※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

クリエイター向けのサービス販売プラットフォーム「MOSH(モッシュ)」には、6万人を超えるクリエイターが集まっている。運営するMOSH株式会社の創業者兼CEOである藪和弥氏に、サービスの特徴や運営方針について話をうかがった。

世界一周をする中で決断したサービスの背景

ーーMOSH株式会社を立ち上げた経緯や、コンセプトを教えてください。

籔和弥:
2017年7月にMOSH株式会社を創業しました。私自身2度目の起業だったのですが、創業までに、再挑戦に向けて世界中のトレンドや消費者の購買動機を直接観察し、理解する目的で世界一周をしました。各国を訪れる中で、多くの現地ビジネスや消費者行動を研究し、現代社会で通用するビジネスの普遍的な成功要素を見つけようとした結果、2つの重要なヒントを得ました。

まずは「指名経済」と呼ばれる概念です。これは、消費者が信頼できる個人に仕事を依頼するというもので、個人に対する信頼が重要な要素になります。具体的には、消費者が特定の個人の専門性やサービスに対して信頼を寄せ、その個人を指名して依頼を行うという経済モデルです。

もう1つは、「好きなことを仕事にする」という自己実現の重要性です。多くの人々が自分の情熱や興味を追求し、それを仕事にすることで自己実現を図りたいと考えています。このニーズに応えるためには、個人が自分のスキルや専門知識を活かして収益を上げることができるプラットフォームが必要です。

これらのヒントを基に、個人の情熱を支援し、信頼関係を構築できるような事業を展開することを決意しました。「MOSH」は、クリエイターが自分の専門性を発揮し、収益を上げることができるプラットフォームとして、「指名経済」と「好きなことを仕事にする」この2つのコンセプトを基盤にしています。

クリエイターの成長を支える革新的なプラットフォーム機能

ーー具体的に、MOSHの事業内容について詳しくお聞かせください。どのような取り組みをされていますか?

籔和弥:
MOSHは、クリエイターが専門性やスキルを提供できるプラットフォームを提供しています。現在、200種類以上の職種に対応し、6万以上の事業者が登録しています。中には月商1.5億円に達する事業者もいます。しかし、私たちの最終目標はこのサービスを社会に欠かせないインフラにすることです。現状はまだ始まりに過ぎず、事業を始める段階から拡大まで全てをサポートできるプラットフォームに進化させたいと考えています。

具体的には、クリエイターが自分のスキルや専門知識を活かして商品やサービスを提供できる環境を整えることに注力しています。プラットフォーム上では、クリエイターが自身のブランドを構築し、育てるための支援を行っています。売上状況に基づいてビジネスモデルの提案や改善策を提供し、持続可能な事業運営をサポートしています。

ーー競合他社と比べて、MOSHの独自の強みはどのような点にありますか?

籔和弥:
弊社のサービスは、単なる副業や一時的な仕事ではなく、本業として持続可能なワークフローを構築したい方を主な対象としています。他のプラットフォームが短期集客支援に焦点を置く中、私たちはクリエイターが長期的にブランドを育てるための機能提供を重視しています。

具体的には、「ストアフロント型」と呼ばれるアプローチを採用しています。これは、クリエイター自身が独自のブランドを持ち、自力で集客しながら事業を拡大できるよう支援するモデルです。このため、クリエイターが自分のペースで事業を育てることができ、持続的な成長が可能となります。

MOSHでは、クリエイターが自身のスキルを最大限に発揮し、ブランド価値を高めていくための多様なツールとサポートを提供しています。これにより、クリエイターは自分の専門分野での独自性を強化し、経営拡大の道を切り開いていくことが可能です。

個人事業主から組織まで、成長を支援する多角的なサポート

ーー今後の展開をお聞かせいただけますか?

籔和弥:
事業者数を増やし、各事業者の売上を上げることが目標です。クリエイターが個人で事業を始める際のパートナーとして、ゼロからの事業立ち上げのロードマップ作成や、売上拡大に向けたデータセットの提供を行いたいと考えています。また、クリエイターとサポーターのエコシステムを構築するため、フォロー体制のシステム化も進めています。

ーー個人事業主が事業を拡大し、企業化する場合についてはどう考えていますか?

籔和弥:
個人事業主としてスタートした方が事業拡大し、組織化した場合はサポートを続けたいと考えています。スタートアップや企業とは異なる特性を持つ組織に対して、独自のプロダクトを提供していきたいです。

ーー現在、特に注力している取り組みやプロジェクトについて教えてください。

籔和弥:
個人向けのサービスは、その価値が明確でないと利用者から選ばれません。そのため、経営拡大を支援する価値を明確にする技術的基盤のレベルアップが第一の課題です。特にクリエイターのサービスを受けるゲストが効果を実感できる仕組みづくりに注力しています。また、カテゴリーリーダーに利用してもらうためのアプローチも重要な課題です。

さらに、日本のクリエイターの海外展開支援や、海外のクリエイターが現地で利用できるようにするなど、両面からの海外展開の取り組みを進めています。現在は一部人力でのサポートを行っていますが、最終的には機能提供を重視していきたいと思っています。

ーー貴社で活躍できるのはどのような人材でしょうか?

籔和弥:
弊社はブランド価値を中長期的に押し上げるフェーズにあります。社員には、顧客に対して価値提供に没頭し、自分がつくっているものが顧客にとって価値を発揮しているかを探る姿勢が求められます。業種の境を超えた越境的な発想や相談ができる、気持ちの良いコミュニケーションを持つ方に活躍してほしいですね。

編集後記

短期的なものではなく、持続的なサービスを実現したいと語る藪和弥CEOは、人力での提供を最小限に抑え、機能提供を重視するという進歩的な考え方を持っている。海外のサービスを目の当たりにしてきたからこそ、個々人の支援ニーズを追求し続ける姿勢がうかがえる。藪氏こそがMOSH株式会社の第一の発想力あるクリエイターであり、今後の海外展開も含めた同社の飛躍が楽しみだ。

籔和弥/福井県出身、同志社大学卒業後、Rettyの立ち上げ期に社員7人目として入社。Rettyアプリのリーダーを担当し、会社を初期メンバーとして牽引。2017年1月にRetty退社後、アジア・インド・アフリカなど世界一周を行い、現在のMOSHを着想し創業。