※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

就業規則や評価制度の整備・運用支援を通して、働きやすい社会の実現に取り組んでいる大槻経営労務管理事務所。同社はほかにも、各種保険の手続きを代行するアウトソーシング業務など、幅広い事業を手がけている。750社以上という多くの企業から信頼を獲得している同社の強みとは一体何なのか、代表の大槻智之氏に話を聞いた。

「大企業からの依頼」と「1社への依存度を下げること」で安定経営を実現

ーー代表に就任したときの気持ちを聞かせてください。

大槻智之:
弊社は父が創業した会社で、私は父が会社を0から1に育てる苦労を見ていました。そんな父の後に会社を継ぐのであれば、会社を1から10ではなく、1から100に成長させるくらいのことをしなければ周りから認めてもらえないと思ったのです。

私が代表に就任したのは、業績が落ち込んでいた2016年です。大変な時期ではありましたが「ここでV字回復をして、2代目として周りに認めてもらいたい」という思いもあり、当時約5億円だった売上を、その倍の10億円にするという大きな目標を掲げました。

周囲からは「そんなことできるわけがない」とさんざん言われましたが、私は無理だと言われれば言われるほどやる気が出るのです。言葉通り、V字を超えるような結果を出せれば、「周囲の人々は度肝を抜くだろうな」と思いました。

理解者がいなかったため孤独でしたが、私はたとえ一人でも目標を立てて営業し続けました。営業はすぐには結果が出ないので、何をしているのか理解しがたかったようです。でも私は、「今、頑張れば、将来の自分のためにもなる」と信じて、努力することしか選択肢はありませんでした。そして、とにかく売上アップに向けて突き進んだ結果、就任から2年と少し経った頃に売上10億円を達成することができたのです。

ーーどのような戦略で売上を伸ばすことができたのですか。

大槻智之:
1つは、給与ベンダー(給与計算業務を代行する専門会社)との取引を増やしたことです。当時は、今まで給与ベンダーに社会保険の手続きなどを依頼していた大企業が、法令遵守の問題から、社労士に依頼する流れが生まれました。

そこで弊社は給与ベンダーと提携し、彼らが顧客として抱える大企業の社会保険の手続き業務を引き受けることにしたのです。その際、社内で業務量が増加したため、採用を強化し、結果として会社が成長できたという背景があります。

そしてもう1つが、1社との取引に依存するビジネスモデルをやめたことです。1つの会社に依存していると、その会社からの仕事が減ったときに大きなダメージを受けることに気づき、提携先を増やしたことで安定経営を実現できました。

「クライアントのビジョンの実現」を第一に信頼を獲得

ーー事業の具体的な内容や強みを教えてください。

大槻智之:
弊社は、社会保険・給与計算の総合アウトソーシング業務、人事・労務コンサルティング業務、労務監査や助成金の申請支援業務など、幅広い事業を手がけています。その中には、マネーフォワードなどの会計アプリと連携して提供するサービスもあります。

アウトソーシング業務では、紹介を通して新規顧客を獲得することが多く、お客様の業種はさまざまです。コンサルティング業務では、紹介ではなく自ら営業をして顧客を開拓しています。

弊社の一番の強みはクライアント数の多さで、実際に営業先で「750社のお客様がいる」と先方に伝えると、提携が決まることがほとんどです。

ーー貴社とほかの事務所の違いはどういった点にありますか。

大槻智之:
他社との大きな違いが、ゴール設定です。弊社は「お客様が掲げているビジョンを実現するために、自分たちができることを最大限する」ことをゴールに設定しており、そのために労務トラブルや採用、業務改善に関わる支援など、経営の仕組み化や職場の課題解決に関わる幅広い事業を手がけています。

このゴールは「人役喜報(じんえききほう):人の役に立ち、喜ばれて報酬を頂く。」という、弊社が大切にする価値観にもつながっており、お客様のためになるのであれば、同業他社を紹介することもあります。社員全員がこのような発想を持っているのが、他社にはない特徴です。

また、弊社では「働きやすい会社から働きやすい社会をつくる」という企業理念を掲げています。この企業理念を掲げたのは、売上10億円という目標を達成したにもかかわらず、大きな達成感を得られなかった自身の経験が関係しています。

「私は何のためにこんなに頑張ったのだろう」と考えた結果、仕事の中に人生があるのではなく、人生の中に仕事があることに気づいたのです。

会社が持続的に成果を出すためには、より良い環境で社員たちが働くことが大切です。そして、より良い環境で働くことは、人生をより良くすることにつながります。

このような思いから、働きやすい会社を増やし、「働きやすい社会」に貢献したいという思いで事業を運営しているのも、弊社ならではの特徴だと思います。

「社労士の枠」にとらわれずクライアントの課題解決を支援

ーー今後のビジョンについて聞かせてください。

大槻智之:
これからは売上ではなく、利益を求める姿勢を追求するつもりです。また、業種を限定せず、さまざまな会社と提携することは自社の利益だけでなく、お客様の利益にもつながると私は思っています。

お客様を成功に導けていないのに、お客様からお金をいただくというのはおかしな話ですから。これからも、弊社とお客様の両方がWin-Winの関係になることを第一に考えていきます。

また、弊社では「社労士の枠を超える」というビジョンを掲げており、社労士の仕事にとらわれず、人事労務全体のプロとして、お客様の会社経営をサポートすることを目指しています。

そのために今後も積極的に提携先を増やすのはもちろんのこと、M&Aもしながら、幅広いHR企業として成長していきます。

編集後記

代表就任時の心情について「他人から無理だと言われるほど、やり遂げたくなる」と語った大槻社長。同社が成長を続ける背景には、結果を残すまで諦めない同氏の高い向上心があるのだと感じた。すでに「社労士の枠」を超えて活躍している同社。今後も幅広いサービスを通して顧客の多彩なニーズに応え、多くの企業の経営基盤を支えていくだろう。

大槻智之/1972年東京生まれ。明治大学経営学研究科を修了。特定社会保険労務士、傾聴アソシエ、採用定着士、ジョブオペ認定コンサルタント、仕組み経営コーチ、承認コミュニケーター、ベーシックプロスピーカーでもある。大槻経営労務管理事務所の代表として、労務トラブル、採用、目標管理、評価制度、業務改善、経営仕組み化支援など、職場の課題解決に関する事業を手がける。