※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

食品、医薬品、化粧品メーカなどの物流を一手に引き受け、倉庫保管から運送、流通加工までをワンストップで提供する株式会社リクサス。創立64年を迎える同社は、物流にとどまらず、介護や保育といった福祉分野、さらにはゲストハウスやプライベートサウナ運営まで事業領域を拡大している。100年企業を目指す同社の取り組みについて、代表取締役社長の土井一正氏に話を聞いた。

異業種からの転身、自社の理解に他社での経験が生きた

ーー貴社へ入社した経緯を教えてください。

土井一正:
弊社は祖父の代から続く物流事業を中心に営む会社です。父から「継がなくていい」と言われていたこともあり、私は家業を継ごうとは考えておらず、大学卒業後はペットフード会社へ就職しました。そこでは営業から始まり、マーケティングなどにも携わりながら8年間勤務しました。

しかし、あるとき、創業者である祖父から「いつ戻ってくるのか」と連絡を受けたのです。入社して8年が経過しており、大きなプロジェクトを任されるなど仕事が一番面白くなってきていた時期でもあり、迷いもありました。しかし、創業者の祖父からの相談ということで、当時取り組んでいたプロジェクトが終了した後に入社することを約束し、2007年に弊社へ入社しました。

ーー入社後はどのような取り組みを行ってきましたか?

土井一正:
入社1年目は課長代理として営業を担当。祖父からの連絡が突然だったということもあり、物流業についてはっきりとしたイメージを持たないまま入社したので、社内理解のために、営業をしながら社内で気づいた点を日々メモに書き溜めていきました。

振り返ると、入社時に会社のことをさほど知らない状態だったことによって、外部の視点からフラットに、俯瞰的に社内を見ることができたのが良かったと思います。

そして2年目以降から、メモに書き溜めた内容をもとに改革を進めていきました。当時は創業者が会長を務めており、役員も高齢化していたため、社内制度が古いままになっていました。そこで私は社内制度を整えることを重視し、人事考課や職務規定など、会社の根幹となる部分を刷新していきました。

その後、取締役管理本部長、常務取締役、専務取締役と段階を経て、創立60周年を期に2022年に代表取締役社長に就任しました。社内の若返りを図りながら、会社の基盤強化に努めてきたことが今日の成長につながっていると感じています。

物流センター運営を核に、事業の多角化を推進

ーー貴社の事業内容について教えてください。

土井一正:
弊社はもともと運送会社として創業しましたが、現在はお客様に代わって物流センターを運営する倉庫業を中心に事業を展開しています。具体的には、倉庫での商品保管から、トラックでの配送、さらには商品のセット組みや箱詰めなどの「流通加工」と呼ばれる作業まで、物流に関するあらゆるニーズにお応えしています。

取引先は食品関係のお客様が最も多く、次いで医薬品関係、そして近年力を入れている化粧品関係という構成です。特に医薬品の物流は法規制が厳しく参入障壁が高いため、それを長年にわたって提供し続けているのは、弊社の強みといえるでしょう。

ーー事業の多角化を進めるに至った背景についてお聞かせください。

土井一正:
物流業だけでは将来に不安があると考えたことが多角化の原点です。弊社のサービスは、取引先の企業様が自社で倉庫を運営するようになると不要になってしまうリスクがあります。そこで父の代には介護事業を立ち上げ、私は保育事業に着手。父が高齢者向けのビジネスを展開していたので、私はターゲットを変えた事業をやりたいと考えたのです。

これらに加えて、昨年よりライフウェルネス事業部を新設し、ゲストハウスやプライベートサウナの運営も手がけ、人々の健康に寄与できる事業を展開しています。

ーー営業活動においては、どのようなことを大切にしていますか?

土井一正:
私が営業において最も重視しているのは、人間関係の構築です。私は営業が好きで、社長になった今でもずっと続けています。倉庫業は一度取引が始まると長期間続くという特徴があり、お客様との深い信頼関係を築くことが不可欠です。

そのため、対面での交流を何よりも大切にしています。ときには、打ち合わせ時間のほとんどを、お客様の人柄を知るための会話に充てることもあります。物流というシンプルな仕組みの仕事だからこそ、人と人とのつながり、“親和性”を築くことが、差別化のポイントになると考えています。

働きがいと新事業の創出で持続的な成長を目指す

ーー今後の展望についてお聞かせください。

土井一正:
弊社は創立から64年目を迎えましたが、今後、5年10年、さらに言えば「100年続く企業になるにはどうしたらいいか」と考えています。その目標に向かって進んでいく上で大切にしているのは、「事業のさらなる多角化」と「働きがい」という2つの要素です。

強固な経営基盤を築くために、「時代のニーズを先読みし時代に合わせた事業を展開する」という考え方をベースに、「100年企業」を目指すべく今後も多角的な事業展開を進め、新たな事業の創出に挑戦し続けるつもりです。

また、物流業界は慢性的な人手不足が課題ですが、それを乗り越えるためには「この会社で働くのが楽しい」と感じられる環境を整備することが不可欠だと考えています。現在は、福利厚生の充実や健康経営優良法人の認定取得など、あらゆる面で社員の働きやすさを追求しているところです。

「物流って楽しい」「リクサスって面白い」と社内外から評価される企業を目指して、これからも一歩ずつ歩みを進めていきます。

編集後記

土井社長の言葉から、物流という“モノ”を動かす仕事だからこそ、“ヒト”とのつながりを大切にしている姿勢が垣間見れた。その姿勢は取引先との関係構築だけではなく、社員の働きがいにまで及んでいる。土井社長が目指す「100年企業」への歩みは、“ヒト”を軸に進んでいくのかもしれない。

土井一正/1976年、奈良県生まれ。関西学院大学卒業。大学卒業後、フリスキー株式会社に入社し、8年間在籍。2007年、株式会社リクサスに入社。取締役管理本部長、常務取締役、専務取締役を歴任し、2022年に同社代表取締役社長へ就任。