※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

株式会社LIVENTは、「葬儀」という伝統的な領域に「花」「オーダーメイド」「テクノロジー」という新たな風を吹き込み、故人の人生を豊かに表現し、残された人々に寄り添うサービスを追求する会社だ。父親の影響で海外に目を向け、アメリカでイノベーションを学んだ経験から起業を志した、代表取締役の三上力央氏に、起業の軌跡や「花葬儀」の独自性、そして「葬儀」を起点に社会貢献を目指す同社の未来像について話を聞いた。

原点としての海外経験と起業への目覚め

ーー海外留学を決意されたきっかけや、当時の思いについてお聞かせください。

三上力央:
私の父は事業を起こしており、学生時代から父親の会社を継ぐことは考えていました。在学中にイギリスへ短期留学したのですが、短期間の滞在でも自分の見える世界が広がったと感じ、アメリカのオレゴン大学への編入を決めました。

大学ではビジネス学部アントレプレナーシップ学科に在籍し、イノベーションとアントレプレナーシップを専門に学びました。この学科は事業をつくりたい人々が全米から集まる場で、大きな刺激を受けましたね。父の事業を継ぐことも考えていましたが、父とは異なる分野で挑戦したいという思いもあり、「ファミリービジネスとアントレプレナー」という論文も書きました。

大学で学ぶ中で、クラスメイトから「なぜ会社で働くのか?自分の人生は自分で切り開くものでしょう」と言われ、自分で事業を興す決意を固めました。

ーー起業するにあたり、事業分野はどのようにして選ばれたのでしょうか。

三上力央:
苦労があっても逃げずに続けられること、つまり、自分が心から好きで得意なことをやろうと考えました。人を喜ばせることや、学生時代のイベント企画でサプライズを仕掛けるのが好きだった経験から、心の琴線に触れられる冠婚葬祭の分野でライフワークを見出そうと決めました。

将来的に起業することを見据え、3年間は社会経験を積もうと、プライスウォーターハウス(現:PwCコンサルティング合同会社)に入社しました。「3年後に独立する」という私を採用してくれた唯一の会社です。そこで女性が活躍する姿に感銘を受けたことは、現在の社員構成にも影響しているかもしれません。

ーー独立された後、事業が軌道に乗るまでのターニングポイントはありましたか。

三上力央:
独立後、事業が形になるまで約3年かかりました。元首相の細川様の自宅での結婚式プロデュースなどを手がけられるようになった頃から、ようやく収入も安定し始めました。それまでは苦しい時期もありましたね。

業界に革新を「花葬儀」の独自性と強み

ーー貴社の主力事業である「花葬儀」について、詳しく教えていただけますか。

三上力央:
「花葬儀」は、1都3県で展開するオーダーメイドの葬儀サービスです。私たちが業界で初めて、さまざまな花を使って故人らしい空間を創り上げるというコンセプトを打ち出し、それが今も大きな特徴となっています。

弊社には、メモリアルコンサルタントという悲しみの中にいる方々に寄り添い、故人の生きた証を尊重し、遺族の思いを形にする特別な役割を担うスタッフがいます。メモリアルコンサルタントが故人の人生をヒアリングし、企画演出を考え、空間デザイナーが故人らしさを花や植物などでイメージし、即興で最期の空間をスケッチに描き提案します。そのスケッチを基にして、空間デザイナーが具体的な空間を作り上げ、お客様の人生を深く反映したお葬式を実現するのです。

弊社の強みとしては、短期間で具現化する実行力も挙げられます。これは、市場に近いアトリエでの受注生産体制を整えているため実現可能です。一般的な葬儀社は汎用的な花を在庫しますが、私たちは都度最適な花を仕入れて制作するため、他社には真似できません。

全国に約7000社の葬儀社がありますが、「花葬儀」と同じスキームの会社はありません。業界全体が低価格化し、ネットで比較して選ぶ時代になる中、私たちは価格競争ではなく、故人らしさ、人生の表現を追求し続けています。

