株式会社リチェルカは、サプライチェーンマネジメントに特化したSaaS「RECERQA SCM」を開発し、在庫管理や受発注業務の効率化を目指す企業として注目を集めている。銀行、ITベンチャー、ブロックチェーン業界など、異業種での豊富な経験を持つ代表取締役CEOの梅田祥太朗氏に、起業の背景や事業へのこだわり、そして将来の展望について話をうかがった。
大手銀行員から起業への道のり
ーー起業されるまでの経緯を教えてください。
梅田祥太朗:
大学卒業後にみずほ銀行に入社し、2年間法人営業を担当していました。その後、ITベンチャーのワークスアプリケーションズに転職し、会計・サプライチェーンマネジメント(SCM)という高単価なシステムの提案に携わりました。
その後、AI insideで執行役員CROを務め、IPOを経て、HashPortにて取締役COOとしての経験を積んだのち、2022年に独立して弊社を設立しました。
ーー起業してから現在の事業に至るまでどのような変化がありましたか。
梅田祥太朗:
創業当初はブロックチェーン関連の事業に取り組みました。前職のHashPortがブロックチェーンの企業だった経験を活かしてスタートしたのです。
同時期の2022年にバイク輸入業を営む会社を買収しました。もともと私はバイクが好きで、自身が惚れ込んでいるとあるイタリアメーカーの総輸入元が買い手を探していると聞き、「ぜひ買いたい」と申し出ました。しかし、買収後に運営してみると、モノを仕入れて在庫して売るというオペレーションが想像以上に大変で、かなり混乱した状態でした。
仕事の効率化を図るべく試行錯誤するなかで、業務に適したシステムの必要性を痛感し、導入を検討しました。ところが、既存の仕組みでは求める形に合うものが見つからず、自分たちで新しいシステムをつくることを決意したのです。それが今の「RECERQA(リチェルカ)」の開発につながっています。
無謀とも思えるほどの大きな挑戦
ーー貴社の事業内容について詳しく教えてください。
梅田祥太朗:
私たちは「サプライチェーンをデータの力でアップデートする。」という目標を掲げて、「RECERQA SCM」と「RECERQA Scan」というシステムを開発し、提供しています。
「RECERQA SCM」はSaaS型のERPで、仕入れから販売という、入口から出口までを一貫して管理できる点が特徴です。多くのSaaSベンダーは在庫管理や仕入れ管理、販売管理など分けて提供していますが、私たちはあえて全工程をカバーする選択をしました。
一見すると無謀に思えるようで、ベンチャーキャピタルからも懐疑的な目で見られることが多かったです。しかし私は、入口から出口までつながっていなければ、業務全体の最適化は実現できないと確信しています。データが分断されていては、業務効率の本質的な改善はできないのです。時代の進化があるからこそ開発スピードを上げることができ、大きなサービスを創り上げることができると思っています。
「RECERQA Scan」は、生成AIを搭載した次世代のAI-OCRです。請求書やインボイス、納品書など、今までのAI-OCRで読めなかったフォーマットが多岐にわたる書類を、簡単な設定でデータ化することができます。このサービスによって、アナログデータの蓄積を容易にしデータ活用を促します。
私たちの目標は、「マニュアルを読まなければ使えない」というB2Bシステムの常識を覆すことです。B2Cのアプリは、インストールしてすぐに直感的に使えるのが当たり前です。その使いやすさを、B2Bの世界にも持ち込みたいと考えています。
私の経験上、多くのERPでは、業務のあらゆる判断に、無駄な時間と労力を費やしています。本来、こうした作業はシステムが自動で指示できる領域です。「当然あるべき機能」を、より使いやすい形で提供することで、業務効率の根本的な改善を目指しています。
共感する仲間と未来を築く3つの重点戦略
ーー今後の注力テーマについて教えてください。
梅田祥太朗:
今後注力していくテーマは、大きく分けて3つあります。1つ目は新規取引先の開拓、2つ目は新技術の研究・実装、そして3つ目は採用の強化です。新規取引先の開拓に関しては、私たちの技術でサポートできる企業との出会いを心から望んでいます。
商社や卸売業、小売業など、商品点数が多く、受発注業務が複雑な企業には大きな課題があると感じているからです。こうした企業の業務を、私たちの技術で支援し、業務の効率化や改善に役立てたいと考えています。
2つ目の新技術の研究・実装も欠かせない重要なテーマです。弊社には実績のあるAIエンジニアたちが在籍しており、彼らと共に生成AIを積極的に取り入れていくことで自分たちが理想とする製品を形にし、確かな価値を提供したいと考えています。そのためにも新技術の研究には積極的に投資し、未来のニーズに応える力を養っていく方針です。
そして最後に、採用の強化です。現在、正社員は10名を超え、業務委託や副業のメンバーを含めて30名体制で運営しています。「共感してくれる仲間が多いほど仕事は楽しい」と感じているため、業種にかかわらず、一緒に働きたいと思える仲間を増やしたいと思っています。興味を持ってくださる方がいれば、ぜひご連絡いただきたいです。新しい仲間が増えることで、より多くの価値を生み出せると信じています。
編集後記
銀行でのキャリアを起点に、ITベンチャー、ブロックチェーン、輸入業など異業種での経験を重ねながら、起業家としての道を切り拓いてきた梅田氏。企業のサプライチェーン基盤を支える「RECERQA SCM」の開発を通じて、業務効率化とイノベーションの両立を目指す姿勢は、まさに柔軟な発想と実行力を象徴している。
特に注目すべきは、企業の業務オペレーションに直接携わるエンジニア育成や、誰もが使いやすいシステムを志向する「カスタマーファースト」の姿勢だろう。「全てをつなぐSaaS」という大胆な目標に挑戦し続ける梅田氏が、今後どのような変革をもたらすのか、大いに期待したい。
梅田祥太朗/中央大学卒業後。みずほ銀行、ワークスアプリケーションズを経てAI inside 執行役員CROとしてIPOを経験。HashPortにて取締役COOを務めた後、2022年にiMAMIRAi株式会社 (現、株式会社リチェルカ) を創業。同時に、イタリア製オートバイの輸入業を事業継承し代表取締役社長に就任。その経験から、2023年SCM SaaS「RECERQA」の開発を開始。