
給食事業を軸に、和食店や介護施設の営繕管理など多角的な事業を展開する株式会社座右。同社は給食事業に留まらず、食事を通じた「暮らし」と「絆」を豊かにすることを使命に、地域社会に貢献することを目指している。創業から20年、経営者としての覚悟を新たに、さらなる飛躍を目指す代表取締役の杉本将志氏に、その軌跡と未来への展望を聞いた。
経営者としての責任を自覚したことがターニングポイントに
ーー社長に就任した経緯を教えてください。
杉本将志:
弊社は2000年5月に、友人と共同で設立しました。設立当初は友人が代表を務めていましたが、その後、その友人が退社することになり、私が代表を引き継ぎました。
ーー経営者としてのターニングポイントはいつですか?
杉本将志:
転機となったのは、2011年です。2004年に代表に就任して以来、独学で経営を続けていましたが、従業員が定着せず、事業も思うように軌道に乗せることができませんでした。
「このままでは会社が立ち行かない」という強い危機感とともに、独学での経営にも限界を感じた私は、新たな視点を求めて中小企業の活性化を目指す日本創造教育研究所の研修を受け姫路経営研究会に入ることにしたのです。そこで聞いたのが「会社は経営者の実力以上には成長しない」ということです。
この言葉がきっかけで、自分自身と向き合うようになりました。これまで従業員の責任だと押し付けていた問題は、実はすべて私の責任だったと気づき、それを機に経営に対するマインドが大きく変わりましたね。
ーー貴社の事業内容をお聞かせください。
杉本将志:
高齢者施設や保育園向けの給食事業を軸に、介護用品や日用品の販売、和食店「旬味千菜 蓮こん」や日本茶カフェ「茶寮 百灯瀬(ももとせ)」の運営、介護施設やマンションの設備営繕管理事業など、多岐にわたる事業を展開しています。お客様の「暮らし」と「絆」を豊かにすることを使命とし、地域や社会に必要とされる存在を目指しています。
食事づくり以外もサポートすることで、お客様の負担を軽減

ーー給食事業を始めたのはなぜですか?
杉本将志:
訪問介護事業を手がけた際、利用者の方に食事を提供したら、「明日生きてるかどうかわからないから朝太陽を浴びて朝食を食べられることがありがたいんです」と言われたことがあります。そのときに大きなやりがいを感じたこと、また「旬味千菜 蓮こん」を運営する中で、飲食業をずっと続けていきたいという思いが重なったことから、給食事業に興味を持つようになったのです。
私は料理人ではないため、美味しい料理だけにこだわったお店をつくるのは困難です。それよりも訪問介護事業での体験で感じた「お客様に喜んでもらえる飲食業をしたい」という思いを重視し、給食事業を開始しました。
ーー貴社の強みを教えてください。
杉本将志:
単に給食を提供するだけでなく、多岐にわたるサポートを行っている点です。給食事業では、厨房で美味しい食事をつくるのは当然のことです。弊社では給食をつくった後、厨房から出て、職員の方が入居者の方へ行う食事提供までサポートしています。私たちの仕事は食事を提供した時点でひと段落しますが、職員の方々にとってはそこからが一番忙しい時間帯です。そこで、弊社がサポートに入ることで現場の負担を軽減したいと考えたのです。実際、お客様からは喜びの声をいただいています。
また、弊社は設備営繕管理の事業も行っており、これも給食事業と密接に連携しています。施設で給食を提供する中で、厨房設備や水道・電気設備のトラブルに直面することがあります。
目指すのは、社会にとってなくてはならない「インフラ」のような存在
ーー組織づくりで強化していきたいところはどこですか?
杉本将志:
今後の組織づくりにおいては、人事評価制度の構築に力を入れていきたいと考えています。現在、社員の評価はすべて私が行っていますが、会社の規模が拡大するにつれて、今の評価制度では対応が難しくなります。そのため、できるだけ早い段階で評価制度を仕組み化していく予定です。
また、社員の定着率の向上にも取り組んでおり、その一環として、上司が部下に対して適切なコミュニケーションをとるためのリテラシー教育にも力を入れています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
杉本将志:
まず、2030年までに売上高30億円を達成し、将来的には100億円規模の企業を目指しています。30億円という目標は、現在の事業を着実に成長させていけば十分に実現可能だと考えています。
しかし、100億円規模を目指すためには、社会にとって欠かせない「インフラ」的存在になる必要があるでしょう。食と介護を通じて高齢者が抱える課題を解決し、社会から本当に必要とされる企業へと成長していきたいですね。
編集後記
給食事業を核とし、食と介護を通じて地域社会への貢献を目指す杉本社長。事業拡大の背景には、高齢者福祉への熱い思いと、従業員を大切にする真摯な姿勢があることを強く感じた。売上高100億円規模の企業を目指すという壮大な目標を掲げる同社が、超高齢社会に突入している日本で、「食×介護」でどのような革新を起こしていくのか見届けたい。

杉本将志/石川県金沢市出身。大阪の大学を卒業後、2年間の就職を経て、2000年5月、友人と共同で株式会社座右を設立。2004年に代表取締役に就任。高齢者施設や保育園向けの給食事業、飲食店の運営、介護施設やマンションの設備営繕管理事業など、多岐にわたる事業を展開。