(※)花葬儀®のサイトはこちら

ーー「花葬儀」の他に、どのような事業を展開されていますか。

三上力央:
「花葬儀」から派生し、相続やお墓、お片付けなどライフエンディングに関わるサービスをワンストップでサポートするライフタイムサポート事業部があります。また、本社近くのアトリエと大田市場という立地を活かし、お祝いの花などを全国に提供するフワラーギフト事業も行っています。

既存事業は年115%から120%の成長を維持していますが、既存事業の成長と並行して、新規事業の開発にも注力しており、現在、4つほどの新規事業を開発中です。

未来を創る組織づくりと人材育成

ーー経営幹部や次世代リーダーの育成について、どのような取り組みをされていますか。

三上力央:
組織規模の拡大に伴い、リーダーから幹部までのマネジメント層の強化が急務です。事業部リーダーやチーム長クラスが参加する経営会議を毎週実施し、事業部横断的な課題について議論する場を設けています。これが次世代育成の一環です。

また、外部研修も導入しており、スキル習得(マーケティング、マネジメント)、目標達成(ナポレオン・ヒルの成功哲学、選択理論)、そして心のあり方や考え方を学ぶ勉強会の3つを柱に研修を行っています。これらの学びは「コーポレートスタンダード」という本にまとめ、全体ミーティングやフィードバックの際の育成基準としています。

ーー採用においては、どのような人物像を求めていらっしゃいますか。

三上力央:
最も重視するのは、私たちの理念への共感です。私たちは「葬儀」を単なる儀式ではなく新しい価値に変え、人の生き方や家族の絆、豊かさを表現する文化を創ろうとしています。この領域への興味と共感が不可欠です。

具体的には、2024年卒から新卒採用を再開し、年間3名程度を採用予定です。理念共感を前提に、営業やマーケティングスキル、プロジェクトマネジメント経験を持つ方は歓迎します。ライフタイムサポート事業部では営業経験も活かせます。

「死」の概念を再定義する新たな挑戦と未来展望

ーー5年後、10年後を見据えた会社のビジョンについてお聞かせください。

三上力央:
「死」や「葬儀」の既存概念に、新しい価値を創造したいと考えています。そのために、今後は、「花葬儀」を核としつつ、テクノロジーを活用し、故人の生き方や家族・友人との絆を大切にし、残された方々が前向きに新たな一歩を踏み出せるような手助けを追求するサービスを拡充する方針です。

具体的には、人の記憶や思い出を残すサービス、孤独死問題への取り組みとして50歳以上限定のマッチングサービス、形見としてご遺骨をジュエリーとして残せるサービスなどを展開予定です。葬儀だけでなく、その前後の領域でも貢献できることを増やしていきます。

ーー最後に、読者に向けて、メッセージをお願いします。

三上力央:
「死」や「葬儀」にネガティブなイメージがあるかもしれませんが、私たちは「人生を豊かに終える」という新しい文化を切り開きたい。これは非常に価値ある仕事であり、社会貢献にもつながると信じています。私たちが新しい文化を創造する会社であることを感じていただければ幸いです。

編集後記

三上氏のインタビューを通じて、「死」という普遍的なテーマに新たな価値を与えたいという熱い挑戦を感じた。留学で培われた起業家精神と「人を喜ばせたい」という純粋な思いが、業界の常識を覆す「花葬儀」を生んだのだろう。故人の人生と向き合い、オーダーメイドで「その人らしい最期」を演出する姿勢は、「人生を豊かに終える」文化の創造そのものだ。葬儀業界のイメージを刷新し、人間らしいエンディングを追求する同社の未来に期待したい。

三上力央/プライスウォーターハウス(現:PwCコンサルティング合同会社当時)勤務後、独立し、株式会社LIVENTを設立。画一化・低価格化が進む葬儀業界において、故人一人ひとりの人生と真摯に向き合い、その人らしい最期をかたちにするオーダーメイドの「花葬儀」事業を主力としつつ、ITを活用した新規事業開発にも注力し、「葬儀」を起点とした社会貢献を目指す。