
2005年に設立された株式会社ベストワンドットコムは、クルーズ旅行・船旅に特化した旅行会社として、オンライン予約・決済サービスを提供している。豪華客船から手頃なクルーズまで取りそろえた、業界トップクラスの商品ラインアップが特徴だ。今回は、代表取締役会長の澤田秀太氏に、就任の経緯や会社の強み、今後の展望についてうかがった。
親族が経営していた会社に憧れ、「自分なりの経営」を模索
ーーまずは会長のご経歴をお話しいただけますか。
澤田秀太:
親族が経営していた旅行会社を見て育ったことから、将来は新しいビジネスを生み出す経営者になりたいと考えていました。
経済やマネジメントを学ぶため、大学卒業後は証券会社で営業職を経験したのち、父が経営する会社の取締役も務めました。20代のうちから営業全般や投資事業の知見を深められ、今も役立っています。
ーー貴社の社長に就任した経緯もうかがえますか。
澤田秀太:
20代のうちに経営者になりたいという思いが強まったタイミングで、弊社の創業者である実姉が家庭の事情でフルタイムで続けられないという話がありました。事業の可能性や成長させる自信もあったので経営に入ることになります。
クルーズ旅行は学生時代に経験して魅力を知っていましたし、小さな事業を大きくするという思いと、当時の弊社の規模感とマーケットの伸びしろが合致していました。
「オンライン×多彩なクルーズ旅行」を強みに若年層へリーチ

ーー現在の事業内容と企業の強みをご解説ください。
澤田秀太:
クルーズ旅行に特化した「オンライントラベルエージェント」として、広告代理店事業を行っています。最大の強みは店舗を持たず、「Webで集客・ブランディングしていること」です。予約はオンラインサイトからの申し込みやメール、電話で受け付けています。
予約前後や旅行中のお問い合わせは、専任担当者が電話・メールで対応します。クルーズ旅行の専門性と「人」によるフォロー体制は、お客様の安心感と安全につながる部分です。
創業当時、クルーズ旅行はシニア層のお客様が多いことから「オンライン専門のクルーズ旅行会社」は大変めずらしいものでした。現在はオンラインにおけるノウハウを生かし、ネットリテラシーの高いシニア層やアクティブな現役層だけでなく、若年層にも訴求しています。
商品は、7泊8日で15〜20万円の地中海クルーズから、4泊5日で5万円の日本発着クルーズまでさまざまです。弊社では、お手頃な短期クルーズがハネムーンや学生の卒業旅行に人気で、お子様が小さいファミリー層を含めて20代〜50代のお客様が増えています。
ーー商品のラインナップも充実していますね。
澤田秀太:
豊富な商品を仕入れられることも弊社の大きな強みです。「API」というシステムで船会社と連携し、世界中のクルーズ商品を自社サイトに掲載しています。客室数などの在庫を含めて、日本屈指の規模を誇るクルーズ会社と言っても過言ではないでしょう。
航空券・ホテル・クルーズを組み合わせたパッケージ旅行はもちろん、オリジナルクルーズやクルーズのみの予約も好評です。移動手段や陸上の宿泊施設をお客様が自由に手配できる「FIT(※)クルーズ」は、他社にはあまりない商品ではないでしょうか。
今後は、部屋の買取と船のチャーターに力を入れてオリジナルクルーズを増やす方針です。また、航空券付きや添乗員付きといった一般的なパッケージ商品もより充実させ、「『ベストワンドットコム』を見れば世界中のクルーズ情報がわかる」と言われるような、「オンリーワンの会社」を目指します。
(※)FIT(エフ・アイ・ティー):個人旅行・個人旅行者を指す「Foreign Independent Travel」の略。
「クルーズ市場の拡大」を目指して事業をグローバル化
ーー貴社で現在活躍する人材と、今後求める人物像についてうかがえますか?
澤田秀太:
現場のオペレーターやカスタマーサクセスとして活躍するのは20代のスタッフが中心です。ベストワンドットコムの根幹には、「学生や30代以下の方にもクルーズ旅行を楽しんでほしい」という思いがあります。そのため学生から20代〜50代の現役層、社会人層、ファミリー層のお客様がご相談しやすい文化をつくっています。
事業規模の拡大に向けて、ターゲットと同世代の発想が可能な「若い世代」の採用に今後も力を入れると同時に、マッチする人材の獲得が大きな課題です。一方、中途人材においては、業界・職種を問わず幅広く採用しています。プログラマーから旅行会社の営業まで、前職の経験を生かして活躍できる場が必ずあります。「一緒に事業を盛り上げたい」と思う人に、ぜひ来ていただけるとうれしいですね。
ーー今後の展望をお聞かせください。
澤田秀太:
2025年に創業20周年を迎えるにあたり、人気キャラクターやタレントなど、外部とのコラボを通じて企業の認知度をより高めていこうと思っています。目標は、2030年までに売上高や従業員数を含めて「クルーズ旅行業界No.1」になることです。
弊社がさらに成長するには、「クルーズの未体験者」にアプローチする必要があります。新しいお客様が数十年後に所得や余暇を増やし、長期クルーズをご予約いただくなど、可能性の広がりにも期待できるでしょう。早い段階から「体験」の機会を生むことが大切ですね。
今はチャレンジを続ける「変革期」だと捉え、旅館業をはじめとする新規事業やM&Aを積極的に行い、事業の柱を増やしたいと考えています。また、「クルーズのマーケットを拡大する」というビジョンの実現に向けて、グローバル支社の展開も進めたいところです。夢は大きく、将来的には「新しい船会社を作る」という構想もあります。
編集後記
「値段が高い」「シニアの楽しみ」といったイメージを抱かれやすいクルーズ旅行。お値打ちクルーズの存在は少しずつ認知を高めているものの、挑戦していない人は未だ多いようだ。オンラインにクルーズ情報の土台を築いた「ベストワンドットコム」は、変革期でさらなる進化を遂げ、船旅をより身近な娯楽にしてくれることだろう。

澤田秀太/1981年生まれ。学習院大学経済学部を卒業後、2005年に日興コーディアル証券に入社。2006年、澤田ホールディングスの取締役、エイチ・エス証券の取締役を兼任。2012年、株式会社ベストワンドットコムの代表取締役社長に就任。同年、株式会社ファイブスタークルーズを子会社化。2016年、ファイブスタークルーズの代表取締役会長に就任。2022年、ベストワンドットコムの代表取締役会長に就任。2018年4月東証マザーズ(現:グロース)上場。