
ウェルビーイング経営(※)や社員のメンタルケアの重要性がうたわれる前から、メンタルデータテック®事業にいち早く切り込んできた株式会社ラフール。組織と働く個人の可視化、行動変容を促し人的資本、ウェルビーイング経営の実現を支援する「ラフールサーベイ」と、企業の組織文化、価値観とのマッチ度から、採用候補者の定着率・活躍度がわかる適性検査ツール「テキカク」の2つのサービスを軸に、日本の人材・組織課題に挑み続けるパイオニアだ。
ユーザーによって蓄積された2億件ものデータを使い、社内の職場環境や、経営・上司・部下との信頼関係、求職者との価値観マッチングなど、従来は感覚で判断されていたものを定量的に評価し、生産性向上や離職防止に寄与している。今回は、代表取締役社長を務める結木啓太氏に、会社の立ち上げに至った経緯や事業にかける思いなどを聞いた。
(※)ウェルビーイング経営:従業員がいきいきと働ける職場環境をつくることにより、企業価値や生産性の向上にもつながる経営のこと
ウェルビーイングや集団的効力感の「見える化」が、選ばれる組織づくりにつながる
ーー貴社のサービスの特徴をお聞かせください。
結木啓太:
「ラフールサーベイ」は、社員のメンタル・フィジカル・エンゲージメントに加え、職場環境や人間関係、価値観、離職・ハラスメントリスクなど、組織・ヒトの状態を、包括的かつ定量的に評価することを可能にした組織改善ツールです。社員の組織への貢献意欲や制度に対する満足度、職場内の人間関係といった項目を洗い出し、詳細に分析します。社員それぞれがどのような状況で、スコアの変動があるか、どのように対処すれば能力を最大限に発揮できるようになるのか、具体的な対応策を知り、対策立案することが可能です。
一方、「テキカク」は、企業の組織文化、価値観とのマッチ度から、採用候補者の定着率・活躍度がわかる適性検査です。「テキカク」は単なる適性検査ではなく、組織風土や在籍社員の価値観から、採用候補者の価値観が、フィットするかを可視化することで、早期離職の抑制や能力を最大限に発揮してくれる人材の雇用を実現します。
現代社会において早期離職の抑制や価値観の多様性により組織開発の必要性は広く認識されているものの、根本原因の解決に本気で取り組む経営者はまだまだ少ないのが現状です。さらに、少子高齢化で求職者より求人数が上回っている昨今、自分の価値観にフィットする会社を選ぶのが当たり前になり、心地よく働ける環境を提供できない会社には人材が集まらないと予想されます。弊社のサービスは、これからの時代に不可欠なものであると自負しています。
崖っぷち営業から経営者へ
ーーこれまでの経歴をうかがえますか。
結木啓太:
高校卒業後、さまざまな商品を扱っている会社に入りました。そこでテレアポ営業を担当しましたが、なかなか結果が出せず、入社2ヶ月目で「2日以内にこれまでの営業成績の2倍を達成しなければ、辞めてもらう」と言われてしまったのです。自分が必要ない人間だと言われたような気がして悔しい気持ちになり、休む時間も惜しんで必死でテレアポをしました。そしてその時、同部署のトップセールスマンは常日頃から鬼気迫る熱量で仕事に取り組んでいることに気がついたのです。
「日々油断せず、懸命に営業活動をしているからこその結果だったのか」と思い、その人のやり方を徹底的に真似して、努力しました。その結果、解雇を免れただけでなく、売上不振に苦しんでいた支社の立て直しも任されるようになりました。そして、入社からわずか3年で、最年少で管理職に登用されました。
ーーその後、起業に至るまではどのような経緯があったのでしょうか。
結木啓太:
その後はIT関連企業に転職し、個人情報保護に関するコンサルティング業務を担当しました。そのころ、特に多かった相談は、「社員の意図的なネット書き込みで機密情報が漏えいした」というものです。情報漏えいを防ぐためにどうすれば良いかと相談があり、対策として書き込まれないような仕組みをつくることが大事なのですが、この問題の根底にあるのは、社員が抱えているストレスではないかと思うようになりました。
この仮説を基に、ストレスケアに関するプロジェクトを提案しました。「これから先、社内でのメンタルケアが重視される時代が絶対来るぞ」と息巻いていたのですが、当時はまだ今のようにメンタルケアの理解がない時代。一緒に働いていたメンバーには理解されず、プロジェクトが実行されないまま、その会社は解散してしまいました。そこで私は、その企画を持って独立することにしたのです。
組織崩壊の経験を力に変え、地方にも届くサービスを目指す

ーー会社の強みはどのようなところにあるとお考えですか。
結木啓太:
実は弊社では、過去に社員が辞めてしまったことで事業が停滞した時期があり、事業の継続が危ぶまれる状況を経験しました。その具体的な事例とそこからの再生プロセスを、実地と理論を交えてお伝えできる点は強みだと考えています。
その時の苦労や教訓のすべてを現在のプロダクトにも反映させていますし、事業を継続していくことの厳しさを身をもって知っているからこそ、孤独な戦いを続ける経営者に伴走し、課題解決をサポートしたいと心から願っています。
ーー今後の展望をお聞かせください。
結木啓太:
日本には、都市部だけでなく、地方には地場産業に根ざした素晴らしい企業が多いと感じています。より多くのお客様に選ばれるプロダクトをつくり、新たな市場を開拓していくことで、地方創生にも貢献していきたいと考えています。また、私たちの理念に共感していただける企業があれば、同業他社でも積極的に連携していくつもりです。
企業規模としては、今後数年以内に、時価総額100億円規模の企業価値を実現できるフェーズに差しかかっています。このような成長期にある弊社で、これまでの経験を活かし、さらなる高みを目指したいという方とぜひ一緒に働きたい。そして、社員がよりやる気を持って働けるような強いブランド力を持った企業を目指して、常に前進していくことが目標です。
編集後記
「私がトップに立つからには、自社の経営においても、働きやすさや仲間を大切にする文化を主軸に置きたい」と語る結木社長。その言葉を裏付けるように、同社は経済産業省が定める「健康経営優良法人」にも認定されており、2025年には中小規模19,796法人(※)のうち上位500位に与えられる称号「ブライト500」を獲得した。こうした企業の健全な体質も、同社のツールの品質を証明する材料の一つだと感じる。“人の心”という目に見えないものに着目し、本物のサービスを提供し続ける株式会社ラフールの今後の躍進に注目だ。
(※)経済産業省「健康経営優良法人2025」より

結木啓太/1981年宮城県仙台市生まれ。2011年に株式会社ラフールを設立し、代表取締役社長に就任。累計導入社数2,200社を超える組織改善ツール「ラフールサーベイ」、採用適性検査「テキカク」を開発・運営。組織と人材のビッグデータを活用し、企業の人的資本・ウェルビーイング経営支援を行う。