※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

「困っている人を助ける」という信念のもと、メディアの力と全国に広がる加盟店ネットワークで生活のお困りごとを解決するBEST株式会社。同社は、あえて「自分でできること」は正直に伝え、真に必要なサービスだけを適正価格で提供している。

「レスキュー商法」と呼ばれる高額請求の社会問題に対し、正しい情報を発信することで業界の健全化を目指す代表取締役社長の大澤竜氏に話を聞いた。

逆境を乗り越えて築いた、強靭な組織体制

ーー貴社を創業した経緯について教えてください。

大澤竜:
私は高校を途中で辞めた後、親の知り合いの鉄工場や、自動販売機のオーバーホールをする会社などで働き、さまざまな仕事を経験しました。しかし、どの職場でもしっくりくる感覚がなく、自分は会社員という働き方が向いていないのではないかと感じていました。

そうした中、22歳の頃にある日コンビニでリクルートの独立開業の本を手にとった際に、鍵の緊急駆けつけのフランチャイズ募集を見つけたのです。問い合わせをすると「すぐに面接に来てほしい」と言われ、名古屋まで行きました。

そこで採用となり、1年ほど契約社員として経験を積んだ後、埼玉に戻って自分で駆けつけの事業を始めました。その後、同業の先輩と一緒に仕事をする時期を経て、2004年に弊社を創業したのです。高校中退から自分の会社を持つまで、紆余曲折ありましたが、「困っている人を助ける」という思いを軸に歩んできました。

ーー経営において大きな転機となったエピソードをお聞かせください。

大澤竜:
2019年に社員の6割が引き抜かれるという出来事がありました。ゴールデンウィーク前日のことで、翌日から10連休という状況でしたから何もできず、会社を畳むことまで考えました。しかし、とにかく「負けたくない」という一心で、資金を調達して立て直しを図ったのです。コールセンターも新しく構築し、現場の人材も業務委託に切り替えるなど、組織の体制を見直しました。2年ほどかけて何とか組織を立て直し、結果として以前よりも強い組織をつくることができました。

正直な情報発信で、本当に必要なときに頼られる存在へ

ーー貴社の事業内容と、他社との差別化ポイントを教えてください。

大澤竜:
現在の事業は、鍵の紛失やガラスの破損、蜂の巣の発生といった生活のお困りごとを、加盟店と連携して解決するというものです。Webに広告を出してお問い合わせをいただき、全国の加盟店に仕事を依頼するというビジネスモデルです。現在は自社から現場作業の専門部隊を切り離し、メディア展開を軸としたwebマーケティングの会社に変わっていくフェーズにあります。

差別化として注力しているのが「正直な情報」の提供です。一部のメディアは、問い合わせや依頼の件数を増やすために「プロに頼んだ方がいい」という情報ばかり提供している現状があります。

たとえば、蜂の巣の場合、「危ないから触らないでプロに電話してください」と訴求しているのを見かけますが、実は日が暮れてから蜂が活動しない時間に殺虫剤をかけるだけで対処できることもあります。また、トイレのつまりも、配管へのダメージを抑えるためにラバーカップを使わずに専用の薬剤をお湯で溶かして流した方が良いケースも多いのです。

ーーそうした正直な情報発信の狙いは何でしょうか?

大澤竜:
ご家庭でもできる対応を正直に訴求することで、不必要な問い合わせが減り、結果的に必要な仕事だけを職人さんに供給できるという好循環が生まれると考えています。業界では「レスキュー商法」(※)が大きな社会問題になっており、広告費を回収するために高額な請求をする業者が多い中で、弊社は適正な料金設定と正直な情報提供を心がけています。誠実なビジネスでありたいという強い思いがあるからです。

(※)レスキュー商法:ネット上などで安い金額を提示し、工事終了後に高額を請求する商法

メディア構築から始める、業界健全化への道

ーー今後の展望を教えてください。

大澤竜:
これまで十分な情報提供ができていなかった分野と、水道や害虫駆除といった専門領域のメディア開発を同時に進めています。各カテゴリーにディレクターを置き、ライターも30〜40人ほど採用して進めているところです。今年中にメディアの運用を開始し、3年後には10億円ほどの利益を確保したいと考えています。

利益がしっかり出れば、上場も視野に入ってきますが、まずは収益基盤の確立に注力していきたいですね。マーケティングに特化した会社として、メディアを通じてしっかりとした収益の基盤を確立することが、次の段階への投資を可能にする重要な鍵だと考えています。

ーー事業にかける思いをお聞かせください。

大澤竜:
弊社は「最適な情報で暮らしに安心を」「あなたの暮らしに情報革命を」という2つのミッションを掲げています。今後も適切な情報を発信し続けることで、皆さんがより暮らしやすい社会をつくっていきたいと思っています。今立ち上げ中のBEST365(※1)、害虫害獣コンシェルジュ、お助け本舗(※2)では、困っている生活者の方々に、価値のある情報を届けることができると自信を持っています。

(※1)新メディア:BEST365
(※2)お助け本舗系メディア:ハチお助け本舗害獣お助け本舗カギお助け本舗ガラスお助け本舗屋根お助け本舗

また、業界のマイナスイメージを払拭していきたいという思いも強いですね。弊社が先頭に立って変革を推し進めていくことで、本質的な価値を提供できる業界に変えていきたいと考えています。

編集後記

困ったときこそプロを頼るべきだが、その「困った」の定義を正直に示す姿勢に感銘を受けた。表面的な売上ではなく、業界全体の健全化まで視野に入れるBESTの取り組みは業界の中で光を放っている。「困っている人を助けたい」と語る大澤社長の表情には、危機を乗り越えた自信と、業界変革への確かな覚悟が伝わってきた。

大澤竜/1976年、埼玉県生まれ。1998年、ジャパンベストレスキューシステム株式会社の業務委託として起業。2004年、有限会社BEST(現:BEST株式会社)を創業。創業以来、一貫して「困っている人を助ける」という信念のもと事業を拡大している。