
全国に総延床面積50万坪の倉庫を有し、幅広い業界のニーズにきめ細かな倉庫内物流業務で応える佐川グローバルロジスティクス株式会社。そのトップである坂上公彦氏は、佐川急便のセールスドライバーとして入社後一気に頭角を表し、支店長も歴任してきた人物である。
同社の代表取締役社長として、SGホールディングスグループにどのような変化を促そうと考えているのか、坂上氏に話を聞いた。
25歳という若さで50名の部下を持つ係長に昇進
ーーまず坂上社長の経歴からお教えください。
坂上公彦:
19歳で佐川急便株式会社に入社し、セールスドライバーをしていました。佐川急便には「セールスドライバーは担当地域の『経営者』である」という考え方があります。私はその考え方を素直に受けとめ、新人の頃から営業活動、お客さまの荷物の管理、入金や未収金の管理など、すべて自分の責任で行っていました。
担当地域を回りながらお客さまとの関係を深め、1日170個という集荷目標をクリアし、3年後には目標350個に対して600個を集荷したときもあります。こうした取り組み姿勢と実績が評価され、当時最年少の25歳で50名の部下を持つ係長に昇進することができたのです。
ーーマネジメントについてどのようなポリシーをお持ちですか。
坂上公彦:
現場の従業員と対話し、課題解決に向けてアクションを起こすことです。たとえば、お客さまから電話がたくさんかかってくる営業所の場合、従業員に電話の内容を細かくヒアリングし、課題を見つけます。他部署の協力が必要だと思えば、権限などにとらわれずその部署に直接協力を求めました。その結果、お客さまに提供する品質が向上し、電話の本数も減ったのです。
係長から支店長などの上級職まで、任されたポジションでつねにこのようなアクションを起こし、「経営者」のマインドを磨いてきました。その結果、2020年にはグループ会社である株式会社ワールドサプライの代表取締役社長に就任。マインドだけではなく実際の経営を行うという経験を積みました。2025年からは弊社の代表取締役社長として、さらに現場との対話を重ねていくつもりです。
お客さまの「頼みやすさ」につながる3つの強み

ーー改めて貴社の事業をご紹介ください。
坂上公彦:
弊社は現在全国に50万坪の倉庫を有し、さまざまなお客さまの製品をお預かりしています。これらの製品に物流加工(複数の商品の梱包、ラッピング、検品などの作業)を施して佐川急便をはじめとする運送会社に引き渡す倉庫内物流業務が、弊社のメイン事業です。
ーー貴社ならではの強みを教えてください。
坂上公彦:
さまざまな商材に対しての豊富な取り扱い経験、機械化の提案、オーダーメイドの物流設計とサポート体制という3点です。
まず、弊社の倉庫では1坪から2万坪まで、お客さまのニーズに合わせたスペースを提供しています。お客さまは半導体関連、アパレル、食品など多岐にわたりますが、数十年のお取引がある企業をはじめ、さまざまな製品を取り扱ってきた経験があります。医療器具の洗浄などきめ細かな作業のノウハウがあることも弊社の強みです。
次に、倉庫内作業の省人化に向けてロボットの導入も進めてきました。成功事例はもちろん、うまくいかなかったことから課題をつかめた事例までたくさんの経験を積んでいますので、機械化について幅広い提案ができます。
最後に、物流現場において最も重要な現場設計・システム・マテハン機器等を、お客さまの商売・流通形態・商流に合わせてオーダーメイドで構築できること、また実運用開始後のサポート体制が充実していることです。
今後は倉庫と人材の倍増、輸出拠点の確立に力を入れる
ーー貴社をどのような会社にしていきたいとお考えですか。
坂上公彦:
ラストワンマイルで圧倒的な強みを持つ佐川急便とロジスティクス事業に強い弊社で、トータルロジスティクスを提供できる存在にしたいと考えています。3つの強みはお客さまにとって「頼みやすさ」につながります。この「頼みやすさ」を武器にさらに事業をスケールさせ、国内外のロジスティクスについて高い付加価値を提供する。そんな会社にすることが私の役割だと捉えています。
ーー5〜10年後のビジョンを教えてください。
坂上公彦:
東京・大阪・名古屋・福岡という大都市圏のお客さまにスペースを提案できる、という状態をつくる必要があります。最適な場所を選定し、戦略的に投資を行う拠点を決めて、5〜10年のスパンで倉庫を50万坪から100万坪に拡大する予定です。それに伴い、従業員数も倍にしていかなければならないでしょう。
また、海外展開にも力を入れていきます。日本のコンテンツは海外で高く評価されていますから、今後メイドインジャパンの製品が世界に出ていく機会もさらに増えるでしょう。そのトレンドをつかみ、輸出拠点となる物流倉庫を弊社がつくっていきたいですね。
このような取り組みによって、弊社のイメージを「ロジスティクス全般を任せられるSAGAWA」に大きく変貌させ、新しい収益の基盤をつくっていきたいと考えています。
編集後記
坂上社長は佐川急便のセールスドライバー時代から、つねに視線を高く上げて仕事に取り組み、実績を築いてきた。佐川グローバルロジスティクスの社長に就任後も、自社の成長を目指しながら、視線をSGホールディングスグループ全体に向けている。従業員10万人規模の同グループを鳥瞰する坂上氏のチャレンジに、これからも注目していきたい。

坂上公彦/1997年に佐川急便株式会社東京支社横浜鶴見店に入社。2013年に同社西日本支社の四国支店長、2016年に京都支店長、2019年に神奈川支店長を歴任。2020年、株式会社ワールドサプライの代表取締役社長、2025年に佐川グローバルロジスティクス株式会社の代表取締役社長に就任。