※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

スマホアプリの会員証、ポイントカード、クーポン配布、情報配信など、店舗が利用者に提供するサービスは多岐にわたる。

それらを1つの店舗販促向け顧客管理サービスとして提供しているのが、ビートレンド株式会社だ。

他にもPOSレジ・ECサイト・飲食店向け予約管理システムなどを取りまとめたパートナー連携プログラムも扱い、店舗を大きくサポートしている。

今回は代表取締役である井上英昭氏に、起業のきっかけや今後の展望について、話をうかがった。

クラウド型モバイルマーケティングサービスを展開する企業が生まれたきっかけ

ーー起業のきっかけは何だったのでしょうか。

井上英昭:
インターネットビジネスで物が売れる仕組みを自分で作ろうと思ったのがきっかけです。

日本オラクルで働いていた当時、インターネットでリードタイム削減、在庫削減、人員削減やコスト削減をする企業が増えました。削減することは負担軽減や効率化にもつながる良いことですが、私はもっと売上を増やす方のビジネスに関わりたいと思い、バナー広告であれば売上を増やせるのではないかと考え、インターネット広告会社に転職することを決めました。

しかし転職後、ガラケー(ガラパゴス携帯)でインターネットに接続できる画期的な技術革新であるNTTドコモの「iモード」が世の中に出てきて、「これからの消費者はみんなこれを常時持つようになる」という確信を持ちました。すぐに新しい広告ビジネスを始める大チャンスだと思い、「携帯向けの開発も積極的に進めるべきだ」と米国本社の開発部へ提案しましたが、露出度が大切なバナー広告と小さな端末であるガラケーは相性が悪く、日本国内だけにしか需要がないのではという理由で却下されてしまいました。

その後、会社が買収されたことをきっかけに、「誰もやらないなら、モバイルで物が売れる仕組みを自分で作ろう」と考え、起業することを決めました。もちろん起業することは簡単なことではありませんでしたが、ベンチャーキャピタルや事業会社から出資を受けることができ、技術者とともにビジネスの基盤を最初からつくることができました。

常に変化に対応し、顧客管理で社会貢献をしたい

ーー社名の由来について教えてください。

井上英昭:
常にその時代の最新技術やビジネス環境に対応した会社でありたいという思いを込めて、「ビートレンド」=「トレンドであれ」という社名にしました。最初から将来グローバル展開した時に海外の人も呼びやすい名前ということで外国人の投資家からも賛同を得て名付けました。

私は38歳で起業したので、他の起業家よりも遅いスタートだったと自分では考えています。
起業当初は苦労も多く、はじめは大赤字が7年続いてピンチの連続でしたが、そのピンチが次のチャンスの入り口となるような展開を繰り返して何とか今現在も順調に事業を継続できています。

ピンチを乗り越えられた要因を自己分析すると、「自分の会社が今の時代のトレンドとなっているか」を常に強く意識し、変化を続けてこれたからこそだと考えています。

ーー経営理念に込められた思いを教えてください。

井上英昭:
「私たちは、顧客価値を創造するプラットフォームを提供し続けることで、社会に貢献します」というのが経営理念です。

冒頭の「私たちは」という言葉には、役員・社員だけでなくご利用企業様の皆様やパートナー企業様も含めて「皆でやりましょう」という意味が込められています。
そして「顧客価値を創造する」には、お客様の価値を増やすことが大切であるという意味を込めました。

また経済価値を増加させることは、ひいては日本経済活性化にもつながります。環境問題への対策も意識してDXで電子化を推進するなど、「社会に貢献する」という点を大切にしており、行動しています。

たとえば、弊社のアプリをユーザーがダウンロードするとプラスチックカードやチラシやDMなどの紙資源を使わなくて良くなります。。弊社は約3000万人のユーザーを管理しているので、単純計算で約3000万枚のプラスチックカード削減に貢献できているといえます。

危機を乗り越えてスマートCRM会社に進化

ーー事業のこれまでの歴史について教えてください。

井上英昭:
はじめは、モバイル広告事業に力を入れていたのですが、創業後3ヵ月程経った時、NTTドコモと電通が合弁でモバイル広告会社を作り、iモードのモバイル広告を独占してしまいました。

残るはKDDIとJPhone(現ソフトバンク)の2つでしたが、どちらもすでに博報堂と電通が独占していたのです。携帯電話大手3社のキャリアが全て独占されてしまい、介入する余地がなくなってしまったため、弊社の事業は全面撤退を余儀なくされてしまいました。

現状打破のために何か次の手がないかと考えた結果、「携帯電話向けメール配信サービスはどうか」と思い、始めることにしました。サービス提供を進める中でモバイルマーケティングやモバイルショッピングもできるようにしたところ、これが上手く軌道に乗り、2009年頃には国内トップクラスのシェアを持つサービスとなっていました。

しかしここでも更に困難にぶつかることとなります。
2010年頃からiPhoneやandroidなどのスマートフォンが急速に普及し、携帯電話(ガラケー)が使われない時代が到来してしまったからです。

時代に合わせた今後の戦略を考え、次はポイント管理や電子スタンプ、クーポン配信といった本格的なCRM機能を充実させる方針を立てました。またアプリ開発にも力を入れ、アプリとCRMを組み合わせたサービスも展開したことにより、今までメールマーケティングの会社であった弊社が、2013年にはスマートCRMの会社として生まれ変わることになりました。

ーービジネスを行う上で大切にしていることは何ですか?

