
スマートフォンの普及により電子書籍の利用者が増え、マンガもデジタル化が進んでいる。こうした中、電子コミックサービス「LINEマンガ」を運営しているのが、LINE Digital Frontier株式会社だ。中でもスマートフォンを縦にスクロールして読む「webtoon(ウェブトゥーン)」は、世界各国のユーザーに楽しまれている。
スマートフォンの登場による自身の価値観の変化や、同社ならではの強み、ビジョンにある「マンガの未来を創る」に込めた思いなどについて、代表取締役社長CEOの髙橋将峰氏にうかがった。
価値観を大きく変えたスマートフォンの台頭。電子コミックの普及に貢献するため経営者へ
ーーまずはヤフー株式会社に入社したきっかけをお聞かせください。
髙橋将峰:
前職ではiモードなどのモバイルインターネットのサービス開発に携わっていました。当時、携帯キャリアの審査が必要だった中、ソフトバンクが「モバイルインターネット」を始めたため、私はこれからインターネットの新しい時代が来ると感じ、すぐにヤフーに転職しました。
入社後はモバイル専門の部署に配属され、デジタルコンテンツやECなどのサービスの立ち上げに関わりました。そうした中で大きな転機となったのが、スマートフォンの登場です。これを機にガラケーのサービスはすべて終了し、スマートフォン向けのサービスに移行しました。市場のゲームチェンジを目の当たりにし、「今あるサービスを続けられる保証はないのだな」と痛感しましたね。
そして「これからはスマートフォンであらゆるサービスを利用する時代になる」と信じ、アプリ開発に注力してきました。
ーー株式会社イーブックイニシアティブジャパンの社長に就任した経緯を教えていただけますか。
髙橋将峰:
ヤフーでゲームや占いなどを提供するデジタルコンテンツ事業の本部長だったときに、マンガコンテンツなどを扱う電子書籍事業を任されることになったのです。当時は海賊版サイトの影響で、電子コミック事業は苦戦を強いられていました。
それでもスマートフォンの台頭によりガラケーのサービスが終了したように、電子コミックの時代が来ると確信していました。まずは経営基盤の大きな転換が必要だと考え、経営者として参画することを決意したのです。そして、「ebookjapan」を運営する株式会社イーブックイニシアティブジャパンとYahoo!ブックストアの統合を果たしました。
さらに、その後は「LINEマンガ」を展開するLINE Digital Frontier株式会社との統合を進め、市場での競争力を高めてきました。
コミュニケーションツールとの連携やマンガを縦読みする斬新さがヒット

ーー改めて貴社の事業内容と強みについてお聞かせください。
髙橋将峰:
弊社は主に4つの事業を展開しています。1つ目は、アプリが国内5000万DLを突破した電子コミックサービスを提供する「LINEマンガ」、2つ目が、マンガを含む電子書籍を販売する「ebookjapan」、3つ目が、紙書籍のオンライン販売を行う「bookfan」、4つ目が、グループで所有するIPのメディアミックスなどを推進するIP事業です。
弊社の強みは、世界で圧倒的な規模を誇る電子コミックサービスが親会社であることに加え、LINEヤフー株式会社のサービスとも連携できる点も大きな特徴です。
電子コミックサービスの大きな可能性とビジョン
ーー貴社のビジョンにある「マンガの未来を創る」にはどのような思いを込めているのでしょうか。
髙橋将峰:
弊社では、アマチュア作家さんが作品を投稿できる「LINEマンガ インディーズ」というサービスを提供しています。LINEアカウントさえあれば誰でもマンガを投稿でき、編集者が気になった作家さんに声をかけ、LINEマンガのトライアル連載へ進む仕組みです。
実際にLINEマンガの連載からアニメ化され、2025年の2月からは映画が放映される『先輩はおとこのこ』も、そのうちの一つです。LINE Digital Frontierの親会社であるWEBTOON Entertainmentがナスダックに上場した際には、ニューヨークのタイムズスクエアに各国の作品に混ざって登場しました。
マンガにはこのように日本だけでなくグローバルで無限の可能性が秘められていて、我々は電子コミックサービスとして、「マンガの未来を創る場」を提供したいと考えています。
ーー今後の目標についてお聞かせください。
髙橋将峰:
米国では月間2000万人程度のアクティブユーザーがおり、そのうち95%は35歳未満というデータもあります。こうした世代を中心に電子コミックサービスが海外市場を開拓しつつある流れを受け、マンガ文化を世界に定着させたいと考えています。
現在、「LINEマンガ」は国内累計ダウンロード数5,000万を突破し、国内のマンガアプリの累計ダウンロード数においてトップ(※)です。このまま数字を伸ばし、まずはマンガ市場が成熟している日本でNo.1の地位を確立するのが今の目標ですね。
(※)国内マンガアプリ累計ダウンロード数 (2013年4月~2024年7月) / iOS & Google Play合計 / 出典:data.ai by Sensor Tower調べ
そして今後は、電子コミックサービスとして、音楽配信サービスのSpotifyや、動画配信サービスのNetflixのように世界的な企業になりたいと思っています。世界中のクリエイターや出版業界と力を合わせ、マンガが世界の誰もが親しむエンターテインメントの一つになるよう、これからも挑戦を続けていきます。
編集後記
幼少期からマンガが好きで、「電子コミックを世の中に普及させたい」という思いで事業の発展に全力を注いできた髙橋社長。この情熱は海を超え、世界各国の人々を熱狂させている。LINE Digital Frontier株式会社はマンガをいつでもどこでも読めるコンテンツとして普及を進め、さらなる可能性を広げていく。

髙橋将峰/2006年ヤフー株式会社に入社。その後、株式会社イーブックイニシアティブジャパン代表取締役社長に就任。2022年7月にはLINE Digital Frontier株式会社代表取締役CEOにも就任。