見られるソフトウェアの提供だけでなく、自らが建設事業者として建設部材の供給を行っている点、ソフトウェアを活用して調達に関わる業務プロセスの改善を行っていることが最大の特徴です。中でも、一品一様な特注品の建設部材へのアプローチはユニークなものと自負しています。

従来、特注部材はオーダーメイドでゼロから作図・製作することが一般的でした。弊社では、こうした部材の定数・変数を抽出し、パラメーターとして設定することで可変な標準モジュールを生成しています。標準モジュールから作図・製作することで、建設工事会社様へは、品質、価格、納期競争力の高い持続的な生産体制を、パートナーである製作工場様へは稼働率の向上、生産性の改善に寄与しています。

最先端技術を駆使して建設業をアップデートしたい

ーー今後はどのようなところに注力したいですか?

木村将之:
弊社は建設サプライチェーン全体が最適化されている状態を目指しています。そのためには、現在よりもさらに深く、広く建設業界に関わる必要があると考えています。

2024年末に建設業法第3条にて規定される建設業許可を取得したことで、建設事業者としてより広範な設計、生産、施工のデータを取り扱う体制が整い、事業成長を牽引するサプライチェーンマネジメントシステムを機能強化、および拡張するフェーズにあります。

また、プラットフォーム「BALLAS」として培われたソフトウェアや、ノウハウを広く業界で使っていただくことで生産性の向上、ひいては創造性を生み出すキッカケになればと思い、SaaS形式のサービスもクローズドで進め始めています。

ーー最後に、貴社への入社を検討している方に向けてメッセージをお願いします。

木村将之:
建設事業者としてテクノロジーを通じて最適なサプライチェーンを再構築する、この新たなアプローチにおいて既成概念を取っ払い、本質を追求できる方と一緒に働いていきたいです。

建設業界は関わる企業や人も多く、巨額の投資が行われる業界です。そんな建設業界の最適化をすることは、この業界だけでなく、その他の産業や社会全体にも大きな影響があると考えています。建設業界だけでなく、社会構造を再定義する。そんなビジネスに面白さややりがいを感じていただけると嬉しいです。

使命感を持って、建設業界の未来を一緒につくっていける仲間との出会いを楽しみにしています。

編集後記

メーカー機能を持つテックカンパニーという独自のポジショニングが印象的だった。ソフトウェアだけでなく、実際のものづくりまで手がけることで、業界の課題により深く切り込んでいく。伝統的な業界をテクノロジーで変革するという強い意志と実行力に、建設業界の未来図を見た気がした。

木村将之/2014年、新卒で総合商社の双日株式会社に入社。金属・資源分野の輸出入、事業投資、事業会社の経営支援に従事。金属3Dプリンター事業の海外展開のため、欧州へ赴任。製造業スタートアップの株式会社Catallaxyで経営企画責任者を経て、2022年に株式会社BALLASを創業。