井上英昭:
社是は「誠実」という二文字であり、関係する全ての人に誠実に対応することを大切にしています。

私たちは個人情報を管理しているので、セキュリティ事故などでブランドを失墜させてしまうと会社としてお客様の信頼をなくしてしまいます。そうならないために、毎年莫大な金額のシステム投資を行っていますし、日頃から常に誠実に業務に向き合うよう社員にも伝えています。

世界で必要とされるプラットフォームに

ーー今後の事業展開について教えてください。

井上英昭:
弊社のプラットフォームとつながるパートナー様をもっと増やしたいと思っています。

弊社のビジネスは、「プラットフォーム」を活用していただくことであり、プラットフォーム は人が集まってくることでよりビジネスが拡大発展していく構造にあるので、パートナーの数を増やすことは、弊社の売上を増やすには重要だと考えています。

また国内だけでなく、海外のパートナーにもつながってほしいと考えています。海外に現地法人を作って営業活動をするというのではなく、自然と人が集まってきて「気が付いたら世界の人が使っている」という形をつくりたいからです。そのために、海外のユーザーも増やし、更に大きなプラットフォームとして多くの方々へ提供したいと思っています。

具体的に進めていることでいうと、直近では「東南アジアの玄関口」と呼ばれるようになっている福岡市の拠点を大きくしていこうと動いています。海外人材の採用はもちろんのこと、地方採用も行い、国内外の人員集め、そして拠点拡大につなげていきたいと考えています。

ーー組織形成の今後の課題は何ですか?

井上英昭:
世代交代が大きな課題の一つだと思っています。

現状、執行役員以上の経営者層に高齢者が比較的多いです。シニア人材の活用も企業が行うべきことの1つですが、シニアが活躍することとシニア世代が経営幹部を独占することは全く別の話ですので、若い人たちに上手く橋渡しを行い、後任が育ちやすい組織をつくりたいと思い、若手マネジメント層の役員・経営幹部への抜擢を推進し始めています。

健康経営で安心して働ける環境

ーー働く環境はどんなところが魅力ですか?

井上英昭:
一言でいうと、「健康」であることです。

弊社ではたとえば月1回、スポーツトレーナーの方が社内でレッスンをしてくれたり、2000円程度ではありますが、スポーツ施設利用料の補助が出たりします。そして関東ITソフトウェア健保組合に加入しているので、健康診断の実施はもちろんのこと、メンタルヘルスのサポート環境も整えています。

またリモートワークも積極的に導入しており、技術職はほぼ全員がフルリモートワークを行っています。環境をさらに充実させるために、来年はワーケーション制度も導入するつもりです。リモートワークでもずっと自宅に籠っているとリモート疲れを起こしてしまうので、森や海辺のカフェなどで働きながらリフレッシュもできる環境を作りたいと思っています。

誠実で顧客志向をお持ちの方に戦力になってほしい

ーー最後に、求職者の方へメッセージをお願いします。

井上英昭:
弊社は顧客志向が強い反面、働きやすい会社です。コスト削減志向の会社が多い中で、弊社は売上を生み出せるサービスを提供しており、お客様へ提案して喜ばれる時には仕事のやりがいを感じます。たくさんのパートナー様に利用していただけるおかげで、直近の15年程はずっと黒字経営を続けて堅実な経営を行っています。そんな弊社のサービスを面白いと思っていただき、仕事に誠実に向き合える方には、ぜひ戦力になってほしいです。

編集後記

スマートフォンアプリ・会員証、ポイント、マイレージ、電子スタンプ、メールやLINE、SMSなどの情報配信といった店舗販促に必要な機能を、1つのサービスとして提供しているのはビートレンド株式会社のみ。「お客様に誠実に向き合い、常にその時代のトレンドとなる会社でいたい」という思いを持ち、約15年黒字経営を続ける井上英昭社長。拠点拡大や事業発展など、さらなる成長を続けるビートレンド株式会社から、今後も目が離せない。

井上英昭(いのうえ・ひであき)/福岡市出身、明治大学法学部卒、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現日本ヒューレット・パッカード株式会社)に入社し、1995年に日本オラクルに入社、ビジネスアライアンス事業本部やERP・サプライチェーンマネジメントの営業部長職にてデータベース・情報管理の重要性を認識。その後、ネットグラビティ・アジアパシフィック株式会社に入社しインターネット広告の世界を学び、2000年にインターネット接続できる携帯電話が普及し始めたことを機にビートレンド株式会社を起業し現在に至る。