※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

アウトバウンドに特化したBPO(※1)受託事業を中心に、法人営業支援やカスタマーサポートなど多様なサービスを展開する株式会社アイ・ステーション。通信代理店事業からスタートし、時代の変化を捉えて事業を進化させてきたのが、代表取締役社長の執行健太郎氏だ。大学在学中に営業のアルバイトからキャリアをスタート。営業現場で成果を上げながら経営感覚を磨き、28歳の若さで同社の代表取締役に就任した。現在もトップとして挑戦を続ける執行氏に、その軌跡と経営哲学をうかがった。

(※1)BPO:ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略。企業の業務プロセスを一括して外部に委託するアウトソーシングの一種

トップ営業から組織を育てるリーダーへの転換

ーー社長就任までのご経歴をお聞かせいただけますか。

執行健太郎:
大学在学中、地元福岡にある光通信の子会社で営業のアルバイトとして働き始めました。営業の仕事を選んだのは「稼げそうだから」という軽い動機でしたが、営業成績でトップになり、卒業と同時に正社員となりました。その後管理職に昇進し、2年目で福岡の拠点長として120人規模の組織を任されました。そして、大阪、東京と拠点を移すごとに大規模な組織マネジメントを経験しました。

2015年からは光通信本体の事業部部長と子会社代表を兼任。2017年に光通信から直販部門を切り離し、株式会社アイ・ステーションがスタートしました。約600名を受け入れ、独立した経営体制に移行し、このタイミングで代表取締役社長に就任しました。

ーー次々と新しいポジションに就く中で学んだこと、意識されたことは何でしたか。

執行健太郎:
現場で営業する立場では、自分の成果に集中すればよいのですが、マネジメント側に立つと人材育成が課題となります。自分を基準に考えると「誰でも100点は取れる」と思い込んでいましたが、実際は全員がそういうわけではありません。成果を出す力と人を育てる力はまったく別であり、「70点の人材をどう育てるか」という視点が必要だと気づきました。

マネジメントする際、意識したのは「本質的な営業を身につける」ということです。営業する際、浅いトークや押し売りではなく、相手が深く納得できる提案を行うことが大切です。これは、営業に限らず交渉全般に通じる姿勢であり、納得感を高める提案が成果につながると考えています。

また、キャリアを振り返ると「簡単な道より難しい道を選ぶ」ことを意識していました。光通信から事業部門を切り離し新会社として独立した決断もその一つです。リスクよりも、将来の選択肢を広げるために難しい道を選びました。

時代の変化を捉え通信代理店からBPO事業へ

ーー貴社の事業モデルの変遷と、現在の主力事業について教えてください。

執行健太郎:
当初は光通信の代理店として、携帯・通信・OA機器の販売が中心でした。しかし、トレンドの変化や人材不足、物価高といった外部環境を踏まえ、事業内容を徐々にシフトさせてきました。同時に、労働集約型モデルから、残業減や休暇取得といった働き方改革と、IT活用による効率化を進めました。

現在は、BPO受託事業を展開しています。訪問販売・コールセンター・ウェブマーケティングなど、複数チャネルを組み合わせているのが特徴です。企業の営業やマーケティングを代行し、企画提案からアポイント獲得、カスタマーサポートまでをワンストップで支援しています。個人向け商材で月1000件、法人向け商材で月5000件の販売実績があります。

弊社が重視しているのは、単なる「受託」ではなく「支援」というスタンスです。クライアントの思いに寄り添い、つながりを深めること。そして、市場環境を理解したうえで、価値ある提案ができるパートナーになることを目指しています。既存の取引先についても現場任せにせず、定例の打ち合わせのほか、クライアントの意向や方向性を掘り下げた折衝・提案を重ねています。

成長意欲こそが未来を切り拓く最大の武器

ーー今後の戦略と組織づくりについてはどうお考えですか。

執行健太郎:
今後は、2万社を超える法人顧客基盤を活かし、通信領域にとどまらず、経営や業務上の課題解決への取り組みを強化します。特に、SX(※2)を軸に、事業継続計画策定のサポートや、電力の切り替えなどエネルギー領域への事業拡張を構想しています。売上目標は副次的なものだと考え、どれだけ価値を提供できるかを重視します。

組織づくりについては、グループの組織編成や独立も視野に入れ、持続的に成長できる自律型組織を目指します。核となる人材は、営業成績だけでなく、考え方やスキルなど本質的な価値を中心に評価・育成していきます。属人的な仕事から、高度な思考力やホスピタリティが求められる業務へ移行する中、AIやDX(※3)を活用した取り組みも不可欠です。そのため、顧客管理や営業支援を行うクラウド型ビジネスアプリケーションの導入に加え、AIやデータの活用を推進する情報戦略部を新設し、全社で情報基盤の整備も進めています。

採用面では、多人数採用・少人数定着型から、応募の段階で人材を見極める採用に移行しました。外国人や異業種出身者の登用も視野に入れ、多様な価値観を活かす組織づくりに取り組みます。

(※2)SX:サステナビリティ・トランスフォーメーションの略。持続可能な社会に向けた企業価値向上と社会貢献の両立
(※3)DX:デジタル・トランスフォーメーションデジタル技術活用による変革

ーー若い世代に向けてメッセージをお願いします。

執行健太郎:
弊社では、自己啓発を重ね、物事を冷静に整理できる人材を求めています。そして、前向きに課題を乗り越えられる方を歓迎します。また、年齢や学歴に関係なく、実力主義で抜擢される環境が整っています。営業に抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、実力次第でチャンスを得られるのは魅力です。お客様に寄り添い、期待を超えるホスピタリティを発揮できること。そして、成長の機会を自らつかむ意欲のある方と一緒に挑戦したいと考えています。

編集後記

営業現場からスタートし、経営トップに登りつめた執行氏のキャリアは、まさに実践知の積み重ねだ。「簡単な道より難しい道を選ぶ」という哲学は、個人の成長だけでなく、事業モデルや組織運営にも貫かれている。通信代理店からBPO支援企業へと進化を遂げた同社。次なるステージとしてエネルギー領域などへの展開を見据える同社の挑戦は、今後も注目を集めそうだ。

執行健太郎/1989年福岡県生まれ。大学在学中に光通信の子会社で営業アルバイトを開始。20代で正社員・課長・拠点長へと昇進する。2015年に光通信の事業部部長、子会社代表を兼任。2017年光通信からスピンアウトする形で株式会社アイ・ステーションの代表取締役社長に就任。営業現場での豊富な実務経験を活かし、BPO支援事業の進化と組織改革を推進している。