
不動産業界に新たな光を灯す、株式会社Glowホールディングス。不動産売買から賃貸、リフォームまで、住まいにかかわるあらゆるサービスをワンストップで提供する「不動産のデパート」として、顧客の期待に応え続けている。同社を率いるのは、業界未経験から業界トップに上り詰め、独立を果たした代表取締役社長の木村光明氏。順風満帆なキャリアの裏側で、いかにして「負けない会社」という揺るぎない経営哲学を築き上げてきたのか。そして、急激な変化を迎える不動産業界の未来をどう見据え、次世代に何を託そうとしているのか。その情熱と信念に満ちた半生を紐解く。
ゼロからの挑戦、たどり着いた「選ばれる営業」
ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。
木村光明:
私は高校を卒業するのがやっとのタイプで、就職活動にも苦労しました。初めて勤めた会社も不動産とは全く違う業界です。
25歳で結婚したことを機に、将来について真剣に考えるようになりました。そうして、30歳で本格的に転職を考えたとき、妻が宅地建物取引士の資格を持っていたことや、周囲の友人から「衣食住の『住』は良い仕事だから向いているのではないか」と勧められたことがきっかけになりました。明確なキャリアプランがあったわけではなく、まさに“行き当たりばったり”の人生だったのです。
「物を売るな、自分を売れ」未経験からトップに上り詰めた営業とは
ーー不動産業界に飛び込まれて、いかがでしたか?
木村光明:
不動産業界の営業は未経験でしたから、入社して間もない頃は苦労の連続でした。そうした中、単に「物を売る」のではなく「私自身を売る」という哲学を確立したことで、徐々に成績が伸び始めました。2年目にはトップグループに食い込み、そこから常に、契約数ではトップの成績を維持できるようになったのです。
お客様から「この人にお願いしたい」とご指名いただけるようになることを目指し、お客様からご指名いただく営業スタイルを追求しました。
ーー「お客様から選ばれる営業」を目指すにあたって、具体的にどのような工夫をされたのでしょうか。
木村光明:
お客様と初めてお会いしてから契約に至るまでのプロセスを、一つのストーリーとして考えるようにしていました。営業の多くは、最初の段階から契約のことばかりを考えてしまいがちですが、私はまず、お客様との信頼関係を築くことを第一に考えました。お客様にご納得いただけるストーリーをご提示できたからこそ、信頼を勝ち取ることができたのだと思います。
また、単なる営業ではなくコンサルタントとして、不動産を「資産」という視点でお話していました。単に価格の安さや高さを論じるのではなく、将来的な資産価値を考慮して「少し頑張ってでも良い場所を購入した方が良い」といったアドバイスも行っていました。
ーーそうした営業手法は、どのようにして確立されたのでしょうか。
木村光明:
常に他者との差別化を意識していました。不動産業者は数多く存在するため、その中で選んでいただくためには、他とは違う何かが必要です。お客様に「爽やかだね」「この人から買いたい」と感じてもらうために、明るく元気で誠実な姿勢を大切にしました。声の大きさや話し方、そして何よりもお客様に寄り添う姿勢を心がけ、他の営業マンとは違うアプローチを追求していきました。
苦労の中で見つけた「負けない会社」という哲学
ーー貴社の創業の経緯についてお聞かせください。
木村光明:
当時、勤めていた会社がバブルの影響で支店閉鎖を検討していた時期があり、私を拾ってくださった支店長がリストラの対象になってしまったのです。その後任として私が支店長になる話も出ましたが、恩人である支店長を差し置いてその地位に就くことに納得ができず、会社に居づらくなってしまいました。そんなとき、以前からお付き合いがあった方から、「起業したほうがいいよ」と背中を押され、会社の経営をサポートしてくれるという申し出もあり、独立を決意しました。
ーー経営者となられて、最も苦労されたのはどんなことでしょうか。
木村光明:
