※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

ブランド品買取専門店「なんぼや」や美術品・骨董品買取専門店「古美術八光堂」などの運営を手がける、バリュエンスホールディングス株式会社。

同社の代表取締役を務めるのは、プロサッカー選手から経営者に転身し、新たなビジネスの世界に飛び込んだ嵜本晋輔氏だ。

今回は嵜本氏に、創業の経緯や大切にしている考え方、今後の目標について話を聞いた。

サッカーもビジネスも「起用される能力」を養うことが大切

ーー起業までの道のりを聞かせてください。

嵜本晋輔:
もともと、Jリーグのガンバ大阪に所属するプロサッカー選手だったのですが、3年目のある日、戦力外通告を受けました。サッカー界で生き残ることの難しさを痛感し、22歳で引退してからは、父が経営するリサイクル業の会社で働くことになります。

入社後しばらくは、嵜本家の3兄弟で相談しながら働いていましたが、会社が当時扱っていたのは電化製品やオフィス用品のようなサイズが大きくて単価が低い商品。何時間もかけて、洗濯機や冷蔵庫を回収・再販するのには非常に手間がかかり、またそのわりには利益率が低く、将来性が見えませんでした。

そこで、サイズが小さくて単価の高い商品の買取事業を始めたいと考え、兄弟3人で起業しました。ブランド品の買取専門店に加えて、洋菓子製造の事業も始めました。

その後、2つの事業が右肩上がりに成長したため、会社をそれぞれに分け、私が買取専門店の事業を引き継ぐことに。そして2011年、株式会社SOU(現:バリュエンスホールディングス株式会社)を立ち上げたという流れになります。

ーーサッカー選手から家業の会社に入社したとき、何を考えましたか。

嵜本晋輔:
私は兄たちよりも後に父の会社に入ったため、父や兄に自分の意見をどうすれば起用してもらえるかをひたすら考えました。

プロサッカー選手だったときも、どうすれば監督に起用されるかをよく考えていましたし、後から入った者だからこそ「起用される能力」が大切だと思ったのです。

ブランド品・骨董品・美術品の買取専門店やオークション事業を展開

ーー事業内容を教えてください。

嵜本晋輔:
弊社はブランド品の買取専門店「なんぼや」や「BRAND CONCIER」、骨董・美術品の買取専門店「古美術八光堂」などを運営しています。

買取と販売を同じ店舗で行う会社は多いですが、弊社の店舗は買取に特化しているのが特徴です。創業時からとにかく仕入れにこだわり、他社が目を付けていない品をいかにして手に入れるかという点に徹底して取り組んできました。

加えて、買取だけでなく販売も行う新業態のプレオウンド・ブランドショップ「ALLU(アリュー)」も手がけており、こちらは銀座、表参道、新宿、心斎橋で2店舗、そしてオンラインで展開しています。

そのほか、世界最大規模の企業向けオークションプラットフォームも運営し、現在は日本の企業が4,000社以上、海外の企業が1,300社以上集まっています。

ーー事業の強みはどういった点にありますか。

嵜本晋輔:
強みは、集客力、買取力、販売力の3つです。まず集客力については、インターネットを活用した集客をいち早く始め、効果を出したことが挙げられます。

買取力について、弊社は買取金額で他社と勝負していないのが大きな特徴です。たとえ買取金額が高くても、査定士の対応が悪ければ「このお店に自分の大切なアイテムを売り渡したくない」と感じるお客様は非常に多いですから。

そのため弊社では、お客様が大切にしてきたお品物に込められたストーリーをお聞きした上で、確かな目利きで丁寧に査定できるよう社員にしっかりと教育し、顧客の体験価値を向上させることを強く意識しています。

そして最後の販売力について、買い取ったブランド品を、価値が下がる前の適切なタイミングで販売できることが挙げられます。買い取った商品を直販しようと思っても、すぐに買い手が見つかるとは限りません。そのため弊社は直販ではなく、自社のtoBオークションで古物商に販売することで、確実に利益を得る仕組みを構築しています。

ーー貴社の仕事はどのような人に向いていますか。

嵜本晋輔:
お客様の課題を解決して笑顔にする時間を「楽しい」と感じられる人がこの仕事に向いていると思います。また、素直で謙虚な人は確実に成長できますし、現状に満足せず変化を楽しめる人にとって、弊社の仕事はとてもやりがいを感じるはずです。

情熱・志・考え方の3つの掛け合わせでより良い経営を実現

ーー嵜本代表が経営を行ううえで、大切にしている考えを教えてください。

嵜本晋輔:
京セラの創業者である稲盛和夫氏の言葉に近いのですが、「情熱✕志✕考え方」を特に大切にしています。

1つ目の情熱について、人は興味・関心があるものを通してしか成長できないと私は思っています。そのため、自ら挑戦したり、目の前のものに全力で向き合ったりしながら、与えられた環境の中で情熱を注げるものを自分でつくり出すことが大切です。

2つ目の志とは、目標を高く設定することです。目標を高いところに設定すれば、もしそれを達成できなくても、低い目標を設定した場合より高い位置に最後は着地できますから。

そして3つ目の考え方について。たとえば「できない理由」ではなく「できる理由」を探すなど、より良い選択や決断をするために、目の前にあることをポジティブに捉えることを重視しています。

ーー今後の目標をお願いします。

嵜本晋輔:
海外展開をさらに進めることが目標です。日本人は物の扱い方が丁寧で、質の高い中古品を提供していると、世界から高い評価を受けています。日本の中古品ビジネスにおける優れたノウハウと、弊社のこれまでの経験を組み合わせれば、世界のリユース企業にもきっと負けません。

今後は海外でリアル店舗の出店を進めつつ、ECも強化しながら、会社を成長させていきます。海外店舗に関しては、すでに14カ国で40店舗以上を展開していますが、今後5年間でさらに100店舗を新しく展開するつもりです。

そしてこれからも、事業を通して世の中の社会課題を解決しながら、オンリーワンの会社になることを目指していきます。

編集後記

「サッカー選手を辞めたのは、前向きな撤退だった」と語る嵜本代表の言葉からは、同氏のポジティブな人柄が垣間見えた。

どんな環境下でも前を向き、情熱を持って取り組む同氏が率いるバリュエンスホールディングスなら、「あと5年で新たに100の海外店舗を展開する」という目標もきっと叶えることだろう。

嵜本晋輔/1982年、大阪府出身。2001年にJリーグのガンバ大阪に入団するが、2003年に戦力外通告を受け退団。その後、JFLの佐川急便で1年プレーし、22歳でサッカー界から引退。2011年12月にブランド品のリユースなど、サステナブルな事業を行う株式会社SOU(現:バリュエンスホールディングス株式会社)を設立。設立から7年で東証マザーズ市場に上場。元Jリーガーとして初の上場企業社長となる。