※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

賃貸型の物流施設を提供する世界最大の「物流不動産企業」であるプロロジスは、日本市場においても独自の存在感を示している。1983年にアメリカで創業以来、物流施設専門の開発・運営会社として成長を続け、現在は19カ国で事業を展開。

日本では1999年の進出以来、多層階の大規模物流施設の開発や、免震装置の導入、従業員に配慮した快適な施設設計など、数々の先進的な取り組みで業界をリードしてきた。今回は、日本法人の株式会社プロロジス代表取締役会長兼CEOである山田御酒氏に、同社の戦略と展望について話をうかがった。

グローバル経験を活かし、日本の物流不動産市場を開拓

ーー貴社に入社する前は、どのようなキャリアを歩んできましたか?

山田御酒:
私は以前、建設会社に26年間勤めていましたが、そのうち20年ほどは海外で過ごし、主に不動産開発に携わっていました。1983年からアメリカで不動産開発に従事し、1988年には不動産投資信託の組成にも関わりました。建設会社というと建物をつくるイメージが強いかもしれません。私の場合は、不動産開発や証券化、資産運用、資産管理といった分野で経験を積んできました。

1980年代後半になると、日本企業の海外不動産投資が活発化しましたが、不動産に関わる立場として、その失敗例を数多く目にしました。そこで、不動産のプロフェッショナルとして、日本企業の海外進出をサポートしたいという思いが芽生えました。

ーー入社のきっかけは何でしたか?

山田御酒:
「一緒に仕事をしないか」と誘われたことです。プロロジスは1999年に日本法人を設立しましたが、当初は日本市場への参入に苦戦していました。一方、私は2000年ごろから、建設会社の立場でプロロジスをサポートしていたのです。土地の取得方法や建物の設計、許認可の取得など、日本特有の事情についてアドバイスを行っていました。

そんな中、2002年に入社の誘いを受けました。日本における第1号案件の開発が始まるタイミングでもあり、これまでの経験を活かせると考えて入社を決意しました。その後、2005年にはマネージング・ディレクター兼日本共同代表、2009年にプレジデント兼CEO、そして2022年に代表取締役会長兼CEOに就任し、日本でのビジネス展開を牽引してきました。

日本の物流ニーズに応える独自の施設設計

ーー貴社の事業内容を教えてください。

山田御酒:
弊社は一般的な不動産会社と異なり、物流施設のみに特化しているのが大きな特徴です。自社で開発した物流施設をお客様に貸し出し、その賃料収入を得るビジネスモデルを展開しており、現在では世界19カ国で事業を展開しています。グループ全体の総資産は約34兆円に上り、その半分は機関投資家と共同で保有し、弊社が運用・管理を行っています。

日本では、自社で開発した物件を日本プロロジスリート投資法人に売却し、投資家に間接的に保有してもらう仕組みを構築しています。これにより、資金を効率的に回転させ、次の開発に投資することができるのです。

ーー貴社の物流施設には、どのような特徴がありますか?

山田御酒:
弊社が開発した物流施設の大きな特徴は、多層階の大規模な建物にトラックが直接アクセスできる「ランプウェイ(傾斜路)」です。これは弊社が業界に先駆けて開発したもので、土地の有効活用と作業効率の向上に大きく貢献しています。

たとえば、2003年に東京都大田区で竣工した7階建ての施設を皮切りに、数多くの施設で大型車両やコンテナトレーラーが上層階に直接乗り入れることができます。これにより、限られた都市部の土地でも大規模な物流拠点を構築することが可能になりました。

また、免震構造の採用や、ソーラーパネルの設置、地下水の利用など、災害対策や環境配慮にも力を入れています。さらに、従業員のための快適な環境づくりにも注力し、オフィスビル並みの質の高い内装や、レストラン、託児所なども備えました。

これらの取り組みは、それまでの物流施設のイメージを大きく変え、より多くの人材、特に女性従業員の採用にも貢献しています。かつては男性中心だった物流現場も、今ではEコマースやピッキング等の仕事を中心に、女性の比率が高まっているのです。

社会変化に応える新たな物流ハブ構想

ーー今後の展望をお聞かせください。

山田御酒:
今後は、2024年問題と呼ばれるトラックドライバーの労働時間規制に対応するため、新たな物流ハブの開発にも注力していきます。また、環境への配慮も重要なテーマです。太陽光発電システムの導入や、蓄電池の活用による電力の効率的な利用など、持続可能な物流施設の開発にも取り組んでいきます。

物流は「経済の血流」とも言えるもので、その効率化は社会全体に大きな影響を与えます。業界のリーディングカンパニーとして、常に新しい取り組みにチャレンジし、その成果を広く共有することで、日本の物流産業の発展に貢献していきたいですね。

編集後記

倉庫というと無機質なイメージを持っていたが、山田氏の話を聞いてそのイメージは見事に覆された。環境への配慮、働く人々への心遣い、そして未来を見据えた戦略的な立地選定。それらが見事に調和し、新しい物流拠点をつくりあげている。普段何気なく行っている買い物や宅配便の受け取りも、そこに関わる物流を想像すると少し特別に感じられそうだ。

山田御酒/1983年から米国にて不動産開発に従事。1988年からは米国における不動産投資信託(REIT)の組成に携わり、不動産の証券化、資産運用、資産管理に豊富な経験を持つ。1991年からは英国の不動産投資に従事。2002年、株式会社プロロジス入社。2005年にマネージング・ディレクター兼日本共同代表、2009年にプレジデント兼CEO、2022年に代表取締役会長兼CEOに就任。