大浜燃料株式会社は、愛知県の碧南・西尾エリアを中心に、LPガスや一般高圧ガスを供給する他、電気の代理店販売やリフォーム事業、太陽光発電事業なども行っている会社だ。
2023年に創業80周年を迎えた同社は、管轄するエリアでシェアトップを維持している。
3年間で離職率0%を実現した新入社員の教育法や、新規事業への挑戦などについて、代表取締役社長の永坂誠司氏に話をうかがった。
地域の方々に愛され、碧南・西尾エリアのLPガスの販売シェアトップを維持
ーー貴社の主な事業内容についてお聞かせください。
永坂誠司:
弊社の主力事業はLPガスの販売です。また、それに付随する設備機器類の販売や、エネルギー関連の工事も手がけています。さらに、一般高圧ガスの販売や電気の代理店販売やリフォーム事業、太陽光発電事業も行っています。
ーー貴社のこれまでの歩みを教えていただけますか。
永坂誠司:
先代である父があらゆる事業にチャレンジし、商売を続けてくれたからこそ今があるので、父には感謝しています。
固定燃料の販売からスタートし、その後LPガスの販売を始めました。そのタイミングで世の中が液体燃料から気体燃料にシフトし、業績が一気に伸びていきました。
また、弊社は従業員を一度に採用するのではなく、お客様が増えてから1人ずつ採用して人員を補充してきました。こうして少しずつ会社の規模を大きくし、安定的な経営を続けてきたことがよかったのだと思います。
そして今では弊社が管轄するエリアでトップシェアを獲得し、創立から80年を迎えることができましたが、これはひとえに地域のみなさまにご支援いただいたおかげです。
ーー今後はどの分野に注力しようとお考えですか。
永坂誠司:
世界中で温室効果ガスの排出削減に取り組むなか、石油に比べて排出量は少ないものの、LPガスもCO2を発生させています。創業当時からガスを供給してきた企業として、CO2削減は私たちの至上命題です。
そこで弊社では、企業様や個人のお客様に対し、ガスや電気の省エネ対策のご提案をしています。また、CO2排出ゼロのカーボンニュートラルLPガスの販売や、太陽光発電と蓄電池の販売・設置工事も行っています。
こうした取り組みを継続し、温室効果ガスの排出削減に貢献していきたいと思っています。
3年間で離職率0%を維持する秘訣
ーー過去3年間で離職率0%とお聞きしましたが、具体的にどのような取り組みをされてこられたのですか。
永坂誠司:
以前は、技術の習得を重視し、新入社員が入社するとすぐ部署に配属していました。しかし退職者が続いてしまったことで、問題を見過ごした私たちの責任を重く感じたのです。
そこで近年では、技術以外のノウハウも教えるようにしています。ストレス解消の仕方やコミュニケーションの取り方など30項目のテーマに分け、月に1回面談を行っています。
また入社後半年間は、さまざまな部署で研修を受けてもらうOJTを実施しています。新入社員からは、会社の中のことがよくわかり、従業員とのつながりもできたと好評です。
さらに、研修期間中に困ったことがあれば担当者が相談に乗り、改善されなければ上司が話を聞き、最終的には私が面談をします。
こうして技術の習得と精神面のフォローの両輪で育成する方法に変えた結果、退職者が出なくなりました。
営業が得意と自負する永坂社長の極意
ーー経営者になるまでどのような経験を積まれてきたのですか。
永坂誠司:
以前から父がお世話になっていた方の下で2年間学んだ後、父が経営する会社に入社しました。入社後は配管を通すための掘削作業など、現場仕事を数年間経験しました。
その後営業に移ったのですが、私は営業職にやりがいや生きがいを強く感じました。今も「社長に来てほしい」と指名するお客様もいらっしゃるので、営業に行くことがあります。
ーー営業として活躍するためのポイントは何だと思われますか。
永坂誠司:
お客様と信頼関係を構築できるかどうかが取引に直結するため、人間関係がすべてだと思っています。人間関係ができていない状態でセールストークをしたところで、相手には響きません。そのため、相手が心を開いてくれるまで、商売の話はしないようにしています。
ーー新入社員の方々が同席すれば、営業スキルを学ぶ貴重な場になりそうですね。
永坂誠司:
中堅社員からも「新人を同行させて、お客様との会話の仕方を見せた方がいいと思います」と言われました。言われた通り若手社員を連れて行って、営業のスキルを肌で感じてもらうことも今後行っていきたいと考えています。
地域の方々へ貢献するために始める新たな事業
ーーエネルギー事業以外に新たに始めた事業はありますか。
永坂誠司:
最近取り組み始めたのが、ビニールハウスでのコーヒー豆の栽培です。
国内でコーヒー豆の栽培を行っている企業に話を聞きに行ったところ、ビニールハウスを使えば愛知県でも栽培できるということでしたので、土地を借りて栽培を始めました。
まだ時間はかかりますが、ゆくゆくは収穫したコーヒー豆を販売し、障害を持った方が働ける場所を提供したいと思っています。なお、成功したらさらに畑を広げ、体力的に仕事を続けることが難しくなった高齢の方が働ける場所にもなればと考えています。
ーーコーヒー豆の栽培を始めるにあたって苦労されたことはありますか。
永坂誠司:
栽培した農作物を売って利益を得るためには、市の許可をとらなくてはならないのですが、これがとても苦戦しました。それでも弊社の経営方針である「挑戦と革新への勇気をもとう」という気持ちで取り組んだ結果、無事に許可を得られました。
ーーその他にこれから取り組みたいことはありますか。
永坂誠司:
会社の近くにある古民家を改装して、地域の方々の憩いの場所として古民家カフェをつくりたいと思っています。趣味でレコードを集めている友人がいるので、完成したカフェでジャズを流すのはどうかと話しているんですよ。
コーヒー豆の栽培も古民家カフェも、これまでの事業とは畑違いの新たな挑戦ですが、企業理念に「地域と顧客に信頼され必要とされる企業となろう」とある通り、少しでも地域の方々のお役に立てればと思っています。
編集後記
創業から80年続けてこられたのは、地域の方々のおかげだと話してくれた永坂社長。コーヒー栽培や古民家カフェの計画について語る姿から、これまで支えてもらった方々への感謝の思いが伝わってきた。大浜燃料株式会社は、エネルギーの源として地域へ元気を与え続けてくれることだろう。
永坂誠司/1963年生まれ。東京理科大学、産業能率短期大学卒業。東邦液化燃料株式会社(現東邦液化ガス株式会社)に入社し、2年の修業期間を経て1990年大浜燃料株式会社へ入社。2006年に同社代表取締役に就任。