
16万件以上のレシピが掲載され、月間2,000万のユーザーが利用している料理メディア「Nadia」。980人以上(2025年5月時点)の料理家や料理研究家が考案したレシピは、わかりやすく失敗が少ないと人気を集めている。
料理のプロによるレシピ掲載にこだわる理由や、一人ひとりの気持ちに寄り添うことを大切にする思いなどについて、代表取締役社長CEOの葛城嘉紀氏にうかがった。
憧れの仕事を経て気付いた自分の本心。料理を通して誰かに貢献したいと考えたきっかけ
ーーまず葛城社長のご経歴について教えてください。
葛城嘉紀:
子どもの頃から好きだった音楽を仕事にしたいと思い、新卒で音楽事業を行っている企業に入社しました。アーティストのプロモーションを担当し、充実した日々を送っていたものの、自分が好きなことより人に貢献する仕事をしたいと思うようになります。
そこから「自分の力で人に貢献したい」と思うようになり、起業に興味を持ち始めました。そこで経営のノウハウを学ぶため、起業家を多く輩出している株式会社リクルートに入社しました。こうして起業を目的に転職したものの、やりがいのある仕事ができ、このまま居続けようかと何度も思いましたね。
しかし、30歳で起業すると決めていたため、後ろ髪を引かれる思いで退職を決意しました。その後に設立したのが、株式会社OCEAN'S(現:Nadia株式会社)です。
ーー現在の事業に至った経緯を教えていただけますか。
葛城嘉紀:
実は最初の起業では、ホームページ制作やシステム開発などの受託業務を行っていました。しかし、この事業を続けていても、私が思い描く、誰かに貢献する企業には近づけないと感じていました。そんな中、料理研究家の方々と接する機会を得ました。
彼・彼女たちの「誰かのために料理をつくりたい」という思いに触れ、自身の人生のテーマと合致していると感じたのです。また、料理研究家の方々は技術や発信力はあっても、経営やマーケティングに詳しくない方が多くいました。そこで私がこれまで培ったノウハウを活かし、彼らが活躍できる場を提供しようと考えました。
こうした経緯があり、現在の料理研究家のマネジメントとメディア運営を行う事業スタイルに行き着きました。
失敗しないレシピを発信し、料理をする人たちの助けになりたい

ーー改めて貴社の事業内容についてお聞かせください。
葛城嘉紀:
弊社の事業は主に3つです。まず1つ目は、料理メディア「Nadia」の運営。2つ目は、980名以上(2025年5月時点)の料理家・料理研究家・料理インフルエンサー、通称「Nadia Artist」の方々のマネジメント事業です。Nadiaにレシピを投稿できるのは、独自の審査に通過したNadia Artistのみです。手順がわかりやすくおいしいなど、一定の条件を設けることで、レシピの品質を担保しています。また、Nadia Artistの方々は、得意な料理ジャンルや年齢、お住まいの地域などもさまざま。それぞれの個性や特徴を活かした活動ができるようサポートなども行っています。
3つ目は、食・料理・ライフスタイル領域での広告企画やPR業務です。Nadia Artistの方々の協力を仰ぎ、これまで約400社の食品メーカー様とタイアップを行っています。
ーー料理のプロによるレシピ掲載にこだわる理由は何でしょうか。
葛城嘉紀:
これは市場リサーチをする中で、レシピを検索してその通りにつくったのにもかかわらず、失敗したという方が多いと知ったことがきっかけでした。
それからは協力していただける方を募るため北海道から九州まで飛び回り、「誰でも美味しい料理をつくれる料理メディアをつくり、食卓に幸せを届けたい」という思いをお一人お一人に伝えました。
こうした地道な努力を重ね、少しずつご協力いただける料理研究家の方を増やしていった結果、ユーザー数2000万人を超えるメディアにまで成長しました。
大切なのは働く仲間へのリスペクト。自社に関わる人たちの気持ちに寄り添いたい
ーー貴社の社風について教えてください。
葛城嘉紀:
「成長と貢献」をビジョンに掲げている通り、自分の成長のために努力を惜しまず、人のために動く貢献心を持った人が多いですね。また、何か問題があればオープンかつポジティブに意見を出し合い不満を溜め込まないので、職場内がギスギスした空気になることはないですね。
そして弊社は社員の平均年齢が29歳と若く、さらには子育て中の女性社員が多いのが特徴です。出産後も働き続けている社員が多いのは、経営陣を含め子育てをしながら働く仲間へのリスペクトが根底にあるからでしょう。
ーー会社経営をする上で大切にしていることは何でしょうか。
葛城嘉紀:
弊社に関わるNadia Artistと社員一人ひとりの気持ちに寄り添うことを大切にしています。Nadia Artistの方々に対しては、個性を大切にしながら改善提案を行い、心地良く活動できるようサポートしています。Nadiaをみなさんが思い描く夢の実現のために利用してもらえたら嬉しいです。
今後の注力テーマと海外での日本食の普及にかける思い
ーー最後に今後の展望についてお聞かせください。
葛城嘉紀:
これからさらにメーカー様とのコラボを進めていきたいと考えています。
また、あわせて注力していきたいのが採用です。食や料理、マーケティングに興味があれば、未経験の方でも構いません。特に社会人経験があり、自分の適性や目標がはっきりとしている第二新卒の方を中心に採用したいですね。
そして長期的なスパンで海外展開も強化していこうと考えています。日本食はアニメやコミックと同様に、世界で戦えるコンテンツだと思っています。調味料メーカー様とタッグを組み、海外のレストランへレシピを提供し、日本食の普及に貢献したいです。
ただ、これは私の代だけで実現するのは難しいので、次の世代の経営者たちが良いスタートを切れるよう、これから礎を築いていきます。
編集後記
幼少期から憧れていた音楽業界で働き始めたものの、「自分のやりがいよりも誰かに貢献できる仕事がしたい」と起業の道を選んだ葛城社長。そんな思いから生まれた料理メディア「Nadia」は、「家族のために美味しい料理をつくりたい」という人々の拠り所となっている。Nadia株式会社は一人ひとりの個性を大切にした運営を行い、世界中の食卓へ幸せを届けていくことだろう。

葛城嘉紀/1980年大阪府生まれ。同志社大学卒業。新卒で株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社し、音楽プロモーターとして音楽業界に従事。監査法人トーマツを経て、株式会社リクルートに入社。2010年リクルート在籍時に前身となる企業を創業。2012年にリクルートを退職し、株式会社OCEAN'S(現:Nadia株式会社)を創業。