※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

同志社大学在学中にライブコマースの可能性にいち早く着目し、2019年に株式会社Cellestを創業した代表取締役の佐々木宏志氏。わずか数年で事業を軌道に乗せ、月間売上2億円を突破し、業界トップクラスの地位を築き上げた。その躍進の背景には、ライブコマースの可能性をいち早く捉えた着眼力と、他にはない独自の発想力がある。市場の可能性を見極め、課題を乗り越えてきた佐々木氏の挑戦の軌跡と思いに迫る。

ライブコマースに可能性を見出したきっかけと成功への確信

ーーライブコマースの可能性に注目したきっかけをお聞かせください。

佐々木宏志:
2017年ごろの学生時代に、メルカリを利用していた際にライブコマース機能を知りました。実際に使ってみるとそれまでの手作業での1点ずつの出品と異なり、ライブ配信では「飛ぶように売れる」という衝撃的な体験をし、この仕組みが秘める大きな可能性を感じました。ライブコマースが主流になる未来が必ず訪れると確信し、大学卒業後の2019年に株式会社Cellestを設立したのです。

ーーそこまでの確信を得た理由を教えてください。

佐々木宏志:
中国を視察した際、ライブコマースがすでに消費活動の中心になっており、街でライブ配信する人々の姿が日常風景であることを知りました。このスタイルは日本の消費者にも大きな魅力として受け入れられるだろうと感じましたね。また、自分で実際にやってみて、その効果を実感できたことも、成功を確信する大きな要因となりました。

創業当時の試行錯誤の中、顧客とのコミュニケーションを最優先

ーー創業当時、どういった課題に直面しましたか?

佐々木宏志:
創業当時、資金は潤沢ではありませんでしたが、私はあまり苦労を苦労と思わないタイプなのです。最初の1,000円の利益を大切に、それを次の仕入れに回すという地道な方法で、少しずつ事業を拡大しました。また、「成功させるしかない」という強い思いで、ライブコマースの可能性と自分自身の力を信じていたことも、大きな支えでした。

特に、事業開始後すぐに顧客との距離感が縮まり、リピーターが増えていく手ごたえを感じていたので、「これなら成功する」という確信となり、プレッシャーを上回る力になっていたと思います。

ーー事業成功への施策についてお聞かせください。

佐々木宏志:
創業当初は、顧客との信頼関係を築くことを最優先に考え、配信内容には徹底的にこだわりました。商品選定のセンスを磨き、質の高い情報を伝えることで、顧客からの信頼を得られると考えたからです。実際、リピーターが徐々に増える中で、顧客との密なコミュニケーションを大切にすることが、事業の安定に直結すると感じました。

ライブコマースにより社会課題に新たな解決策を増やす

ーーこの事業を通じて、どのような社会貢献が可能になるでしょうか?

佐々木宏志:
ライブコマースは、地方在住者や多忙な方など、さまざまな理由で実店舗の利用が難しい人に対して、スマホを通じてリアルタイムに店舗と同じ感覚で買い物をする体験を提供することができます。また、信頼できる配信者による商品紹介は購入への安心感を高め、より気軽に買い物が楽しめる仕組みとなっています。さらに、消費者が配信者とリアルタイムにやり取りしながら買い物をすることは、単なる物の購入を超えた、エンターテイメント性の高い新しい体験にもつながるでしょう。これらはライブコマースが社会に提供できる大きな価値ですね。

ーー小売業界におけるライブコマースの強みは何でしょうか?

佐々木宏志:
最大の強みは、場所や時間に縛られることがない点です。実店舗を運営する際に必要な初期費用やランニングコストを大幅に削減できる点に加え、全国のお客様に同じ条件で商品を提供できるという点も大きな魅力です。これにより、小売業界全体の効率化や販売可能性の拡大に貢献できると思っています。

革新的技術と人材が切り拓く未来への展望

ーー採用や人材教育についてお聞かせください。

佐々木宏志:
私たちは現在、従来のECプラットフォームよりも使いやすい、ライブコマースに特化したECモールアプリ「WABE」を開発中です。その実現に向け、スタートアップ経験者やアプリ開発の知識を持つ方々を積極的に採用し、新しい価値を生み出すための環境づくりに力を入れています。また、人材育成においては、技術的なスキルだけでなく、「お客様ファースト」の視点を重視しています。そのため、配信者一人ひとりのセールストークや立ち居振る舞い、さらにはキャラクター性の作り方まできめ細かい指導を徹底しています。事業成功の鍵となるのは人材育成だと思うので、そこは特に力を入れている部分です。

ーー今後の目標や展望を教えてください。

佐々木宏志:
私たちの目標は、日本でライブコマースをインフラとして定着させることです。ライブコマースを単なる販売手法のひとつに留めるのではなく、人々の生活に欠かせない購買体験として根付かせる未来を目指しています。その実現に向けて、5年以内にIPOを達成し、企業としての信頼性を高めるとともに、事業規模を拡大していく考えです。

具体的には、技術開発をさらに進め、消費者にとってより使いやすく、魅力的なプラットフォームを構築することを最優先課題としています。同時に、人材の採用と育成にも注力し、業界をリードするプロフェッショナルな人材を育てていきます。これらを通じて、ライブコマースの可能性を最大限に引き出し、新しい購買体験を提供する企業として、日本中の人々に貢献していきたいと考えています。

編集後記

ライブコマースを一個人として楽しむ人は今後ますます増えるだろうが、それを事業化しようとしたところに佐々木社長の独自性と行動力を見ることができる。事業としての基盤づくりには当然苦労がともなうが、顧客ファーストの精神と人材育成、新しい発想を生み出す社内の環境づくりを大切にしてきたからこそ、今の成功があるのだろう。ライブコマースが生活インフラのひとつとなれば、社会課題の解決にも貢献できる可能性に満ちている。

佐々木宏志/同志社大学卒業。在学中にライブコマースの可能性に着目し、事業をスタート。大学卒業後、2019年に株式会社Cellestを設立。経営企画や事業開発、財務などを含め、長期的な経営戦略を担当。ライブコマースで月間売上2億円を突破し、日本トップクラスのライブコマース企業に。属人的なプレイヤービジネスからライブコマース専門事務所へと発展させ、さらに事業領域をライブコマースプラットフォームにまで拡大。