※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

物が増え続ける現代社会で、収納スペースの確保は多くの人々の課題だ。株式会社ストレージ王は、セキュリティ、空調完備の屋内タイプと手軽に利用できるコンテナを使用した屋外タイプの2種類のトランクルームを提供し、この課題に応えている。

同社の親会社は、建築用に開発したコンテナモジュールをベースにしたコンテナホテル「HOTEL R9 THE yard」などを展開する株式会社デベロップ。その建築ノウハウを活かし、最適な保管環境の整備やバイク専用駐車場の運営など、事業領域を広げながら成長を続ける同社。空き家問題への貢献など、社会課題の解決も視野に入れた取り組みについて、代表取締役社長の荒川滋郎氏に話を聞いた。

建築知識を活かした、多様なニーズに応える保管環境

ーー荒川社長のこれまでの経歴を教えてください。

荒川滋郎:
私は父が銀行員だったこともあり、学生の頃は金融業界を検討していました。しかし、大学での企業講義や工場見学を経て、巨大な設備を動かす実業の世界に魅力を感じるようになりました。そこで鉄鋼メーカーに入社してプラント事業部で経理としてのキャリアをスタートさせ、その後2つの会社で経理、マーケティング、不動産の業務に携わっています。こうした経理や商業施設開発に携わった経験から、収益を生む不動産としてのトランクルーム事業に可能性を感じるようになり、2016年に弊社の親会社である株式会社デベロップに入社しました。その後、上場企業での就業経験を買われ、弊社に転籍して上場準備を担当することになったのです。

ーー貴社の事業内容と強みをお聞かせください。

荒川滋郎:
弊社はトランクルームの企画や開発、運営、管理を行っています。提供するトランクルームは2種類あり、1つは空調や、セキュリティシステムを導入した建物の屋内タイプ、もう1つは屋外で手軽に利用できるコンテナを使用した屋外タイプです。加えて、バイク専用駐車場の運営も手がけています。

親会社である株式会社デベロップは建築会社としての知見があり、特に施設のハード面に強みがあります。たとえば、環境に合った空調機能を強化することで、最適な保管環境を整えることができるのです。また、屋外タイプは一般的な海上輸送コンテナと同じサイズながら、建築基準法を満たした専用コンテナを採用し、高い強度と安全性を確保しています。

(※)サービス紹介サイトはこちら

ーーどのような方が貴社のサービスを利用していますか?

荒川滋郎:
弊社のトランクルームは、個人や法人を問わず幅広い方にご利用いただいています。都心では、マンション価格の高騰により自宅の収納スペースが不足し、トランクルームを外部収納として活用する方が多いですね。法人や仕業の方々には書類などの保管用途としてご利用いただくこともあります。

地方では、主に農業関係者や建設業の方々が業務用倉庫として活用してくださっています。たとえば、建築資材を保管し、職人の方々が朝に必要な道具を取り出して現場へ向かうといった使われ方も多いです。

荷物管理の選択肢を増やすサービスを模索していく

ーー貴社で活躍しているのは、どのような人材ですか?

荒川滋郎:
弊社では、大きく分けて「トランクルーム利用者対応の営業」と「不動産開発の営業」の2種類の営業業務があり、それぞれ異なる専門性が求められます。不動産開発の営業では、土地の取得から販売までを担当し、ファイナンスや不動産投資の視点を持って交渉を進められる人材が活躍しています。コンビニ業界や保険業界出身の方など、従来の不動産業界にとらわれない、多様なバックグラウンドを持つ人材が多いですね。

ーー今後はどのようなことに取り組んでいく予定ですか?

荒川滋郎:
今後、他のトランクルームとの競争が激化する中で、弊社としても新たなサービスを模索しています。お客様の利便性を第一に考え、宅配サービスなど、他のサービスを組み合わせて、荷物の管理・保管機能を広げていきたいですね。加えて、DXの推進にも注力しています。オンラインでの契約手続きや360°カメラを活用した施設内見などを強化し、お客様が現地に足を運ばずに契約できる環境を整えていきます。

また、現在は地方の空き家問題に貢献できる可能性を模索しているところです。弊社のトランクルームは、空き家の家財の保管場所としても活用されることが多く、十分なニーズがあります。これをさらに推進するため、空き家問題に悩む地域にトランクルームをつくり、地方創生の取り組みを自治体とともに進めていきたいと考えています。

価値ある事業を通じ、「三方良し」の企業を目指す

ーー貴社の中長期的な目標を教えてください。

荒川滋郎:
今後も、不動産の提供者、購入者、そしてトランクルーム利用者という三者をつなぎ、それぞれのニーズに応えることを目指していきます。また、単なる価格競争に陥るのではなく、適正価格で価値のあるサービスを提供することが重要だと考えています。物件数を着実に増やしながら、安定した利便性を提供できる企業へと成長していきたいですね。

ーー最後に、読者へメッセージをお願いします。

荒川滋郎:
これからの時代、自分がどのように社会に貢献できるかを考え、磨いていくことが大切です。自分の強みややりたいことを明確にし、それを仕事へどう活かすか意識してください。トランクルーム業界の認知度はまだあまり高くありませんが、業界自体はこれから普及していく段階のため、将来性は高いといえるでしょう。多くの方に興味を持っていただき、一緒に働く仲間が増えることを期待しています。

編集後記

一見シンプルな事業が、実は都市と地方の暮らしを支え、さらには空き家問題という社会課題にまでつながっていく可能性を秘めていることに驚いた。異業種からの転身者が多いという点も興味深い。業界の枠を超えた発想は、これからもトランクルームという事業を「保管」機能を通じて未来に大きく拡げていくことだろう。

荒川滋郎/1960年生まれ。1983年に東京大学経済学部を卒業後、新日本製鐵株式会社(現:日本製鉄株式会社)に入社。株式会社パルコ、寺田倉庫株式会社を経て、2016年に現在の株式会社ストレージ王の親会社である株式会社デベロップに入社。その後、ストレージ王の代表取締役社長に就任し、2022年に東証グロース市場にて上場を達成。