※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

近年、ECの利用者増加に伴い、物流・運送企業への需要が⾼まりを見せる一方で、業界内の競争も激化している。そうした中で、70年以上にわたる歴史を持ち、お客様との信頼関係を築いてきた株式会社ハナワトランスポートは、社会の複雑化や多様化、そして国際物流の増⼤といった環境の変化にもかかわらず、安定した業務量を維持している。今回、同社の取締役、塙佳樹氏に会社の軌跡と強さの理由、今後の展望を聞いた。

食品輸送から国際航空貨物輸送へと変化しながら会社が成長

ーー貴社の事業について詳しく教えてください。

塙佳樹:
弊社は2024年10月に創業72周年を迎える会社で、当初は食品の輸送事業からスタートしました。その後、大型トラックで荷物を運ぶ幹線輸送の事業がメインとなり、1980年代から現在の主力である国際航空貨物の輸送事業が始まりました。

これはDHLジャパンとの取引がきっかけです。物流ニーズが大ロット少頻度から小ロット多頻度に移行していく中で、DHLの日本での需要が大きく伸長し、それに伴って弊社のコアビジネスも国際物流にシフトしていきました。

近年ではデジタル化の進展やコロナ禍の影響も相まって、国際ECの需要が急伸していることもあり、ワンボックス車や2トン車などの⼩型のトラックによるラストワンマイル(最終配送拠点からお客様の自宅やオフィスへ貨物を届ける物流サービス)の業務が増え、今に⾄ります。

現在、弊社には約300人の従業員がおり、全国に14か所の営業所を展開しています。顧客の皆様やともに頑張ってくれる従業員のおかげで、運送業界全体の上位に位置する企業規模にすることができたと感じています。

ーーなぜDHLジャパンと取引を始めることになったのですか。

塙佳樹:
人とのご縁で、仕事を紹介してもらったのが始まりです。最初は、軽車両で重要書類を運ぶという小さな業務から始まりました。当時はITが進んでいなかったため、ほとんどの重要書類は原本を人の手で運ぶのが当たり前でした。今の弊社のドライバーに当時の輸送形態を言ったら笑われてしまいます。

人材を活かす高い教育力とボトムアップ型経営が強み

ーー貴社の強みを教えてください。

塙佳樹:
DHLとの40年以上にわたるビジネスで醸成されてきた独自の人事ノウハウが最大の強みです。DHLの集配ドライバーは、輸出国の通関知識などを身に付けている必要があるため、ステレオタイプのドライバー像とは少々適性が異なります。

それに則した選考基準で採用し、専門知識や接遇、運転技能を教育し、個々の目標達成度や業務指標を定量的に評価するという成長スパイラルを構築できたことが、弊社の現在を支えています。良い意味でドライバーっぽくない社員が多い会社だと思います。

ーー採用や人材に対する考え方を聞かせてください。

塙佳樹:
採用においては、経験など関係なく、人柄と個性が全てだと人事担当者は断言しています。実際に入社する方は、システムエンジニアやアパレル販売員、飲⾷関係など、異業種からの転職者が8割を超えています。また、リファーラル採用や再入社される方も多く、会社に対して好意的な社員が多いことは何よりの誇りです。

また、職位や社歴に関係なく組織される年次プロジェクトが活況で、賃金の制度や新たなポジションまでつくり出してくれます。社歴2〜3年の社員にここまで任せて良いのか?と思うこともありますが、そこは社員の「人柄と個性」を信じています(笑)。

このようなボトムアップ型の組織で、チャレンジ精神旺盛な社員からどんどん提案が上がってくることも強みだと思っています。

人手不足などの課題を解決しながらロジスティクス企業を目指す

ーー今後の展望をお聞かせください。

塙佳樹:
現在、弊社はまだトラック事業者の枠に留まっているので、今後は業域を拡大してロジスティクス企業になっていきたいと考えています。

また、社会が大きく変容し、経済が飽和する中でも、一企業としての発展を目指すなら、メジャーでなくマイナーの視点を持つことが鍵だと考えています。長らく重厚長大の一翼を担った物流業界ですから、マイナーである女性や外国人のニーズに成長のヒントがある気がするのです。そのような需要の発掘と人材の確保を同時に満たすため、物流業界にとってマイナーな属性の採用と活躍に積極的にリーチしていく考えです。

ロジスティクス企業を⽬指す中で、人手不足問題の克服、オペレーションの競争力強化、進化を支える経営基盤の構築、この3つを重点的に取り組みながら、会社を成長させていきたいですね。

編集後記

ビジネスマンとして大切にしている価値観について、塙氏は「出ない船はないし、終わらない仕事はない」と語った。トラブルがあっても船は必ず出航するし、何か問題があっても仕事には必ず終わりがあるという考え方だ。

「どうにもならないことはない」という考え方に、塙氏の良い意味で潔く楽観的な経営観が垣間見られた。創業から着実に成長を続けるハナワトランスポートなら、近い将来に、塙氏の目指すロジスティクス企業にきっとなっているのだろうと感じた。

塙佳樹/1984年、東京都生まれ。明治大学商学部を卒業後、三井倉庫株式会社(現:三井倉庫ホールディングス株式会社)にて現場オペレーションからフォワーディング業務、企画営業など、物流の基礎を幅広く学ぶ。2022年、家業である株式会社ハナワトランスポートに入社、同年より取締役に就任し、現在に至る。