
株式会社ビットストロングは、2001年に設立された画像処理システムの開発・人材派遣・機器やソフトウェアの販売事業を手がける会社だ。社員発信のアイデアと、時代に合ったニーズを捉える力で業績を伸ばしている。同社を設立した代表取締役社長の門洪涛氏に、これまでの経緯や今後の展望などについて話をうかがった。
画像関連技術の研究をきっかけに会社を設立
ーー株式会社ビットストロングを設立した経緯を教えてください。
門洪涛:
私が中国にいた頃、海外で学問を学んで技術を高めるという時代の流れがありました。ちょうどトラクターやコンバインなどの農業機械について学びたかったため、農業機械の技術が発展している日本への留学を決めたのです。
しかし農業機械の技術はすでに非常に成熟していることがわかり、東京大学大学院では、農業をさらに便利に進化させるために注目され始めていた画像関連の技術について学びました。
そこで画像関連技術について興味を持ち、日本ポラロイド株式会社に入社しました。しかし、日本ポラロイドは、主にインスタントカメラを扱っており、デジタルカメラに移行していく時代の流れを感じたため、退職しました。
その後、知り合いの会社でプログラム開発とマネジメントについて学び、株式会社ビットストロングを設立しました。設立当初は私自身がさまざまな業務をこなす必要があり、非常に忙しい日々を送りましたね。
高い技術力を活かしてスピーディーに変化し、販路も拡大していく

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか。
門洪涛:
一番の強みは、私が長年研究を続けてきた画像処理技術です。人の目で見ることのできない細かな部分の確認などの際には、やはり画像処理技術が役立ちます。弊社製品は医療現場の顕微鏡や、製造現場の不良品検査などに活用されています。
また、弊社では自社製品はもちろん、お客様のニーズに応じて、他社製品もご用意・販売できるという、商社のような機能も担っていることも強みです。他社製品の特徴を知り、技術に触れることで、客観的に捉え、自社の技術を高めていくための刺激も受けています。
ほかにも、幅広い製品を扱うことで、いち早く時代のニーズを捉え、販売ルートを確立してきた点も弊社の強みのひとつです。現在では、売上の約半分が自社製品の開発・販売、残りの半分は他社製品の販売という構成です。
ーー今後の事業展開についてお聞かせください。
門洪涛:
現在は、顧客情報の管理などにも弊社の技術を活用できるようにするため、計画・検討を進めているところです。高い技術、技術を活かしたマーケティング、スピード感のある営業の三位一体で、画像関連技術の活用はもちろん、システム開発そのもののノウハウも活かし製品・サービスの拡充を図っていきます。
社員全員に共通しているのは、技術力を活かしてクライアントの困りごとを解決したいという気持ちです。実際にクライアントの相談に乗り、適切な製品・サービスを提案し課題解決を行うケースは増えており、これは今後も伸ばしていきたい部分です。
現在弊社の技術を活用してくださっている医療・製造現場はもちろん、そのほかの業界での存在感もますます高めていきたいと考えています。
個人主義でも、会社主義でもない。どちらも輝く、ユニークな人事制度
ーー貴社の人事評価制度について教えてください。
門洪涛:
私がこれまで得意分野を活かして研究を続け、起業してきたように、社員にも適材適所で活躍してほしいと考えています。個人の評価だけを行っても、会社の業績には直結しません。一方で、会社の業績ばかりを重視すると、社員のキャリア形成が難しくなります。そこで、まずは社員の「こんな仕事がしたい」という希望を叶え、必要に応じて新しい部署を設立します。
また、事業化を目指すことで、社員のスキルアップと会社の成長の療法を実現できる仕組みを整えました。個人のスキル向上と、会社の成長を結びつけ、その上で適切な人事評価ができるような仕組みを構築しているところです。
ーー貴社の存在感を高めるために必要な人材についてお聞かせください。
門洪涛:
手を動かしたり、お客様にお会いしたりといった、積極的に自分の足で行動できる方を採用・育成していきたいと考えています。将来的には私の後継者になっていただけると嬉しいですね。
また、ソフトウェア開発やネットワーク技術のスキルをお持ちの方にも入社していただきたいです。今は異なる業界で働いている方であっても、「自分にはこのような経験がある」と胸を張って言うことができる方や、「IT関連の幅広い事業を身につけたい」という前向きな姿勢の方も歓迎しています。
編集後記
20年以上続く会社を設立した代表取締役社長という肩書からは想像できないほど、社員の希望などに柔軟に対応していく姿勢が印象的だった。同社はこれからも顧客ニーズに応えることで世の中の課題を解決し、社員の声を聞き希望を叶えることでキャリア形成を支援するというこの2つを両立し、ますます成長していくことだろう。

門洪涛/大学卒業後、中国の企業に開発職として就職した後、東京大学大学院へ進学し、画像関連の技術を学ぶ。1994年に卒業し、日本ポラロイド株式会社に入社。その後、いくつかの企業勤務を経て2001年に同社を設立。リーマンショック、コロナ禍を乗り越え、新規事業を立ち上げながら現在に至る。