※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

女性の社会進出が進み、今や共働きは当たり前の時代。とはいえ、子育てとキャリアの両立は簡単ではない。長時間労働を是とする風土や固定的な性別役割分担がいまだ根強く残っている業界もある。

そんな時代背景を受け、「フェアな労働市場をつくる」ことをミッションとして創業した「XTalent(クロスタレント)株式会社」は、ワーキングペアレンツ向けの転職支援サービス「withwork」を提供し、子育て世代のキャリアとライフの課題解決に取り組んでいる。自身も共働きで2児の父である上原達也代表取締役に、これまでの歩みとサービス提供の狙いについて聞いた。

新規事業立ち上げの醍醐味を体感し「子育てとキャリア」をテーマに起業

ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。

上原達也:
大学卒業後、当時設立3期目を迎えていたベンチャー企業である株式会社Speeeに入社しました。

入社当初はガラケーに特化したモバイルSEOという事業のディレクターを務めました。その後異動し、社長室でコーポレートブランド刷新や新規事業のリサーチ、海外展開のプロジェクトなどを担当しました。成長期の会社に身を置くことで組織や事業のつくり方など幅広いことを学び、得たものは多かったです。

ーーその後転職されたきっかけは何だったのですか。

上原達也:
事業開発のキャリアを伸ばしていきたいと考えました。そんな中、タクシーという昔ながらのモビリティビジネスが、配車アプリによって急速にデジタル化していることを知り、興味を持ちました。ほかにも自動運転や介護ニーズ、過疎化地域の交通問題、いわゆるラストワンマイルの問題などとも関連し、社会的なインパクトの大きさも感じました。

JapanTaxi株式会社(現:GO株式会社)へ転職しました。親会社である日本交通株式会社の代表を務めていた川鍋一朗さんとお話しした際、そのビジョンを伺い感銘を受けたことも転職を決めた理由の一つです。

ーーXTalent株式会社を起業したきっかけは何だったのでしょうか。

上原達也:
仕事を通じて、「いつか心からコミットできる関心の高いテーマで事業を立ち上げてみたい」と思うようになっていました。そして、考えた結果、そのテーマが「子育てとキャリア」でした。

私は24歳で結婚し、26歳の時に長女が誕生しました。新卒からITベンチャーで懸命に働きましたが、若い時に子どもが生まれたので「自分のキャリアにおいてまだ何も成し遂げられていない」という思いを抱いていました。

一方、子どもとの時間の大切さや、家事や子育てを妻に頼ってしまっていることへの葛藤があり、仕事と家庭のバランスを見失うこともありました。そんな経験から、キャリアとライフをトレードオフにしない選択肢をつくれるのではないかと考え、弊社を立ち上げました。

子育て中のコンサルタントが当事者目線でマッチングをサポート

ーー貴社の事業について教えてください。

上原達也:
「withwork」というワーキングペアレンツ向けの転職サービスを通して、「家族との時間を大事にしながら、仕事でもチャレンジしたい」と考える方々の転職のお手伝いをしています。

弊社の強みは、大多数のコンサルタントが自身も子育て中で、子育ての実情を深く理解している点です。紹介する企業についても、実際にワーキングペアレンツの方が活躍している、柔軟な働き方ができる企業が多いのが特徴です。子育て中でも希望する働き方で活躍できる企業に出会えることが、求職者にとってのメリットになります。

また、企業側にとってもメリットがあります。昨今、優秀な人材を採用することは大変難しくなっています。しかし、働きやすさと働きがいを両立できる会社であれば、ニーズに合った人材を採用できるのです。

ーー経営する上で大切にしていることは何ですか。

上原達也:
収益性と社会課題解決の両立です。ビジネスである以上、しっかり収益を上げて規模を拡大していかないと社会に影響を与えることはできません。一方で、社会課題に取り組むためには収益だけを追ってもいけません。どちらも追求しながら会社を大きくすることが目的であり、大切にしていることです。

人材サービスで旧態から脱却し、社会課題を解決したい

ーー今後の展望をお聞かせください。

上原達也:
弊社のミッションは「フェアな労働市場をつくる」ことですが、人材紹介というサービスは、そのミッションを実現するための手段にすぎません。ワーキングペアレンツが活躍できる社会は、労働力不足や少子化、ジェンダーギャップといった課題全てを解決すると考えています。

企業の大きな課題として、採用において「30代の経験豊富な人」というニーズが標準的になっている一方で、子育てや家庭の状況で働き方に制約がある人材をどうやって活かせるのかということがあります。そこを一緒に解決して、企業の成長を支える取り組みをしていきたいです。

また、採用競争が激しくなっていく中、企業にインパクトを与えるような人材を紹介する事業も強化したいと考えています。プラットフォーム型のサービスをつくっていくことも検討中です。

ーー貴社では、今後どのような人材を採用していく方針ですか。

上原達也:
弊社は「長時間働くことが美徳」や「男は仕事、女は家庭」といった暗黙の前提を変え、個人のウェルビーイングと企業の成長がトレードオフにならない世界を実現したいと考えています。

人材紹介コンサルタントの仕事をするために必須の経験はなく、自分の人生経験を最大限に活かせる仕事です。個人にも企業にも深く向き合うことができ、非常にやりがいがあります。現在新卒採用は行っていないのですが、もし弊社の理念に共感し、インターンで働きたいという方がいらっしゃったらぜひご検討いただきたいです。

編集後記

夫婦ともにフルタイムで働きながらも、時間に追われて家族との時間を十分に過ごせなかったり、職場で肩身の狭い思いをしたりと、ワーキングペアレンツの悩みは尽きない。自身の経験から事業を立ち上げた上原社長の言葉一つひとつに重みを感じる取材となった。キャリアもライフも諦めない、本当の意味での「仕事と子育ての両立」を実現するため、「withwork」のような画期的なキャリアサポートサービスは大きな推進力となることだろう。

上原達也/愛媛県今治市出身。京都大学教育学部卒業後、株式会社Speeeに入社。SEOアナリスト・人事・社長室を歴任。2017年、JapanTaxi株式会社(現:GO株式会社)へ転職し、国土交通省実証実験やBtoB新規事業を推進。2019年7月にXTalent株式会社を創業、代表取締役に就任。「フェアな労働市場をつくる」をミッションに、ワーキングペアレンツのための転職支援サービス「withwork」を展開。