
教育現場で必要とされるあらゆるものを取りそろえるグランコーヨー株式会社。同社は、小ロット多品種の特殊な要望にも柔軟に対応し、学校生活全般をトータルサポートしている。「先生が授業でやりたいことを実現するための調達代行業」という独自のポジションで教育現場を支える同社の取り組みについて、代表取締役の大庭公善氏に話を聞いた。
後継者としての心構えを培った修業時代
ーー貴社に入社するまでの道のりを教えてください。
大庭公善:
幼いころから、会社経営の楽しさについて父から聞かされており、将来は家業を継ぐことをある程度意識していました。常に新しいことに挑戦する両親の姿を見て育ちましたね。70代後半になった父と母は現在、静岡県で認定こども園を運営しています。
大学卒業後は、家業を継ぐことを前提としつつ、コクヨ株式会社に入社しました。当時のコクヨには同族企業の後継者を預かるという制度があり、そこで社会人としての基礎やビジネスマナーを学びました。私はその中で主に営業を担当し、市場開発室という部署で新規顧客開拓に3年ほど取り組んだ後、2001年に弊社へ入社。そして、2008年に弊社の2代目として、父から経営を引き継ぎました。
ーーコクヨ時代に、特に印象に残っているエピソードをお聞かせください。
大庭公善:
入社2年目で記録的な売上を記録したことですね。飛び込み営業で、証券会社を訪問したところ、1億円規模の大きな受注に成功したのです。これは当時の最年少記録で、今でもその記録は破られていないと聞いています。
私の戦略は非常にシンプルで、「他の人が積極的に行かない領域を選ぶ」ことでした。当時、先物取引を扱う証券会社はリスクの高い商品を扱うという印象があり、アプローチする人があまりいなかったのです。周りとは違う発想で、あえて競合の少ない業界を選んだことが、結果として大きな差をつけることにつながりました。
調達力を磨き、教育現場をトータルサポート

ーー貴社の事業内容と強みを教えてください。
大庭公善:
弊社は横浜・川崎を中心に小学校や幼稚園など、約2000の教育機関をサポートしている教育現場専門の商社です。授業で使われる教材から放課後の遊び道具まで、学校生活全般に必要なあらゆるものを提供しています。
弊社の最大の強みは、教育現場のニーズに徹底的に応えるための調達力です。200社ほどの仕入れ先と関係を築き、教育機関の「これが欲しい」というリクエストに対して、柔軟に対応できる体制を整えました。
先生方が授業でやりたいことを実現するために必要なものを提供するのが弊社の役割であり、そのためには「何でもそろえられる会社」であることが重要だと考えています。
ーー他社とはどのような点で差別化を図っていますか?
大庭公善:
商社は自社製品がないため、どこから買っても同じ製品なら価格だけの競争になりがちです。そこで弊社は、常に新しいサービスや商品を発掘し、オリジナルの企画に発展させるというアイデアで差別化に繋げる努力を続けてきました。
特に近年は先生方の働き方改革や負担軽減を支援する商品やサービスにも注力しており、校内清掃の代行から先生方の福利厚生に関わる商品まで幅広く取り扱っています。
新時代の「教育現場」で必要とされているのは、子どもたちのためのものだけでなく、指導される先生方を「素直に応援する姿勢」も大切なキーワードとして捉えています。その一例として、とある美容機器ブランドの取り扱いが挙げられます。これはとある展示会で、たまたまご縁があったのですが、その時点で他社は取り扱っていなかったため、この商品を見つけた時点で勝算があると思いましたね。
実際に、先生向けの特別価格でのプライベートセールを行ったところ、大変ご好評をいただいたのです。その結果、弊社は教育の分野において、そのブランドの日本一の代理店となりました。差別化になると思えるような商品を、いかに早く発見し、提供するかが競争力を維持するためのポイントだと思っています。
グローバルな視点で教育支援の未来を描いていく

ーーこれからどのような分野に注力していきますか?
大庭公善:
弊社は都心部に拠点を構えており、現状では顧客数の心配はありません。しかし、少子化の影響でその絶対数は減少傾向にあるため、新たな市場を開拓していく必要があるでしょう。
そこで新たな市場として海外、特にベトナムに注目しています。弟がベトナムで幼稚園経営をしていることもあり、この縁を活かして、新たにコドモズームホールディングス株式会社を設立しました。目の前ではプールや廊下の掃除、内装工事、職業紹介などさまざまなサービスを展開しながら、海外市場も含めた成長戦略を描いているところです。
ーー今後のビジョンを教えてください。
大庭公善:
日本と海外を橋渡しするような事業ができたらと考えています。日本では教育業界も人手不足が深刻ですが、現状では法規制の影響で、外国人材が活躍するのは困難な状況です。この規制が変われば日本と海外の橋渡し役として、新しい事業の可能性が生まれるでしょう。
社内においては、社員が事業責任者として成長できる環境を整え、次世代のリーダーを育てることも重要な課題です。設立したコドモズームホールディングスを活用して幹部育成を進めていきます。教育業界の発展に寄与するビジネスモデルを追求しながら、国内外で価値提供を続けていきたいと思います。
編集後記
教育現場のニーズに答え続けるパートナーとしての誇りが、大庭氏の言葉の随所に感じられた。前職で身につけた「誰も行かない領域に挑む」という精神は、今も新たな挑戦の原動力となっている。日本の教育現場を支えながら、国境を越えた展開も視野に入れる同社の取り組みが、国内外で実を結ぶことを願ってやまない。

大庭公善/1974年、神奈川県生まれ。成蹊大学卒業後、コクヨ株式会社に入社。3年の修業期間を経て、2001年にグランコーヨー株式会社に入社。2008年、同社代表取締役に就任。地域貢献活動にも注力している。