※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

高額商品向けの積立決済サービス「リスポ」を展開する株式会社リスポ。同社は、代金を少しずつ積み立てて商品を購入する「積立購入」という新たな決済手段を提供し、消費者には特典やお得な購入機会を、メーカーには新たな顧客層の獲得をもたらしている。流通業界に新たな風を吹き込み、成長を続ける同社の代表取締役社長、黍田龍平氏に話をうかがった。

スタートアップでの幅広い経験が起業の土台となった

ーーこれまでのご経歴を教えてください。

黍田龍平:
私のキャリアは、スタートアップ企業でデザイナーとして働くことから始まりました。その後、クイックゲット株式会社というスタートアップに入社し、本格的にビジネスを学ぶこととなります。

当時のクイックゲットは2億円弱の資金調達をしたばかりで、私以外のフルタイムメンバーは、社長とCTO、創業メンバーという小さな組織でした。そのため、セールスやオペレーションの設計、KPIのモニタリングなど幅広い業務を経験。テレアポからCS部門の立ち上げまでこなし、忙しく働く毎日でした。

こうした経験を経て、2021年5月、20歳のときに株式会社リスポを創業しました。

ーー現在の事業に至るまでには、どのような経緯があったのでしょうか?

黍田龍平:
最初は、接客業向けのデジタルチップサービスを提供していました。アメリカのチップ文化をデジタル化したようなサービスで、QRコードを使って飲食店のスタッフやタクシードライバー、美容師などにチップを渡せるというものです。しかし、コロナ禍の影響もあって思うように展開できず、事業転換を決断しました。

新たな事業を模索する中で、ある時、友人がパソコンを購入する際、ローンが通らず一括で購入せざるを得ない状況になったことを目の当たりにしました。その時、「高額商品を購入する際に利用できる、新たな決済手段を提供したらどうか」と考えたのです。

そこで、楽しく無理なく買い物ができるように、お金を積み立てて商品を購入できる「リスポ」というサービスを立ち上げました。

高額商品の購入に新たな選択肢を提供する積立決済サービス

ーー「リスポ」について詳しく教えてください。

黍田龍平:
2024年に提供を開始したECサイト向けのSaaS「リスポ」は、積立決済サービスです。お客様が少しずつお金を積み立てて高額商品を購入できる仕組みを提供しています。

この事業モデルは、従来の決済手段で解決できなかった2つの課題に対応しています。まず構造的な課題として、後払いの場合は貸し倒れるリスクを軽減するため、決済金額に上限を設けるケースが少なくありません。しかし、これでは金額が足りず、高額商品の購入に対応できないことがあります。その点、「リスポ」は積み立てによって商品を購入するので、そうしたリスクが発生しません。

次に心理的な課題として、日本の消費者はアメリカと比べてリボ払いの利用率が3分の1ほどと低いことが挙げられます。これは、「手数料を払うぐらいなら買わない」という心理から起こる現象だと考えています。そうした心理的な課題を解決するために、「リスポ」では少しお得になるような仕組みを提供することで、新たな購入体験を創出しています。

ーーメーカー側にはどのようなメリットがありますか?

黍田龍平:
価格が理由で離脱していた顧客が購入層に引き上げられるという点がメリットです。高額商品の場合、たとえば、20万円の商品を10%値引きしてもまだ高額で、従来の値引き施策では効果が限定的でした。しかし、「リスポ」を活用すれば、値引きに加えて、代金を積み立てることによって購入のハードルを下げられるため、より効果的なセールス施策となるのです。

今後は、購入プロセスのデータを活用したクロスセルの提案など、メーカーの売上げ向上に貢献する新たな取り組みも計画しています。

段階的な事業拡大で目指す、金融インフラの革新

ーー今後はどのように事業を展開していく予定ですか?

黍田龍平:
次の展開として3つのステップを計画しています。まず自社ECを持つ企業への導入を強化し、基幹システムとの連携技術を開発していきます。続いて、大手モールとの連携に取り組み、より多くのユーザーがサービスを利用できる環境を整えるつもりです。そして、最終的には実店舗でも利用できるサービスへと発展させていきたいと考えています。

ーー黍田社長の実現したいビジョンについてお聞かせください。

黍田龍平:
弊社のビジョンは「金融のOSをつくる」です。これは、従来の金融の仕組みを一新し、誰もが使いやすく、日常生活に深く組み込まれた新しい金融インフラをつくり上げることを意味しています。このビジョンに向かって、弊社は世の中の人々にとってなくてはならないサービスを提供することを目指しています。

そのために、明確な目標として2030年に時価総額3000億円でIPO(新規上場)することを設定しました。これは簡単な数字ではありませんが、弊社のサービスが社会に与えるインパクトを考えると、十分に達成可能な目標だと信じています。より多くの人々が、自分の望む商品やサービスを無理なく手に入れられる世界を創造するために、これからも歩みを進めていきます。

編集後記

高額商品の購入を諦めていた人に「積立購入」という選択肢を示した黍田社長。ローンへの心理的ハードルが高い日本市場の特性を捉えた、まさに逆転の発想だ。単なる決済方法ではなく、消費者の“欲しい”気持ちに寄り添う温かみのあるサービス設計に、独自の価値を感じる。リスポが提供する「リスポ」は、日々の小さな積み重ねが、大きな喜びにつながるということを教えてくれているようだった。

黍田龍平/2001年、鹿児島県生まれ。デザイナーとして妊活系のスタートアップで経験を積み、クイックゲット株式会社に入社。BizDev領域のオペレーション構築・改善やCS部門の立ち上げ、卸業者への営業など多岐に渡り従事。2021年、株式会社リスポを創業し、代表取締役社長へ就任。接客業向けデジタルチップサービスを立ち上げ、その後、2024年に積立決済SaaS「リスポ」の提供を開始。