※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

古民家再生がブームになり始めて約10年、いまだその熱は冷めていない。近年では、投資目的で古民家を購入する、古民家再生投資をする人も増えている。そんな中で、不動産コンサルティング事業を軸に、古民家再生事業や注文住宅事業など多くの事業を手がけているのが、株式会社オカムラホームだ。

同社の代表取締役である金子保夫氏は、「弊社はHOUSEではなくHOMEをつくる」と語る。金子氏が目指す会社の理想の姿はどのようなものなのか、話をうかがった。

人を幸せにする力を目の当たりにして不動産業界へ

ーー不動産業界で働きたいと考えるようになったきっかけを教えてください。

金子保夫:
不動産業界に興味を持ったのは、高校生時代に姉のマンション契約に立ち会ったときのことです。姉と義理の兄は、とても生き生きと幸せそうにしていました。その姿が印象的で、「不動産は人を幸せにする力があるんだな」と感じたことが不動産業界に就職したきっかけです。

高校卒業後、大手不動産仲介会社で3年間お世話になりましたが、私が思う「顧客ファースト」の仕事ができるよう、いつか起業したいと思うようになりました。そこで、起業前にひと通りの業務を経験するために、株式会社オカムラホームに入社しました。その後、「そろそろ起業するタイミングだな」と考えていたときに、先代の社長から私に会社を譲りたいという話があり、2006年に代表取締役社長に就任することになったのです。

ーー社長就任後、会社をどのようにしていきたいと考えましたか。

金子保夫:
とにかくお客様の方向を向いて仕事ができる会社にしたいと考えました。そのためには、社員が100%幸せにならなければ、お客様に100%幸せになっていただけるサービスは提供できません。ですから、まずは私が社員を幸せにして、社員はお客様を幸せにできるように心がける。そのために、社員同士の交流の場を積極的につくり、横のつながりを強化して、みんなでお客様に向き合える、そんな体制づくりに取り組んでいます。

お客様の課題解決から新規事業のアイデアが生まれる

ーー現在、どのような事業に取り組んでいますか。

金子保夫:
私が社長に就任してからは、不動産コンサルティング事業を主力として、注文住宅事業や不動産投資事業など多岐にわたる事業を展開してきました。

コンサルティング事業においての私たちの仕事は、不動産活用に悩んでおられるお客様の課題を聞くこと。金融や税務の知識を持つ士業の方とタッグを組んで、どのようにお客様の課題を解決していくかを考えます。一人ひとりのお客様にフォーカスして解決策を提案することで、新たな事業が生まれることがあります。

たとえば、弊社の住宅再生事業「ヴィンテージ木ここち」は、伝統家屋にお住まいのお客様の悩みを解決したことをきっかけに生まれました。そのお客様は伝統家屋に誇りを持ちつつも、すきま風に悩んでおられました。そこで伝統家屋のよさを残しつつ、高い性能を持つ改修工事を提案する住宅再生事業を立ち上げたのです。

ーー事業において大切にしている考えについてお聞かせください。

金子保夫:
弊社は「HOUSEではなくHOMEをつくる」という言葉を意識しています。単に不動産・建築を扱うのではなく、お客様の豊かな暮らしをつくるという意味です。また、不動産・建築を通じて、ご縁をいただいた方が「豊かな暮らし」を実現できるような「幸せ請い人」として仕事をしたいと考えています。

そのために、注文住宅の専門店「木ここち家ラボ」を立ち上げました。お客様からヒアリングした内容を踏まえて、住まいのプロフェッショナルとして、デザイン性と性能が高く、かつ自然素材のぬくもりを持つ家を提案できることが弊社の強みです。

子どもたちの未来のため、行動しながら考えるSDGsに取り組む

ーーSDGsの取り組みにも注力しているそうですが、具体的にどのような取り組みをしていますか。

金子保夫:
2020年に「地域貢献を通じてSDGsを達成できるような活動がしたい」と宣言して、SDGsに関連した活動を始めました。私は「SDGsがお題目になってはいけない」と考えています。ただ目標を掲げるだけでなく、積極的に活動することが大切です。

私は「気づき、考え、行動する」という言葉が好きなので、SDGsも「行動しながら考えるもの」ととらえています。その行動を形にするため、2021年に千葉県佐倉市で一般社団法人「MIRAI KOMINKA for School」を立ち上げました。

この「MIRAI KOMINKA for School」は、主に千葉県内の高校生を中心とする子どもたちの未来のために活動しており、現在は千葉県内の7つの市が参加しています。「行政」「学校」、そして私たち「企業」の産官学でともにSDGsを達成していくようなプロジェクトを子どもたちに経験してもらい、将来に役立てることができればと考えて始めた活動です。

ーー最後に、貴社の理想のあり方を教えてください。

金子保夫:
前述のように、弊社は「HOUSEではなくHOMEをつくる」を意識しています。お客様に住宅を引き渡すことは、弊社にとってゴールではなくスタートです。これからも企業としての責任感をもって行動し、お客様から信頼される会社でありたいですね。

編集後記

株式会社オカムラホームでは、売上の一部をMIRAI KOMINKA for Schoolの活動費にあてている。この活動費の使途を社員に公募したところ、9割の社員から長文のメールが返ってきたそうだ。子どもたちの未来を真剣に考える同社の社員たちの姿を思い、胸が熱くなった。子どもたちが動き、大人たちがサポートする。地域が一丸となって目指すSDGs達成に向けた取り組みが、千葉県の未来を豊かにする光景が目に浮かぶ。

金子保夫/1973年神奈川県生まれ。高校卒業後、大手不動産仲介会社に入社。その後、株式会社オカムラホームに入社。2006年に代表取締役社長に就任。