
オムロングループ向けを中心に、社会課題を解決するITソリューションを販売しているオムロン ソフトウェア株式会社。鉄道利用時に運賃を正しく収受するための駅務機器システムや、クレジットや電子マネーの決済システムなど、社会を支えるさまざまなシステムの開発に貢献してきた。
オムロングループのソフトウェア会社として、50年近い歴史と豊富な実績を築き上げてきた同社は、さらなる成長に向けて今動き出している。一体どのような戦略を練っているのか、代表取締役社長の今井照泰氏に詳しい話を聞いた。
新しいことに挑戦するから見える世界が変わり、成長速度も急激に上がる
ーー大学卒業後に携わった仕事についてお聞かせください。
今井照泰:
1992年、新卒でオムロン株式会社へ入社しました。入社の理由は、同社の企業理念「われわれの働きでわれわれの生活を向上しよりよい社会をつくりましょう」に共感し、自分も誰かの役に立つ仕事がしたいと思ったからです。
入社後は、交通関係の部署に配属され、カーナビのVICS(ビックス:渋滞や交通規制など道路の交通情報をリアルタイムに提供するシステム)業務に携わりました。
人々の役に立つという意味ではとてもやりがいを感じましたし、道路上に自分が携わった光ビーコンが立っているのを見ると、今でも嬉しくなりますね。
ーーその後、どのような経緯で貴社の社長に就任したのでしょうか。
今井照泰:
事業企画の部署に勤めていたとき、当時の上司から「経営企画への異動の話がある、いい勉強になると思うよ」とのことで異動したのがきっかけです。
当時、世の中で環境への関心が高まりつつあり、エネルギー事業立上げを経営層に提案しました。当初は賛同を得られませんでしたが、1年後にそれが受け入れられ、新規事業の立上げに携わることになりました。その後、オムロングループの環境施策を主管する環境革新センタ長を任され、後に社長に就任しました。
開発や事業企画、経営企画などいろいろな仕事を経験しましたが、職種が変わるたびに新しい学びがあり、新たな世界を見られるのが面白かったですね。
そのため私自身、社員たちには変化から得られる面白さを経験してもらいたく、彼らに今までと違う変化をどのように味わってもらうかを常日頃から考えています。
社会に貢献し、会社を成長させるために、グループ外向けの事業展開に力を入れる

ーー社長就任後の取り組みについて教えてください。
今井照泰:
特に力を入れて取り組んできたのが、「人と組織のトランスフォーム」です。弊社は今までオムロングループ向けをメインに事業を展開してきましたが、今後、グループ外への展開により一層注力するためには、人と組織が進化することが大切だと考えました。
進化に向けた取り組みの1つが、組織や事業の枠を越えて価値をつくれるようにすることです。今までは事業グループごとに閉じた状態で仕事をしていたため、ほかの事業グループの悩みや強みがなかなか分からない状態でした。そこで、まずは事業部長同士がつながり、そこから部下へと情報を共有してもらうようにしたのです。
そのほか、社員たちがお互いに良い影響を与え合えるよう、社員同士が関わる機会を積極的につくるよう努めてきました。
ーーなぜグループ外への事業展開に力を入れようと思ったのでしょうか。
今井照泰:
これまで、技術を取り込んで社会実装し、社会に提供するというサイクルをオムロングループ向けに繰り返してきました。そうした中で、「このサイクルを回すチャンスは、グループ外にもたくさんある」と思ったからです。
グループ内の事業で培ったものをグループ外で活かすのは、社会にとっても喜ばしいことですし、外で揉まれたものをグループ内に還元するのも、非常に価値のあることです。社員にとっては能力発揮の機会が増えるため、社員の成長を後押しする好機になると思います。社員が成長すれば会社の成長にもつながると考えたのです。
営業力の強化とバランスを意識した採用で、より強い会社を目指していく
ーー今後の注力テーマを教えてください。
今井照泰:
1つは営業力を強化することで、実際に社外から人材を呼んで、営業に関するレクチャーをしてもらっています。ただ、これだけですぐに効果が表れるわけではありません。そこで、顧客接点豊富なパートナーと手を組み、新規開拓の取り組みに着手しています。
資金力が潤沢な大手企業よりも、資金力が十分ではない中小企業を助けることが、世の中全体の底上げにつながると私は考えているので、中小のお客様をメインターゲットに事業を展開していく予定です。
また、人材採用に関しては、バランスを見ながら進めていきたいと思っています。年齢別の人員構成を考慮するだけでなく、新卒や弊社に足りない専門性を持った人材の採用も行う方針です。
さらに、多様性が社内における化学反応に重要な要素なので、若手の採用は個性や特性を重視し、その延長として精神・発達障害の方の採用にも力を入れています。
採用と教育はセットですので、越境経験として、オムロングループ各社、各部門に出向いただき、そこで自社では得られない経験や人脈を形成して帰任後、新たな役割を担ってもらうことにも取り組んでいます。
ーー最後に、将来への意気込みなどをお願いします。
今井照泰:
会社の成長とは、人と組織の成長そのものです。この先どんなことが起きても乗り越えられるよう、社員たちには仕事を“愉しんでもらいたい”と思っています。社員が仕事を“愉しめる”ように、社長として社内環境や事業の整備を進めていく所存です。
編集後記
オムロンのグループ会社としてすでに豊富な実績を持つ同社をさらに成長させるべく、営業力の強化や人材採用・育成などにも注力すると力強く語る今井社長。これまでに培った高い技術力が、グループ外でも通用するものであるのは間違いない。同社が中小企業を中心にサービスを展開し、日本企業の競争力を底上げしてくれることに期待したい。

今井照泰/1967年滋賀県出身、福井大学院卒。1992年オムロン入社。交通管制事業で商品開発を担当。社会システム事業の経営企画担当の後、オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社環境ソリューション事業統括部長、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社環境エンジニアリング部長を兼務し、エネルギー関連事業立ち上げに従事。その後、オムロン環境革新センタ長を経て、2020年にオムロン ソフトウェア株式会社の代表取締役社長に就任。