※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

冠婚葬祭やイベント、展示会などに花やみどりはつきものである。さまざまな場面で人の暮らしに彩りを与えてくれる植物だが、各種イベントが中止されたコロナ禍においては急激に需要を下げた。

そんな中、独自のシステムを開発し物流網を整えることで業績を維持し続けたのが、花とみどりに関する業界トップシェア(2022年夏季市場流通調査による)JFIグループ(※1)の中の一社株式会社フラワーオークションジャパンだ。

※1 JFI(Japan Floral Industry)グループとは、花き流通に携わる、企業10社で構成された企業グループ

同社の代表取締役社長である福永哲也氏に、開発の背景や今後の展望などをうかがった。

人との出会いが苦境を乗り越える活力に

ーー現在2社の社長に就任されていますが、苦労したことなどを教えてください。

福永哲也:
2011年に豊明花き株式会社、2021年にフラワーオークションジャパンの代表取締役社長に就任しました。豊明花きの代表に就任した翌月に東日本大震災が発生し、弊社の代表に就任した頃に新型コロナウイルスが流行しました。

周囲の方には「タイミングが悪い」とよく言われます。ただ、災害時には、今まで購入していなかった方々が植物に癒しを求めたり、人との絆を再確認して花を送り合ったりする傾向が強まったため、予想より業績は落ちませんでした。

苦境に立たされても、花やみどりが人間関係における心のメッセンジャーとなることを感じてもらえて少しでも皆様の救いになったのであれば、意義深いことだと思います。

ーー社長になってからも大切にしているお考えなどはありますか。

福永哲也:
大学卒業後、初めて会社に就職した当時は、視野が狭く今のような決断力もなかったと思います。仕事を通してさまざまな人と出会う中で良い影響を受け、同時に辛い経験もありました。数々の試練を乗り越えてきたからこそ、今の自分があると思っています。

世の中は決して良い人ばかりではないし、自分にとって心地よい人間関係ばかりではありません。しかし、人間関係がうまくいかないときは自分に非があったかもしれないと考えることで自分の成長につながるものです。

これまでを振り返ってみると、私自身が成長できたのはさまざまな人との出会いがあったからだと思っています。今も変わらず、人との縁を大切にしています。

時流を読んで自社システムを開発

ーー花き業界に大きな影響を与えたコロナ禍ですが、どのように乗り越えましたか。

福永哲也:
弊社は新型コロナウイルスが流行する前から、オンラインの取引システムを開発して運用していたため、対面での取引ができずとも今まで通りお客様にお花を届けることができました。多くの企業が影響を受けた中で、弊社が業績を伸ばすことができたのは、他社ができないことにいち早く取り組んでいたからだと思います。

ーーオンラインの取引システムを開発した背景を教えてください。

福永哲也:
きっかけは2020年に卸売市場法が改正され、商物一致の原則が廃止されたことです。今までは品物を市場に運び入れ、現物を確認してから競売を行うシステムでしたが、法改正によって買い手が市場に足を運ぶ必要がなくなり、市場の外からも競売に参加できるようになりました。

そこでJFIグループでは、現物の情報を顧客と共有して競売を行うシステムを開発したのです。天候や交通規制に左右されずに自宅や事務所からでも競売に参加して取引ができるようにしました。

日本全国に花きを届ける業界最大の物流網

ーーコロナ禍を経て、花き業界にはどのような変化がありましたか。

福永哲也:
花き業界の売上は、冠婚葬祭・イベント・展示会での装飾による業務需要が大半を占めていました。しかし、コロナ禍で行動や外出が制限されイベントなども中止になり、買い手がほとんどいなくなってしまったことで、花やみどりの相場も暴落しました。

一方で、行動制限がされる中、人々が自宅にお花を飾って安らぎを感じたり、リモートワークでテーブルの上に観葉植物を置いたりして、家庭内で花やみどりを楽しむようになりました。

ーー物流についてはどのように考えていますか。

福永哲也:
地域の花屋さんや一部の消費者からは「メディアで話題の花がなかなか入荷されない」などの声が聞かれ、都市との地域間格差が大きくなっていると思います。

JFIグループのシステムがそのような課題解決の一助となるでしょう。

まずはご相談いただき、アドバイスを行った上で契約に至れば、オンライン上で売買に参加できます。また、運送業者と提携し、200台のトラックで九州から北海道までをカバーできる日本随一の物流網を構築しているため、スムーズな物流を促し顧客満足度を高められると思っています。

ーー注力したい分野や、今後の展望を教えてください。

福永哲也:
花き業界の国内シェアをJFIグループとして、現在の25%から30%まで広げたいと考えています。

今後、流通におけるひとつのプラットフォームとして位置付け、業界に貢献していきたいですね。

プロダクトアウト(商品開発や生産、販売活動を行う上で、買い手のニーズよりも企業側の理論を優先させること)に偏るのではなく、生産者と販売事業者双方の経営の安定を図りたいと思っています。

花き業界ならではのやりがいとは

ーー業界に入って良かったと感じたエピソードなど教えて下さい。

福永哲也:
オランダの展示会で見つけた新しい品種を導入したときのことです。

海外で自分が選んだ品種が日本の店先で実際に並ぶのを見た時、純粋に嬉しいと思いました。この思いに共感できる方は、私たちと一緒に働くことできっと多くの喜びを得られることでしょう。

ーーどのような人物像を求めていますか。

福永哲也:
現状に満足せず「常に何かチャンスはないか」とアンテナを張って実行に移すことができる方ですね。弊社には全員で新しいことに取り組む文化があるので、何事にも積極的にチャレンジしたい前向きな方は向いていると思います。

編集後記

福永社長はじめ花き業界の方々の絶え間ない努力によって全国どこにいても誰もが公平に多彩な花やみどりを楽しめるようになった昨今。

花やみどりに携わる全ての人の幸せを願う株式会社フラワーオークションジャパンは、今後も思いをかたちにするべく前に進み続けることだろう。

福永哲也/1962年生まれ、東京都出身。現在、株式会社フラワーオークションジャパン代表取締役社長、豊明花き株式会社代表取締役社長、一般社団法人日本花き卸売市場協会会長などを兼任している。