※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

企業活動において欠かせない契約書管理は、紙・データと異なる媒体で散在する情報の適切な保管や更新漏れ、担当者の異動に伴う引継ぎの困難さなど、多くの企業にとって解決すべき問題が数多く存在する。こうした課題に対応するため、契約書の作成から管理まで一貫して扱えるシンプルなクラウドサービスを提供するのが株式会社Hubbleだ。

今回は、代表取締役CEO & Co.Founderの早川晋平氏に、起業までの道のりや、サービス開発の背景、そして今後のビジョンについてお話をうかがった。

人生を変えた一冊の本が起業への第一歩

ーー起業までの歩みをお聞かせください。

早川晋平:
教員を目指して数学科に入学した大学在学中に、成功している起業家の著書を読んだことがきっかけです。「こういう人生を歩みたい」と起業への興味が芽生えました。その後、起業を視野に入れ、財務や経営管理を学ぶために税理士法人へ就職しました。

当時、「マネーフォワード」や「freee(フリー)会計」などの会計ソフトが台頭したことで、業界が大きく変化していく様子を目の当たりにし、「どういう仕組みで動いているのだろう」という興味から、プログラミングの学習を開始したことが人生の転機となりました。

仕事とプログラミングの勉強を両立させるため、2〜3時間睡眠の生活を半年ほど続けましたが、振り返ると、人生で最も努力した時期だったと思います。時間を忘れて没頭し、技術力はもちろん、起業のベースとなる底力も得ることができ、プログラミングを始めて1年後に起業しました。

「誰でも使える」にこだわったシンプルで革新的な契約書管理

ーー貴社の事業内容を教えてください。

早川晋平:
弊社は、契約書の作成から締結後の契約書管理業務まで一貫して行えるクラウドサービス「Hubble(ハブル)」等を提供しています。起業当時、契約業務のデジタル化は大幅に遅れており、「リーガルテック※」という言葉自体がまだ一般的ではありませんでした。

電子契約サービスのクラウドサインも普及していない時代に、私のバックオフィス業務の経験とソフトウェア開発のスキルを活かし、何か新しい価値を創造できないかと考えたのが事業の始まりです。経営メンバーとともに約3年の試行錯誤を経て、現在のサービスが完成しました。

※法律に関する業務や手続きにIT技術を活用して新たな価値や仕組みを提供するサービスやツール

ーー貴社のサービスの強みはどのような点にありますか。

早川晋平:
サービスの強みは、圧倒的な使いやすさにあります。競合他社の多くが法務部門向けに特化している中、弊社は事業部門の社員を含め、誰にでも使いやすいよう設計しています。必要な機能を厳選し、直感的でわかりやすいシンプルなデザインに加え、既存ツールとの高い親和性を実現しており、普段から使用しているチャットやドキュメントなどの業務ツールの操作性を変更することなく、導入できる点が特徴です。

また、AIによる契約台帳の自動作成や契約期間の自動通知機能により、煩雑になりがちな契約書管理の課題解決や業務の効率化を図っています。法務部門に従事する人員は日本全体で数万人程度ですが、事業部門は数百万から数千万人規模の市場を有しています。私たちは、こうした事業部門をターゲットに、新しい市場を切り開いていきたいと考えています。

5年後100億円へ、複数のプロダクトで目指す新展開

ーー人材採用については、どのようにお考えですか。

早川晋平:
現在、弊社はサービス認知度の向上と組織力・営業力強化のための人材採用に注力しています。認知度向上に関しては、展示会への出展や、法務・契約業務のナレッジ共有を目的としたウェビナーの実施を通じて、徐々に効果が表れ始めています。

スタートアップ企業の成長は粘り強さにかかっていると考え、沈みかけの船を修復し、強い戦艦に変えるような意志とエネルギーを持つ人材とともに挑戦したいと思い、採用を強化しています。社員に期待するのは、会社の業績を伸ばすという強い意識を持ちつつ、仲間とコミュニケーションを取りながら、明るくポジティブに仕事に取り組むことです。

ーー今後のビジョンについて、お聞かせください。

早川晋平:
5年後のビジョンとして、売上目標の達成と複数のプロダクトラインナップの展開を掲げています。ものづくりを楽しみながら会社を成長させるためにも、ものづくりの精神と売上目標を融合させた組織づくりを目指します。

弊社の原点は、目の前の人々のお困りごとをソフトウェア開発で解決することにあります。市場の大きさを追い求めるのではなく、一人ひとりの課題に丁寧に向き合い解決することを積み重ねていくことで、自然に大きな会社になると信じています。今後も、こうしたプロダクト開発を続けていく所存です。

編集後記

取材を通じて印象的だったのは、早川CEOの「ものづくり」に対する純粋な情熱である。プログラミングとの出会いが人生を一変させた経験から、テクノロジーの可能性を信じる姿勢が際立っていた。技術至上主義ではなく、目の前の人々の課題を解決したいという強い使命感が原動力となっている。

法務部門と事業部門の架け橋となるサービスを生み出した背景から、徹底した利用者目線の姿勢が見て取れる。契約業務のデジタル化がさらに加速する中、株式会社Hubbleの今後の展開が楽しみだ。

早川晋平/2014年関西学院大学を卒業後、税理士法人に入社し、2年間ファイナンスや経営管理を学ぶ。その中で非効率な業務オペレーションに課題を感じ、プログラミングを独学で習得後、2016年に株式会社Hubbleを創業。契約業務・管理クラウドサービス「Hubble(ハブル)」はITreview Grid Award(10期連続)やBOXIL SaaS Awardなど受賞多数。