※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

「営業支援ツール」と聞いて思い浮かぶ企業は、多くの場合「海外の企業」ではないだろうか?事実、日本は営業支援ツールの導入が遅れているといわれており、海外企業のツールを使っている会社も多い。

そんな現状に国産ツールで切り込むのが、株式会社マツリカの代表取締役CEOである、黒佐英司氏だ。黒佐社長は、日本における営業支援ツールの常識に異を唱え、もっと使いやすく、もっと成果を出しやすいツールの提供に力を注いでいる。

海外企業のツールが浸透したマーケットに、黒佐社長はどのように参入していったのか。その戦略やツールの強みなどについてうかがった。

「人類を前進させたい」という思いの実現を目指して起業の道へ

ーー黒佐社長の経歴をお聞かせください。

黒佐英司:
私が起業の道を選んだルーツは、小学生のころから漠然と抱いていた「人類を前進させたい」という思いにあります。この思いは成長しても変わることはなく、ニューヨーク州立大学バッファロー校へ進学。現地の環境にもまれながら、アメリカの文化や生きた英語を学びました。

大学卒業後は日本に帰国して積水ハウス株式会社に入社し、起業後に重要となる営業の基礎を学びました。

その後、株式会社ユーザベースのスタートアップ期にジョインし、営業開発チームの立ち上げや営業部門、マーケティング部門、顧客サポート部門の統括責任者などを担当しました。

そして2015年にユーザベースを退職し、株式会社マツリカを起業しました。

あえて日本で起業することの優位性

ーーアメリカから帰国し、日本で起業した理由は何ですか?

黒佐英司:
日本を選んだ理由はアメリカで培った国際文化の理解や英語力が、日本であれば強力な武器になると考えたためです。

また、起業したきっかけは、組織が大きくなったり上場の準備をしていくなかで、大きなチャレンジができなくなってしまったり仕事の進め方や経営陣と社員とのコミュニケーションの取り方などが変わってしまったため、独立を本格的に考えるようになりました。

多数の受賞実績を持つ営業支援ツール「Mazrica(マツリカ)」を運営

ーー貴社の事業内容を教えてください。

黒佐英司:
弊社の主な事業は、営業支援ツール「Mazrica(マツリカ)」の運営です。Mazricaは、営業活動の効率化を目的とした「SFA(営業支援システム)」と、顧客との良好な関係の構築を目的とした「CRM(顧客関係管理)」を兼ね備えたツールで、海外製ツールが多く使われている中で、使いやすい国産ツールとして提供しています。

後発のツールではありますが、大手企業にも多く導入いただいております。さらに「ITreview Grid Award 2024 Spring」では、セールス分野の3部門・企業規模別の4部門、計7部門でLeaderを受賞した実績もあります。

レッドオーシャンは目を凝らせばレッドオーシャンではない

ーー後発のサービスでも、レッドオーシャンでシェアを獲得できている理由は何ですか?

黒佐英司:
弊社のMazricaがシェアを獲得できている理由は、顧客に寄り添ったツール設計である点が大きいと思います。

営業支援ツールの業界には強力なグローバル企業が多く、一見すると付け入るスキがないように見えますが、そもそもこの業界はマーケットが極めて巨大であり、それだけにマーケットのシェアにはムラがあります。さらに既存製品に対する課題も多く存在していました。

弊社は長年課題とされていた点に着目し、製品に機能を落とし込むことで国内のシェアを獲得することが出来たのです。

実用性を重視、営業支援ツールの新たなスタンダードに挑む

ーー貴社独自の強みを教えてください。

黒佐英司:
営業支援ツール業界には「使いこなすのが難しい」という課題がありますが、弊社はそこを解決して「誰でも簡単に使える」という強みを打ち出しています。

課題の例を挙げると、「入力が面倒である」「入力漏れがあると正常に機能しない」「そもそも入力するメリットがない」など多岐にわたります。これらの主な原因は、ツール設計が開発者目線である点が大きいと思われます。

そこでMazricaは徹底してユーザー目線に立ち、それらの手間や課題をAIを駆使して解決しています。営業支援ツールで本当に大切なのは、入力ではなくその先にある分析や活用です。今後もMazricaは前例ありきのツール設計ではなく、顧客の成果を第一に据えたツールとして進化し続けます。

CPOのポジション創出で、改めて能動的なプロダクト作成に取り組む

ーー今後注力したいことは何でしょうか?

黒佐英司:
既存プロダクトのブラッシュアップやアップデート、そして新プロダクトの開発に注力したいと思っています。これらの点は弊社の活動の中でも特に力を入れており、今年から私がCEOに加えてCPO(最高プロダクト責任者)を兼務しています。

Mazricaのシステムは年々複雑になり、全体的な見直しが必要になっています。そこでシステムの全体像を把握している私が統括し、より使いやすく、長く愛されるツールを目指して改修を進めていきます。

採用で重要なことは「マツリカである理由」

ーー求める人材像についてお聞かせください。

黒佐英司:
弊社が採用で一番重視していることは、応募者にとっての「マツリカである理由」です。これはお互い様なのですが、皆様が弊社で働くべき理由があり、弊社が皆様に働いていただく理由がある。これが合致すれば、お互いに幸せな関係が築けると考えています。

弊社は会社のビジョンにもあるように「働き方」にフォーカスをしています。子どもが自由な発想で遊ぶように、仕事も創造性高く遊ぶように働ける環境を実現できれば、きっと生産性は飛躍的に高まるでしょう。

私は、多くの人が「本質的にやりたいこと・楽しいと思うこと」を仕事にできる世界を目指しています。このマインドに共感できる方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。

編集後記

既存マーケットにおいて後発の製品は不利と思われがちだが、顕在化している課題に対応できれば、むしろ強みとして働くこともある。Mazricaはまさに後発の強みを体現したツールだといえる。そしてMazricaが成功したのは、黒佐社長の観察眼があったからこそだろう。黒佐社長が次に見抜く課題は何なのか?今後の動向に注目が集まる。

黒佐英司/ニューヨーク州立大学バッファロー校卒業。積水ハウス株式会社にて、個人向けの企画提案、法人・資産家向けの資産活用提案、海外事業開発の企画営業に携わる。創業期の株式会社ユーザベースにて営業開発チームの立ち上げを経て、営業部門、マーケティング部門、顧客サポート部門の統括責任者を歴任。市場・業界分析ツールであるSPEEDAの販売促進・保守、営業・マーケティング戦略の立案および執行を担う。2015年に株式会社マツリカを共同設立。代表取締役CEOに就任。