最も苦労したのは資金繰りで、設立から最初の1年間は本当に火の車でした。この経験から、「負けない会社」を作ることの重要性を痛感しました。
私が考える「負けない会社」とは、一時の勢いに頼って売上を伸ばすのではなく、どんな経済の波が来ても耐えられるだけの地盤を固めた、安定して成長し続ける会社です。見せかけの数字を追って無理な経営をすれば、いつか必ず足元をすくわれます。大きなリスクを冒して勝負に出るよりも、地道に足腰を鍛え、着実に成長していくこと。それが、私が追い求める「負けない会社」の姿です。
成長を続ける「不動産のデパート」

ーー不動産売買が軌道に乗ってから、次にどのような展開を考えられたのでしょうか。
木村光明:
会社設立から3〜5年後には、すでに事業の多角化を始めていました。不動産会社の看板を掲げていると、お客様は売買だけでなく、賃貸やリフォームなど住まいに関するあらゆるご相談をしてくださいます。その期待に応えたいという思いから、不動産のデパートのように、住まいに関するすべてのサービスをワンストップで提供できる会社を目指すようになったのです。
ーー事業において、現在、特に注力していることは何でしょうか。
木村光明:
今、最も力を入れているのは世代交代です。DXやSNSマーケティングなど、時代は急激に変化しています。この新しい波に対応していくためには、若い世代の力が必要です。会社の平均年齢を大幅に下げ、若いメンバーに会社を任せる体制を早急に構築しています。また、今年中にはSNSマーケティングに特化した会社を子会社化する予定です。不動産業界はSNSとは縁遠いと思われがちですが、これからは集客の新たな柱になると考えています。このM&Aによって、弊社のDXも加速されるでしょう。
ーー若い世代の採用については、どのようなお考えをお持ちですか。
木村光明:
新卒採用には慎重です。育てるには時間とコストがかかり、中小企業では難しい面があるからです。しかし、私自身、何も経験がないところからスタートしましたから、学歴や経験にかかわらず、やる気や志のある人は積極的に採用したいと考えています。
「人」と「ビジョン」で未来を描く
ーー経営者として、最も大切にされている信念は何ですか。
木村光明:
人を大切にすることです。従業員は子どもと同じです。しっかり育ててあげれば、親孝行してくれるようになります。給料をたくさん払うことだけが大切にすることではありません。日々のコミュニケーションを通じて、社員一人ひとりの顔色や変化に気づき、励ましてあげることが重要です。
ーー今後の展望について、具体的なビジョンがあればお聞かせください。
木村光明:
もちろん具体的な数字へのこだわりもありますが、それ以上に“しっかりとした組織を作る”ことが最優先です。組織が強くなれば、それに伴って売上や社員数も自然と伸びていくと考えています。数字はあくまで結果であり、プロセスを大切にしたいのです。私は、会社を「負けない会社」にしたいと思っています。一時の勢いで売上を伸ばすことは簡単ですが、安定して成長し続けることが重要です。大きなリスクを冒して勝負に出るよりも、地道に足腰を鍛え、どんな波が来ても耐えられるような会社を目指しています。
編集後記
木村氏に話を聞き、その人柄に触れる中で、不動産業界における華々しい経歴の裏側に、常に「人」を大切にする揺るぎない信念があることを強く感じた。学歴やキャリアプランがないところからスタートし、周囲の支えと自身の努力で道を切り拓いてきた木村氏の言葉は、これから社会に出る若者や、キャリアに悩む人々にとって、大きな勇気を与えるだろう。ビジネスも人生も「ビジョン」が大切だというメッセージは、未来を描く上での確かな道標になるに違いない。

木村光明/1964年千葉県生まれ、千葉敬愛高等学校卒。三光開発株式会社に入社し、3年間の修行期間を経て、1998年、創建住販株式会社 代表取締役社長に就任。2022年株式会社Glowホールディングス設立。不動産特定共同事業法の1号事業者免許申請中で許認可になれば千葉県第一号になる予定。