
広島県内において、交通インフラ整備の豊富な実績を持つ、株式会社エイトコーポレーション。ほかにも、一般土木や外装塗装、橋梁補修など幅広い事業を運営している会社だ。公共性が高い事業を手がけ、安定感のある会社として知られる同社だが、代表取締役の八條公貴氏は「一時は会社が危機的状況にあった」と語る。一体どのような苦労を乗り越えて、現在の同社があるのか。今回は、八條氏に、起業時のエピソードや事業の強み、同氏ならではの成長戦略などを聞いた。
会社を軌道に乗せることができたきっかけは、父と妻の言葉

ーー起業の経緯について聞かせてください。
八條公貴:
広島では私の祖父が家業をやっていて、父が跡を継いだのですが、その会社が私が27歳のときに倒産。一時、会社も家もなくなってしまったのですが、私は大学卒業後は東京でサラリーマンをしていたので、大きな影響はありませんでした。
しかし、倒産により父や母が大変な状況に追い込まれている姿を見て「自分がどうにかしなければ」と思い、地元広島へ戻ることを決め、30歳のとき、道路区画線工事会社「株式会社エイトコーポレーション」を設立。父の会社で手がけていた事業を私が引き継ぎ、再興させようと決意しました。
私はサラリーマン時代、営業で実績を上げていたため「起業しても、きっとすぐに仕事をとれるだろう」と自信がありました。しかし、実際に起業をしてみると、創業したばかりで実績のない会社に仕事をくれる人はほとんどいないという状況。今まで自分がいかに会社の看板に頼っていたかを痛感しました。
ーーそこからどのように会社を軌道に乗せたのでしょうか。
八條公貴:
あるとき、父から「目の前のお金ほしさに行動するな」と言われました。経済的に苦しく、アルバイトをしながら会社を経営していた私を見て父は「お金に困っていることがバレると、良い取引話が回ってこなくなるぞ」と忠告したのだと思います。
また、妻から「起業してすぐに儲かるなら、みんな社長になってるよ」と言われたのも胸に刺さりました。会社が上手くいかず、サラリーマンに戻ろうか悩んでいましたが、この言葉を聞いて「自分が何のために起業したのか」を思い出しました。
「八條家を再興させたい」という思いで始めたのに、会社経営が疎かになり、目の前のお金を稼ごうとしている。そんな自分に気づき、それからは会社経営に打ち込むことを決意。その甲斐あってか、売上が億を超えるところまで徐々に伸び、起業から3年目を迎える頃にようやく会社を持ち直すことができました。
社員たちには、会社を「自分が幸せになるための道具」として使ってもらいたい

ーー事業の内容や強みについて聞かせてください。
八條公貴:
弊社は広島県を中心として、道路や橋などの交通インフラを整備しているほか、商業施設や店舗の駐車場の舗装なども行っている会社です。
大きな強みは、迅速な対応力です。見積依頼がきてから24時間以内に見積もりを提出する、工事が終わったその日のうちに図面をお客様に送るなど、業務のスピードを高めるためのルールを社内で定めています。
また、社員たちには気持ちの良い挨拶をすることや、丁寧に仕事をすることなど、当たり前のことを徹底するよう働きかけています。たとえば、社員によってお客様対応の質に差が出ないよう、電話のかけ方からしっかりと指導するなど、人材教育にも注力しています。
ーー代表としてどのような考え方を大切にしていますか。
八條公貴:
先祖や社員、お客様を大切にし、敬意を表することを重視しています。父から言われた「口先だけでまわりの人に『大切に思っている』と言っても伝わらない。しかし、本当に心から人を大切にしているのであれば、言葉にしなくても伝わる」という言葉を実践し続けています。感謝のない人にチャンスは訪れませんし、感謝がなければ何をしても上手くいきませんから。
また、私は「社員が幸せになるために、会社を道具として使ってほしい」という気持ちで経営しています。実際に、「まわりの人を心から大切にしよう」と意識し始めたことで事業が上手く回り始めた実感があります。
建設や土木は働き方改革がなかなか進んでいない業界ですが、「社員を大切にする」という意思を行動に移す意味でも、会社の休日を増やし、残業を減らせるよう努力しているところです。
不要なリスクはとらず「絶対に潰れない会社」を目指す

ーー最後に、今後の注力テーマや目標を聞かせてください。
八條公貴:
会社を一気に成長させようとするのではなく、年輪のように少しずつ成長させられるよう取り組んでいくのが今後の注力テーマです。その1つの方法として考えているのが、4つあるグループ会社を使ってシナジーを高め、収益を増やしていくこと。今後は会社のホールディングス化を計画していますし、ほかにもM&Aなどを通して、会社同士のシナジーが生まれやすい環境をつくっていきます。
そのためにも県外に支店を出したり、支店数を増やしたりするなど、リスクが高まることをする気はありません。今ある会社の相乗効果で利益を増やし、「絶対に潰れない会社」にするのが目標です。
編集後記
父の会社の倒産や、起業から2年ほど続いた赤字の時期など、多くの苦労を乗り越えてきた八條代表。辛い時期はあったと思うが、この経験があったからこそ「絶対に潰れない会社」という揺るがない目標が生まれたのだろう。「年輪のように着実に会社を成長させたい」という言葉からは、会社や社員のことを大切に思う八條代表の大きな愛情が感じられた。

八條公貴/1977年4月生まれ、広島県広島市出身。大学卒業後は東京で一般企業に就職するが、2007年に広島へ戻り株式会社エイトコーポレーションを創業。