※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

サステナブルをテーマに、環境に優しい日用品を取り扱っているイーオクト株式会社。同社の代表取締役である髙橋百合子氏は、長い間主婦として過ごしたのちに、2回の起業を経て同社を立ち上げた異色の経歴を持つ。

小さな積み重ねで大きな目標を達成しようとしている同社は、どのような行動原理で動いているのか。その事業内容や価値観、今後の注力テーマなどを髙橋社長にうかがった。

長かった主婦生活から一転、40歳を手前にしてビジネスの道へ

ーー髙橋社長が貴社を立ち上げるまでの経緯をお聞かせください。

髙橋百合子:
私は主婦として過ごした期間が長く、新卒で入社した新聞社で1年半働いたあと、30代後半までビジネスの世界とは関わらずに過ごしていました。

ビジネスの世界に戻ったのは、以前勤めていた新聞社から記事作成を依頼されたことがきっかけです。当初は個人で働いていたのですが、次第に受ける案件の規模が大きくなってきたので、オフィスオクトという法人を立ち上げました。

それからしばらくは企画・編集を事業にしていましたが、あるときスウェーデン製のゴミ圧縮減容機の便利さを知ったことで、サステナブル製品に秘められた社会を変える可能性を広めたいと思うようになります。

私はこの思いを実現するために、ゴミ圧縮減容機の代理店としてエヴァイロテックという会社を立ち上げ、2004年、さらに思い切って、オフィスオクトの事業をサステナブル製品の販売へ転換しました。

そして2011年に、これら2社を合併して生まれたのがイーオクトです。それからは、サステナブル先進国である北欧の商品をセレクトして販売しているほか、日本の文化を融合した商品の開発・販売にも取り組んでいます。

普段から使う物だからこそ環境に良いものを

ーー貴社の事業内容を教えてください。

髙橋百合子:
イーオクトは、「ひとりひとりの暮らしから、快適なサステナブル社会をつくる」をミッションに、社会全体の持続可能な発展を目指すため、サステナブルという視点からピックアップした商品の販売を行っています。

扱っている商品はキッチン用品やダイニング用品、清掃用品、雑貨などの日用品がメインで、皆さんが日ごろ使う製品を、環境に優しいものに置き換えることで環境負荷を下げ、少しずつ持続可能な社会を実現することを目指しています。

特に、ヨーロッパのブランドと交流が深く、寝具を扱うスウェーデンのKLIPPAN(クリッパン)、「サステナブルランドリー」を掲げるドイツの洗剤メーカー、Dr.Beckmann(ドクター・ベックマン)、水だけで汚れも菌もとるMQ・Duotex(エムキュー・デュオテックス)などの商品を扱っています。

店舗は表参道にある実店舗とオンラインショップを展開しており、環境への関心が高い方を中心に、多くの方からご愛顧いただいております。

ーーオリジナル商品も展開していますが、どのようなコンセプトで開発していますか?

髙橋百合子:
オリジナル商品開発のコンセプトは、「日本のいいね!を新しく」です。環境保護の先進国である北欧の価値観や文化などを取り入れつつ、日本の伝統的な知恵や技術と融合させながら、製品開発に取り組んでいます。

じつは日本でも、江戸時代まではサステナブルな生活様式が根付いていました。当時はリサイクルして使い続けるのが日常でしたし、人や動物のし尿を肥料にしたり、着なくなった着物をリユースしたりもしていました。つまり、多くの人が「もったいない」精神を持っていたのです。

しかし、時代が進んで物があふれるとともに、その意識は薄れてしまいました。私たちが成し遂げたいのは、その古き良き日本の精神を取り戻すことです。現代だからこそできる新しい技術やアイデアを取り入れて、今の時代に適した新たなサステナブルを見つけていきたいと考えています。

サステナブルの精神をさらに広めるために、より風通しのよい積極的な組織を目指す

ーー会社を経営するにあたって、大切にしていることを教えてください。

髙橋百合子:
特に力を入れているのが経営理念と価値観を明確にして共有することです。サステナブルを実現するという使命を達成するために、社内に文化として定着させることを重視し、採用時も価値観に共感してくれる方を優先的に選んでいます。

また、事業を進める上では、嘘や隠し事をしない「真実」に重きを置いています。私は真実はあらゆることに大きな価値をもたらすものだと考えており、この考えを基に「真実プラス20VALUES」という行動指針を具体化し、風通しの良い組織としての成長を目指しています。

ーー今後、特に注力したいと考えているテーマは何でしょうか。

髙橋百合子:
特に必要だと思っているのが、社員たちが自ら事業を進めていける自走組織への変革です。弊社はこれまで、お客様から注文をいただいて対応する「受け身」の商談が主でした。この状況を変えていくために、これからは弊社から提案を持ちかけるスタンスに改め、取引先と共にマーケットを創造できるような組織にもなっていきたいと考えています。

すでにこの取り組みはスタートしており、少しずつ社内の雰囲気も変わってきました。社員たちが、今までよりも能動的に行動するようになり、仕事に対するモチベーションも高まり、以前よりも楽しんで仕事をしているように思います。

今後は、弊社の経営理念を社会に広めていくための取り組みが課題になることでしょう。社内だけでなく取引先とも真の意味でのパートナーシップを築き、サステナブルな社会の実現に一層励んでいきます。

編集後記

江戸時代の人々の生活に見るように、本当のサステナブルとは、一人ひとりの行動の積み重ねで実現されるものだ。髙橋社長はそのことを理解しているからこそ、日用品という生活に密着した分野を選んだのだろう。髙橋社長の行動の真意が広まるにつれ、社会のあたり前が少しずつ環境に優しいものになるのではないか。このメッセージが早く広まってほしいと願う。

髙橋百合子/大学卒業後に入社した新聞社勤務に1年半勤務し、しばらく主婦として過ごす。その後、元勤務先の新聞社からの仕事の依頼をきっかけに会社を設立。さらにスウェーデンのゴミの圧縮減容機の輸入販売会社も設立。現在は、これらの経験を生かして設立した、機能・デザイン・サステナブル3拍子揃った製品の輸入・販売を行うイーオクトを創業し、代表取締役を務めている。