
2014年に設立された株式会社シンクリエイト。千葉県市川市に本社を置く建設業者として、解体・仮設工事、修繕工事・内装工事、産業廃棄物の収集運搬業、土木工事など幅広い事業を手がけている。さらに2022年には新規事業として、子ども食堂を併設した飲食店をオープンした。代表取締役の鈴木心氏に、創業の経緯や地域貢献への思い、今後の展望をうかがった。
建設業のやりがいを知り、夢見ていた起業を実現
ーー起業した経緯をお話しいただけますか。
鈴木心:
前職は建設業とは全く関係ない分野で働いていて、友人の紹介で建設業の会社へ転職しました。特にこの仕事を絶対にしたいという思いはなかったものの、現場の解体工事に携わる中で建設業のやりがいを感じるようになったのです。
その後は営業職や管理部門など、10年のうちに一通りの仕事を経験し、独立。なぜ独立したのかというと、そこには私の生い立ちが関係しています。私は貧しい家庭で育ったため、「裕福になるには起業するしかない」と昔から考えていました。この業界に転職し、さまざまな経験をする中で、業界に対する熱意や起業への思いが高まり、昔からの目標であった独立を決めたのです。
ーー経営において大きな困難はありましたか?
鈴木心:
特に困ったことや悩んだことはありません。大言壮語を好まないので、自分にできることを淡々と、一つひとつこなしていった結果が今の状態につながっています。前職の時から大切にしているのは、言葉にしたことを実行し、確実に前に進むことです。
私は仕事が好きなので、これまでほとんど休まず働き続けています。もちろん、365日元気ではいられません。そのため、無理なくスケジュールを組み、走るのではなく歩いていくイメージで続けてきました。
大手デベロッパーから請ける工事の傍ら「子ども食堂」も運営

ーー事業内容と貴社の強みを教えてください。
鈴木心:
元請けの解体工事業者として、デベロッパー様・各企業様からのさまざまな工事依頼に対応しています。施工エリアは、東京を中心とした関東一帯と、東北・北陸・甲信越・東海の一部エリアです。最近は大阪や福岡など遠方の仕事も増えてきました。
一番の強みは、自社が持つ解体技術と機械を駆使して、複雑な構造の物件にも対応できることです。また、解体業はサービス業に近い部分があり、弊社は現場の管理能力や対応品質でも高い評価を得ています。しっかりと挨拶したり、現場をきれいに保ったり、人として当然の心がけを忙しくても疎かにしないことで、お客様からの信頼を得てきました。
さらに、重機や社用車についても清潔感を意識して、青と黄色のオリジナルカラーで統一しました。爽やかでクリーンなイメージが、地域の方の安心感につながっているのではないかと思います。
ーー飲食事業を始めたきっかけもうかがえますか?
鈴木心:
知人の影響で飲食店の経営に興味を持ち、社員が福利厚生で使えるような店をつくりたいと考えたのがきっかけです。2022年にオープンした「私のこだわり 肉の弥生」は、東北産の和牛をメインに肉料理を提供する創作料理店です。高級感あふれる内装も特徴で、パーティーや女子会はもちろん、親子三代でゆったりと利用できる雰囲気になっています。
加えて、子ども食堂も同時に開業しました。私の少年時代はいつも空腹だったので、子どもたちにはご飯をいっぱい食べてほしいという思いがあります。重ねて、地域に貢献をしたいという思いもあり、事業を開始しました。仕組みとしては、協賛企業に200円の食券を購入していただき、子どもに無料でお弁当を提供しています。
飲食事業は地域貢献の一つであり、収益性は求めていません。地域のスポーツ活動や花火大会への協賛・ボランティア活動も含めて、故郷の市川市に貢献できる活動を続けていきたいと思います。
市川市の優良企業として認知度を上げ、次の世代へバトンタッチ
ーー今後の展望をお聞かせください。
鈴木心:
企業が存続するためにはブランディングが大切です。「シンクリエイトは市川市にある優良企業である」と認知されれば、働く社員も誇らしく、市川市への恩返しにもなることでしょう。
経営者としては利益を社員に還元し、福利厚生も充実させることで、この会社で働く幸福度を上げていくことを目標にしています。そして、私は時代に合った経営判断ができるうちに一歩退き、サポートに回りたいと思っています。若手の採用と後継者の育成に注力し、早い段階で次世代にバトンタッチしたいですね。
ーー若手の方やいっしょに働きたい方へメッセージをお願いします。
鈴木心:
夢に近づくには、思考と行動の継続が一番大事です。建設業を続けるうちに仕事が大好きになった自身の経験から、関心がない分野も例外ではないと思っています。「やってみないとわからない」と決めつけず、まずは目標を立ててみることが重要です。当たりをつけながら行動することが大切で、失敗やズレを調整する過程で自分の感性が研ぎ澄まされます。
弊社では、物事に前向きで誠実な人たちが活躍しています。業務のDXにも勢力的で、現在は現場管理をスムーズにするオリジナルアプリを開発中です。作業員から現場監督、事務職まで本人の希望で職種を選べる環境なので、建設業界に興味のある方はぜひお越しください。
編集後記
地域に認められ、若手人材を集めるためにも、清潔感やDXを推進してきたシンクリエイト。解体業者の中でも、かなり先進的な企業だと言えよう。社員が安心して成長できる環境が整っているからこそ、高い技術力と現場の品質も担保されているのだろう。ブランディングを高める会社の変化はもちろん、鈴木氏の支援を受けた人が市川市で活躍する未来も待ち遠しい。

鈴木心/1982年生まれ。アミューズメント業界に就職した後、建設業の会社へ転職し、解体工事業に従事。2014年に独立し、株式会社シンクリエイトを設立。同社の代表取締役に就任し、グループ会社を含め、4社の役員を兼任。地域の子どもたちに食の文化を伝えるため、飲食業にも取り組んでいる。