※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

グローバル化が進む今日、企業はさまざまな視点やスキルを持つ社員を集めることが求められ、英語を公用語とする日系企業も増加している。Super Massive Globalでは社内に英語が飛び交い、国籍も様々な経営陣が指揮を執る。また、海外に複数の拠点を持つことでグローバルに事業を展開している。今回は、代表取締役CEOの内藤慎人氏に、創業までの経緯、事業内容、起業家としての思いなどについて詳しくうかがった。

学歴がなくても大きなことを成し遂げたいと挑戦し続けた20代

ーー創業までの道のりにはどんなエピソードがありますか?

内藤慎人:
高校までは勉強しないでひたすらバスケットボールに打ち込んでいました。幼少期から「人と違ったことがしたい」「何か大きなことを成し遂げたい」という思いがあり、常に上を目指していました。高校卒業後、「洋楽が歌いたい、アメリカでバスケットボールをしたい」という理由で英語を学び、20歳の時にアメリカに渡りました。

東海岸のメリーランド州オーシャンシティの遊園地でアルバイトをしていたのですが、そこは仕事ができないとすぐに解雇される厳しい場所だったため、「すぐに日本に帰るのは嫌だ」という思いから、必死に英語を勉強したのです。

僕以外に日本人はいなかったので、電子辞書とノートを片手に何度も聞いて覚えました。英語力向上には、仕事というプレッシャーと日本人がいない環境がとても良かったと思います。

ーー起業を決意したきっかけや背景について聞かせてください。

内藤慎人:
起業には以前から興味があったのですが、公務員志向の強い安定重視のコミュニティにいたため、日本では自分のやりたいことを表現できませんでした。アメリカで衝撃を受けたのは、自分の生きる目的や意思を強く持つ人が多いことです。自分の価値観を表に出すことに感銘を受け、起業への意思がさらに強まりました。

アルバイト先では22カ国の人が働いていたのですが、その人たちに日本から持ってきた日本酒をふるまったところ、「こんな酒は飲んだことがない、おいしい」という声を多く聞きました。これをきっかけに日本酒を広めるために貿易を学ぼうと決意したのです。帰国後、東京で海運貨物の取扱業者に入社し、「1年くらいで独立します」と社長に宣言して貿易を学ばせてもらいました。

苦労の中で培われた会社の基礎、つながるネットワーク

ーー起業までの道のりで、一番苦労したことは何ですか?

内藤慎人:
20代は失敗の方が多く、電車賃も払えないほど借金を抱えたこともあります。それでも大きなことを実現したいという思いは消えず、借金を返しながら起業を続けました。新しいことに挑戦する際の恐怖心がなく、「自分の人生は楽しく弾けていこう」と思っていたので、乗り越えられたのだと思います。

ーーその経験は、今の事業にどのように活かされていますか?

内藤慎人:
借金を返済していた頃、銀座のバーでアメリカのプロデューサーと知り合い、その方のエンターテインメント会社の営業やファイナンスを手伝いました。その仕事の関係で、香港やタイ、ロサンゼルスに住んで活動する中で、今の会社の基礎を築くことができたと思います。

データを使った観光アプリで新たなサービスの可能性を見出す

ーー会社を創業したきっかけは何だったのでしょう?

内藤慎人:
苦労していた時代にWEB広告に携わったことで、ビッグデータのすごさを実感し、それをきっかけに、データを取り扱う仕事について考えるようになりました。

ある日、ファーストフード店の前に人が集まっているのを見かけたのです。彼らは「ポケモン Go」をしていたのですが、店内には入っていませんでした。その様子を見て、「店内で対象商品を購入するとポケモン Goの特典がもらえるシステムにすれば、大きな経済効果が得られるのではないか」と考えました。

ちょうどその頃、ポケモン Goの位置情報システムを作った会社と出会い、プロトタイプの開発を始めました。そこから「決済システムをポケモン Goに組み込めば、集客効果やマーケティングに活用できるGPSと、決済がひもづいたデータを収集できるのではないか」という着想を得て、投資家や株主の協力を得ながら開発を進めたのです。

ーー現在の事業について教えてください。

内藤慎人:
GameFiアプリケーションから方向転換し、メインでマネタイズしているのはオンライン広告事業で、日本のみならず東南アジアを中心とした売上シェアの拡大を狙いつつ、AdTechのプラットフォーム開発と、以前の事業に続きゲーム性のあるイベントアプリケーションを開発しています。また、そのデータを分析することで、新たなサービスの提供に繋げることを狙っています。

「CEOは前に立つ者であって、上に立つ者ではない」

ーー起業家として大切にしている考え方は何ですか?

内藤慎人:
CEOとしてリスクを背負い、先頭を走り続けています。そのため、透明性のあるフレンドリーな経営を心がけています。

また、人としては「地球人として生きる」ことを大切にしています。弊社には、各国の特性を持ちながらもグローバルに生きることを選択した人々が集まっています。国の概念がなく、世界の企業の一つという感覚です。

ーー今後の展望について教えてください。

内藤慎人:
ここから5年で1兆円、10年で190ヵ国以上に展開し、10兆円以上の売上を目指したいと考えています。具体的には、まず広告事業を10ヵ国に展開し、その収益を活用してAdTechプラットフォーム事業やイベントアプリ事業を充実させます。

イベントアプリ事業では、サブスクリプションや決済手数料で収益を上げる予定です。しかし、売上を追求するだけではなく、社員には「してないことがない人生だと言い切りたい」と常に伝えています。

編集後記

内藤CEOは夢が2つあると語る。それは、世界中の実力のある人々と仲良くなって、「僕がやろうと言ったら世界中が動く」という状況を実現すること。そして恵まれない人や才能ある人が、小学校から大学までマルチリンガルの教育を無料で受けられる学校施設をつくることだ。

「関わる人や環境で人は変わる」という自身の経験をもとに、枠から外れたアウトライアーやマイノリティに寄り添い、ターニングポイントを提供したいという思いが伝わってきた。グローバル化が進む現代において、Super Massive Globalのような、国にこだわらない企業のあり方が今後求められていくだろう。

内藤慎人/1989年、東京都生まれ。日本外国語専門学校卒業後、貿易・通関会社に就職。23歳で独立し、国内外で3社を経営。その後、2020年にSuper Massive Global株式会社を創業。