
株式会社ハステックは、ITを駆使して清掃事業、不動産管理事業、建設事業など複数の事業を展開する企業だ。IT技術とグローバル人材を活用し、顧客の多様なニーズに対応できるサービス供給力を強みとしている。同社の代表取締役社長を務める田島太郎氏に、社長就任の経緯や事業内容、今後の展望をうかがった。
先代との出会いが転機となり社長に就任
ーーどのような経緯で社長に就任したのですか?
田島太郎:
実家が設計業を営んでいたことから、設計士を目指して日本大学生産工学部建築工学科を卒業しました。その後、オープンハウス株式会社に設計士として入社し、意欲的に働きましたが、当時の会社の事情などから2011年12月に退職を決意。退職後、「東京で新たな挑戦をしたい」という思いを抱いていたところ、弊社創業者の萩森三博と出会いました。
それまで私は社内の人間と仕事をすることが多く、社外の人と手を組んで何かを成し遂げるという働き方をしていませんでした。対して、萩森は、難病であるパーキンソン病を患いながら、「社外の人に助けられて生きる」という仕事の仕方を実践していました。
これまでの自分とは異なるその姿に惹かれ、この人のもとで仕事を学びたいと思い、2012年1月に入社を決意した次第です。
入社前の1ヶ月間は、萩森とともに食事や酒席を交わし、多くの方々とも流を深めました。萩森は「長年の建設業界での知見を活かし、君とともに新たな挑戦をしたい」という思いを語ってくれることもありました。私もその思いに応えるつもりでしたが、入社から1カ月後に萩森が急逝したことで、突如、社長として会社を引き継ぐことになりました。
ーー社長就任後は、どのようなことに取り組みましたか?
田島太郎:
社長に就任した当初は、事業と呼べるものはほとんどない状態。最初の1年は、とにかく会社を存続させるため、文字通り何でもやったという感じです。前職で不動産会社にいたとはいえ、私自身は不動産仲介などの経験はなかったので、手探り状態からのスタートでしたね。
その後、本格的に事業を立ち上げるにあたり、戸建て事業に注力しました。土地の仕入れが難しい中で「どうやったらできるのか」を常に考え、皆さんが買わないような土地はどう商品化するかを試行錯誤しました。そうして不動産の価値を数値化・標準化する方法を見つけ出し、それが後のアパート事業の展開にもつながります。この戸建て事業とアパート事業はその後売却し、その際の売却収益が、現在の事業の基盤となっています。
IT活用で効率的な人材管理を行う

ーー現在の事業内容を教えてください。
田島太郎:
不動産管理事業、清掃事業、建設事業の3つの事業を展開しています。その中で、弊社の事業の主軸となっているのが、清掃業を中心としたビルメンテナンス事業です。取引先の7〜8割が不動産管理会社で、その他に飲食店を経営する会社と取引があります。
ビルメンテナンスという特性上、お客様が営業されていない朝や夜間に、限られた時間で作業を行うことが多いのが特徴です。
ーー貴社の事業の強みはどのようなところですか?
田島太郎:
弊社の強みは、サービスの担い手となる人材を安定して供給できる供給力です。安定的にサービスを提供するためには、人材の確保、教育、管理が不可欠です。弊社では、IT技術とグローバルなネットワークを活用し、人材確保から研修、行動管理、品質管理までを効率的に行う体制を整えています。
具体的には、自社開発のアプリなどを活用し、「いつでも」「どこでも」「誰でも」柔軟に働ける環境を整備しました。これにより、たとえば、日本語の読み書きが得意でない外国籍の方でも、働く上での障壁が低くなっています。また、アプリを通じて仕事の指示やノウハウを共有できるため、どのスタッフでも一定の成果を出せる仕組みが安定した供給力を実現しています。
未来をつくる意識で、企業と個人の成長を目指す
ーー貴社の今後の展望をお聞かせください。
田島太郎:
管理部門の体制を強化したいです。現在、弊社は月間約3万件、年間約30万件の清掃業務を行っており、管理体制の重要性が高まっています。加えて、株式上場の準備も進めているため、社内体制の整備の観点からも管理部門の強化は不可欠です。ここを強化することによって、人為的なミスをなくし、業務全体の質を高めていきたいですね。
さらに、今後はサービスメニューの拡充も目指します。たとえば、Amazonも最初は書籍販売から始まり、プラットフォームに多様な商品を加えることで大きく成長しました。弊社もビルメンテナンス業にて培ったサービス提供インフラを基盤に、新たなサービスをどんどん展開し、さまざまなニーズに応えられるサービス提供プラットフォームへと発展させていきたいと考えています。
ーー最後に、この記事の読者に向けてメッセージをお願いします。
田島太郎:
「未来をつくる」という意識を持って、私たちとともに成長していける方と一緒に働きたいですね。弊社はベンチャー企業として、5年後、10年後の社会におけるスタンダードを築くことを目指しています。それと同時に、個人の成長も重視しており、業務を通じて能力を高める仕組みづくりや、なりたい自分を実現できる環境を整えてきました。成長意欲が高く、一生懸命仕事をしたい方のご応募を、心よりお待ちしています。
編集後記
田島社長が語る「未来をつくる」意識は、企業の成長のみならず、個々のスタッフの成長にもつながっているのだろう。先代との縁を大切にし、一度は縮小した事業を成長させた田島社長が牽引する株式会社ハステックは、今後、どのような発展を遂げるのか。株式上場、サービス拡充に意欲を見せる社長の手腕に注目していきたい。

田島太郎/1987年、大阪府生まれ、日本大学卒業。2010年に株式会社オープンハウスに入社し、不動産、建築事業に従事する。2011年に同社を退職。2012年、株式会社ハステックに入社。同年、同社の代表取締役に就任し、現在に至る。