※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

エーエージャパン株式会社は、50ヵ国以上へ中古車両の輸出販売を行っている企業だ。社員3人で始まった同社だが、現在ではスリランカをはじめケニア、フィリピン、オーストラリアなど、海外に支店を多数展開し、国内外合わせて約600名のスタッフを抱える。今回は、創業者で代表取締役のハミル・ラムザン氏に、同社の事業内容や強み、今後の展望を聞いた。

とにかく足を動かして在庫を増やした黎明期

ーー貴社の設立当時のお話をお聞かせください。

ハミル・ラムザン:
もともと父親がスリランカで車屋を営んでいたため、幼い頃から自動車に慣れ親しんでいたという背景があります。1996年に来日し、同年に弊社の前身となる日本ローヤル株式会社を設立しました。

当時は日本語もままならない状態でしたが、社員は私を含めて3人のみと、人が足りていなかったので、ほぼすべての業務を自分で行わなければなりませんでした。それが結果的に言葉の勉強につながったように思います。

弊社が誕生した1990年代後半はインターネットが普及していなかったため、車の買付けもアナログでした。オークション会場に足を運び、実際に1台1台車を見て入札価格を決め、他の参加者と競って手に入れる。ひたすらその作業を繰り返し、地道に在庫を増やしていきました。

現在はオークションもインターネット上で開催されるので、世界中から購入可能です。便利になった反面、仕入れ値などの情報公開が進み、利益を取りづらくなったという側面もあります。また、世界中に競合がいるため、買付け価格も昔よりはるかに高くなりましたね。

独自のオークションシステムを活用し、ニーズに合わせたビジネススタイルを実現

ーー貴社の事業内容を教えてください。

ハミル・ラムザン:
弊社は中古車両の輸出事業を行っています。現在は日本以外にもスリランカやケニア、フィリピン、ボツワナなどに支店を設け、50ヵ国以上へ輸出しています。

弊社の販売方法は主に3つです。1つ目は弊社の在庫から希望車両を購入していただき、輸出する形です。弊社は日本車を中心に、ヨーロッパやアメリカなど、あらゆる国の車を3000台以上取り揃えています。一般車両だけでなく、バスやトラック、農業機械や建設機械といった商用車も豊富です。

2つ目のオーダーでは、お客様や弊社の海外支店からオーダーされた車両を一般、商用問わず買付けし、輸出しています。

3つ目のビディングでは、国内で開催されるオークションでお客様の希望車両を代理購入します。「エーエーオークション」は、毎日開催されるさまざまなオークションを、世界中のお客様がライブ形式で閲覧できる自社システムです。弊社オークションスタッフが、車のクオリティやコンディションを細かくチェックし、システム内でコメントします。お客様はそれをもとに購入を判断し、購入した場合は弊社を経由してお客様のもとへ輸出するという仕組みです。大手企業ではできないようなこまやかなバックアップが評判です。

ーー貴社の強みをお聞かせください。

ハミル・ラムザン:
輸出国に対するアプローチの豊富さと、丁寧なサービスの提供です。国ごとに車両の需要やマーケットは異なるため、その国のニーズに合わせてビジネススタイルを変えています。BtoBだけでなくBtoCのお客様が多い国ではエンドユーザーを意識してショールームを展開し、左ハンドルに変える必要がある国では自社工場でカスタムを行います。国ごとに需要のある車両も異なるので、一般車両から商用車両まで豊富に取り扱っている点も強みですね。

また、お客様に商品を届けた後のアフターメンテナンスにも注力しています。車検制度がある日本では、定期的なメンテナンスが当たり前ですが、海外ではそういった制度も、意識もほぼありません。

そういった中でも、弊社はスリランカに輸出する車に1年間の保証をつけ、またスリランカ全土の工場と業務提携し、気軽にオイルや消耗品を交換できる体制を築いています。その他の国でも、もし購入後に不具合があった場合は、現地の支店で修理が可能です。

ーー社長が日頃から心がけていることはありますか?

ハミル・ラムザン:
私自身もそうですが、社員たちに伝えているのは、「大変な時でもチャレンジしていく姿勢」です。

会社を立ち上げてから今まで、リーマン・ショックや東日本大震災、コロナ禍といろいろな困難がありました。どんなに大きな山でも乗り越えられたわけですから、次のことにチャレンジするのはそんなに大変なことではありません。「私にできたのだから、あなた達にできないことはない、皆で頑張ろう」と社員には話しています。

弊社には、さまざまな国の社員がいます。外国人が日本でビジネスを行うのは不利な部分があることも事実です。しかし、弊社に来て仕事をするからには、自分ができる一番真面目な姿勢で働いてほしいとも伝えています。

世界に誇れる「エーエージャパン」ブランドを目指す

ーー今後の展望をお聞かせください。

ハミル・ラムザン:
ブランディングの強化と各国の支店のレベルアップを行っていきたいです。ブランディングの強化には、良いお客様と良い従業員を獲得したいという思いがあります。車両のクオリティだけでなく、利便性の高さやフォローアップの丁寧さなど、お客様が次も弊社を選びたくなるような心情的な部分にもアプローチしていきたいですね。やみくもに顧客開拓を行うとサービスの質が低下してしまうため、良いパートナーシップが築けるお客様と深く長くお付き合いしたいと考えています。

また、1台1台の車の品質保持やアフターメンテナンスの体制をより充実させ、各支店のスキルアップやレベルアップも行いたいです。そのための最初のステップとして、本社では外部コンサルタントを招いた人事制度の見直しが進行中です。

ブランドネームとクオリティを高めていき、「信頼できる車両エクスポーター」として弊社を選んでいただけるよう、頑張っていきたいですね。

編集後記

取材を通して、ラムザン氏の真面目で真摯な人柄が伝わってきた。「頑張ればできないことはない」という言葉を体現する存在の同氏は、今後も世界中の仲間を率いて信頼というブランドを広げていくだろう。同社の今後に期待が高まる。

ハミル・ラムザン/1968年生まれ、スリランカ出身。1996年に来日し、エーエージャパン株式会社を設立。中古車両の仕入れから販売、輸出まで手がける。オーストラリア、フィリピン、スリランカ、チリ、ドバイ、ケニヤ、ボツワナ、ナミビア、レソト、タイに支店を持つ。