※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

1960年に設立された株式会社石垣。独自性に優れた脱水機・ろ過機・ポンプなど、水に関わる機器の開発から製造までを一手に担うメーカーだ。各種工場のほか、さまざまな施設に製品を販売する中でも、下水処理場におけるスクリュープレス汚泥脱水機のシェアは国内トップクラスを誇る。今回は、代表取締役社長の石垣真氏に、企業の歴史と開発への取り組み、今後の展望をうかがった。

塩づくりの町・坂出で機械メーカーとして発展した会社を継承

ーーご経歴をお話しいただけますか。

石垣真:
父が立ち上げた「石垣」を継ぐことを前提に、大学では商学部を専攻しました。卒業後は、総合商社で経理業務や環境・建築業界向けの営業を担当しました。大型機械の販売代理店という側面もあり、輸入業務を含む多様な経験ができたと感じています。

5年間の修業を終えた80年代は、海外進出と自社ライセンス製品の展開に注力していくタイミングでした。私は入社すると同時に、提携先であるアメリカのインガソール・ランド社に出向し、1年ほど経理職を担当しました。

帰国後に任されたのは、赤字続きだったポンプ事業を立て直す大仕事です。アメリカ製品をベースに大型の汚水輸送用ポンプを開発してから、独自性のあるポンプ設備を手がけられる会社となりました。私はその後、常務取締役を経て48歳で社長に就任した次第です。

ーー貴社の歴史と事業について教えてください。

石垣真:
弊社は、塩づくりが盛んな香川県坂出市で創業しました。私の祖父も塩の保存倉庫業を営んでいたのですが、戦後は塩の製造法や販売ルールが変わり、運営が厳しくなったそうです。

プラント会社に技術者として勤めていた父は独立し、弊社を立ち上げ、製塩工場向けの機械販売や配管・メンテナンス事業を始めました。製塩に使用するポンプは、塩害によって腐敗しやすく、事業のニーズはとても多かったと言えます。

その後、捨てていた「にがり」から、もう一度「塩」を回収する機械の製造に着手。開発した「ストリングフィルター」という真空ろ過機は、初の自社開発製品として、弊社がものづくりや機械メーカーとしての第一歩を踏み出すきっかけとなったのです。

60年代半ばに公害問題が激化し、水質汚濁防止法が施行されたことも一つの転機です。規制前は工場排水だけでなく、生活排水も川や海を汚染する要因だったのです。

弊社は、固液分離の技術で汚泥を処理する「脱水機」を開発し、全国の下水処理場をはじめ民間工場に納入しました。現在は、水に関するインフラ周りに強い会社を自負しています。

製品改良と開発力を武器に脱水効率化を高める新技術を展開

ーー開発における強みや注力テーマをうかがえますか?

石垣真:
効率的な固液分離ができるような製品改良や、その現場にあった製品にカスタマイズしていく開発力で他社と差別化を図っています。特許を取得した「プラチナシステム」は、通常の処理では脱水しにくい厄介な汚泥の脱水効率化を高める新技術です。通常は薬品を用いて脱水しやすくするところを、「プラチナシステム」を使うことで脱水しやすくでき、薬品の使用量を減らすことができます。

従来の汚泥は廃棄物として埋め立て・焼却処理されてきましたが、近年はできるだけ脱水してコンクリートの材料や肥料として再利用する時代となりました。さまざまな処理方法がある中でも、弊社では汚泥を脱水しやすくする機械を作り、客先のニーズに合った脱水性能を提供しています。

たとえば、下水処理場では微生物の力で水をきれいにしています。弊社ではその際に発生する消化ガスを燃料とする発電事業をスタートしました。すでに、香川県丸亀市の浄化センターに導入された取り組みで、「脱炭素化」の促進にもつながると考えています。

新たなイノベーションと柔軟なチャレンジ環境を創造

ーー今後の展望をお聞かせください。

石垣真:
社会に必要な息の長い仕事として、堅実に成長していきたいと考えています。

ものづくりの企業として、ハード面に対する技術開発は継続しつつ、それだけでは解決できない課題をソフト面で補っていきます。蓄積されたノウハウや運転に関するデータなど、自社でしか保有していない情報を可視化し、会社の新たな強みにしていきたいですね。

また、既存の技術を生かして、面白いものを生み出そうという発想から「ビジネスイノベーション」という新事業を探索する活動も始めました。

今後も社員が柔軟かつ自由にチャレンジできる環境を整えていきたいと思います。

ーー共に働きたい人材に向けてメッセージをお願いします。

石垣真:
「石垣」は、チームプレーが多い中でも個々の力が求められる会社です。意欲的に自分で道を切り拓いていく人が、成長しやすいと言えるでしょう。フラットかつ風通しのいい組織だと思うので、いろいろな方に来ていただけるとうれしいです。

編集後記

自分が使った水がどのように処理され、物質循環やエネルギーを生み出すのか、改めて考える機会となった今回のインタビュー。採用における課題は事業の認知度向上だが、実績・技術力で挑戦を続ける「石垣」は、すでに幅広い世代の関心が集まるステージに立っている。

石垣真/1953年生まれ。1975年の大学卒業後、総合商社へ入社。1981年、石垣機工(現:株式会社石垣)に入社。同年、インガソール・ランド社(米国)へ出向。帰国後、常務取締役などを経て1998年に代表取締役社長へ就任。